今では業務分野として「ロビイング」や「行政機関との協力」を業務分野に掲げる法律事務所も出てきました。しかし、ワシントンにロビイング専門の法律事務所が多くあるアメリカ等と比較し、日本において弁護士が政策企画の分野に関わることは、まだまだ少ないのではないかと思います。
私自身は、まだ法律事務所に所属していた10年ほど前、同じ事務所の先輩弁護士の下で、知的財産権に関する政策企画に携わった経験があります。与野党の国会議員や関連分野の政府機関・有識者との関わりも持ち、クライアントからの依頼を受けた業務を行うという通常のプロトコルとは異なる環境に戸惑いながらも、無数にある選択肢のうちどこを進めていくかといったダイナミックさに面白さを感じました。また、関わりを持った方々の政策に対する真摯な姿勢にも、非常に感銘を受けたことを記憶しています。
政策企画では、たとえば、規制改革ー法律や行政庁による政省令の改正等ーに向けた提案が大きな一角をしめます。弁護士のスキルの基礎の一つとして、立法趣旨等に照らした法律解釈がありますが、現在ある法律や政省令等について制定当時に存在していたであろう立法事実が現在も存在しているのか、その差分に照らせば法律改正等の規制改革が必要なのではないかといった立論をするにあたって、法律解釈のスキルは役に立ちます。
政策企画における立法事実の検討や広い選択肢の中からの戦略立案は、弁護士としてのスキルアップにも繋がると思います。組織内弁護士が日々直面する問題は、弁護士の通常業務を超えたものが多くありますので、政策企画における経験はより役立つのではないでしょうか。また、組織内弁護士の方が実際に政策企画に携わる機会もより多くなってくるものと思います。さらに多くの弁護士が政策企画の分野に飛び込んでいくことを期待して、今日の締めとしたいと思います。
(櫻井 由章)
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