次の成長戦略と、政策形成におけるベンチャー企業の役割(前編)

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今年の夏、都内でシンポジウム「THE BUSINESS DAY 02」を開催しました。株式会社メルカリ主催の経営やコーポレートを担うビジネスパーソンが学び、出会い、実行するためのカンファレンスの中で、第2回目となる今回は、ビジネスの第一線で活躍するキーパーソンが一同に集い、「IPO」「組織マネジメント」などのテーマに加え、「政策企画セッション」も実施しました。

『次の成長戦略と、政策形成におけるベンチャー企業の役割』と題したパネルディスカッションには、ゲストに政治家代表として平将明 衆議院議員・自民党 IT戦略特命委員会委員長代理、行政代表として松田洋平 経済産業省商務情報政策局情報経済課長、業界団体代表として佐別当隆志 シェアリングエコノミー協会事務局長に参加いただき、株式会社メルカリ 法務・政策企画マネージャー(当時)の城譲と共に、とくにベンチャー企業における政治や行政との関わりについて熱く議論しました。

先日の記事でも紹介しましたように、C2CやFinTechなどの新たなビジネス分野は、世界各国で経済全体の成長エンジンとして期待されており、日本においても政府の「未来投資戦略2018」やJ-Startup、サンドボックス制度など様々な側面での期待が高まっています。

一方でこうしたベンチャー企業が政策形成過程に加わることはまだまだ少なく、政府の掲げる政策と、現場で戦うベンチャー企業などが目の当たりにしている環境にはまだまだ齟齬もあるのではないかと感じます。

こうした中で、まさに『次の成長戦略と、政策形成におけるベンチャー企業の役割』とは何なのかと考えるきっかけにしたいと考えました。

 

海外企業ではロビイストだけで1,000人も採用しているという噂もある

イベント冒頭、モデレーターを務めてくれた佐別当氏が、ベンチャー企業が政策立案や政治家との接点を増やして行くことで社会をテクノロジーで変えることに繋がる。規制を変えて行くということに対して海外ではシェアリングエコノミーやブロックチェーンなどにおいても積極的に行っているとして、「米国ではAirbnbやUberなどグローバルではこうした働きかけをするロビイストだけで500人〜1,000人も採用しているという噂もある。」と紹介、「これからの社会において行政や政治との関わりが非常に大事になってくる。ベンチャー企業の皆さんも政治や行政との接点を持っていこうというきっかけになればと思う。」と呼びかけました。

世界の中では、ベンチャー企業にとっても渉外やロビイングが非常に重要な要素になっていることがこうしたイベントによって国内でも広がっていくことが期待されます。

さらに佐別当氏は、「IT業界からこの協会に来てロビイングの先輩たちからアドバイスを貰うと、どの議員がどの派閥や委員会に所属していて、どういった政策に関心があるか、どういう選挙区でどういう議員かと全部分析されている。既存の業界や大企業はこうした人脈をしっかりと持っている中でベンチャー企業は戦って行かなければならない。その意味でも、どのルートでどのスイッチを押したら道が開けるのかというのは非常に重要であり、成長戦略に載ることによって前進することもある。」と、日本経済の中でも既存の業界は既に政治行政に対しても様々な分析の元、戦略的に働きかけをしていることを紹介し、日本ではベンチャーだけが取り残されている状況にあることを指摘、最後に、「ITは多くのビジネスのインフラになってきた。多くの政策に関わってくるのにこれまであまり働きかけてこなかった。業界団体も出てきたし専門のスタッフも活かしながら声を上げていければと思う。」と話しました。

 

新たにできた「サンドボックス制度」など政府の仕組みを最大限活用して欲しい

役所側の立場として、経産省の松田課長は、普段からAIやIoTを日本の産業にどうやって使ってもらうかということを担当していることもあり、「その中でベンチャー企業の方には政策形成の中でも期待している。」と話し始めました。

今回テーマの一つになっている「成長戦略」については、与党内と同時に省庁内においても同時にそれぞれで検討されながら毎年作成されていること、今年も6月に「成長戦略」が決まりましたが、毎年毎年新しいネタを仕込んでいることを説明、「今年はサンドボックスやベンチャー企業の支援が数多く入っている。見てもらうだけでも何がどうなっているかが分かるのでコラボできればと思う。」と、経産省の政策とベンチャー企業との連携を呼びかけました。

「成長戦略」作成プロセスにおける行政の役割についても、「最後の利害調整は政治で決めることだが、事前に法律的にどうか、この問題は何で制度解決ができるかといった詰める作業を行政が行う。」と説明。

また一概に「行政」といっても省庁毎にDNAがあり、何を大事にその組織が動いているのかというのはそれぞれまったく違うこと、例えば経産省については、昔は多くの権限があったのに自ら権限を切ってきたということ、今はむしろ他省庁の時代に合わない権限に、イノベーションになるなら直すべきだと言っているが、逆に安全規制などを守っている省庁は、それを守ることで安全を担うという重要な役割があることを紹介しました。

ベンチャー企業の社長から「うちはこんなことに困っている」と相談される事があるが、一社だけのことでは「自分の所で頑張ってください」となってしまうこと、逆に、「数社の課題や業界の共通課題であると行政も一緒になって議論しやすい。」、「成長戦略にも大きな流行りがあり、どの課題に関係するのかが紐づけられているといい。」とアドバイスもいただきました。またその具体例として、「例えばシェアエコであれば日本の地方創生などに関わるのでシンパシーを感じる方も多いのではないか。」と紹介されました。

松田氏からはさらに、今回新たにできた「サンドボックス制度」について、「他の国だとFinTech分野だけなどに分野が限られるが日本のサンドボックスは分野限定がない上、内閣官房という各省の上にある組織に窓口ができた。8月以降に具体的な案件を出していくことになるが役所側は作ったからにはこの制度も成果を出さなければと考えるので、活用すると効果的。成長戦略の決定には、与党の中で様々な議論があり、政府の中でも各省庁が弾を込めていくことになるが、最終的に年明けに自民党でも議論され、未来投資会議でアジェンダが議論されることになる。そこで出たアジェンダが政府としても大事なものとして位置づけられる。年明けからアジェンダが出てくるがその中で凄く書かれるものとそうでないものとの温度差が出てきながらそれが6月くらいにまとまるというのが例年の流れ。例えば今年は、医療、FinTech、モビリティなどが厚めに書かれた。」と、その活用の有効性に触れ、日程も示しながら、制度の活用を促していました。

 

制度変更や新しい制度につなげる提言まで創って行きたい 

城氏からは、大卒で国交省だった役人時代を「当時担当部署から成長戦略に盛り込んでもらいたいと頑張っていたのを思い出す。当時は『空港を作らせて欲しい』とかに血眼になっていた。」と振り返り、「成長戦略は毎年興味を持って見ているが、ここ数年FinTechなどが出てきており、使わない手はないなと思っている。役所のあと楽天を経て4年前にメルカリに入り、法務とロビイングをやり始めた。政治家からは、なぜこんなことをと言われることがあるが、新しいことをベンチャー企業でやろうとしても作法が分からないことが多い。そこを繋ぐ役割の仕事をやっていきたいと思っている。社会を変えるために、行政で政策を作ってきた者がベンチャー企業に入ってくる時代になってきた。」と、自らの経験から時代が変わりつつあることを会場に提示しました。

また、「行政の方はだいぶ分かっていたつもりだったが、これまではどの議員がどの分野に強いということを認識せずに、闇雲に行っていた。」「つい最近まで一人でやっていた。」と企業の中でこれまでこうした「政策企画分野」が整っていなかったことについても紹介。

一方で、「ようやくこの数ヶ月で専従の政策企画担当が2人入り積極的な活動をはじめた。これまで以上に積極的に政策企画分野を盛り上げて行きたい。」と、メルカリ自身がこの分野においてリードして変えて行こうという意気込みを示しました。

(高橋 亮平)

 

※ 平議員の話など後編に続きます。 

(登壇者プロフィール)

平将明(Masaaki Taira) 衆議院議員。早稲田大学法学部卒業後、家業を継ぐ。2005年、第44回衆議院議員総選挙にて初出馬・初当選。経済産業大臣政務官 兼内閣府大臣政務官(第2次安倍内閣)、自民党副幹事長、内閣府副大臣(第2次安倍改造内閣・第3次安倍内閣)を歴任。現在 は、自由民主党ネットメディア局長を務める。

松田洋平(Youhei Matsuda)

経済産業省・商務情報政策局・情報経済課 課長。京都大学卒業後、経済産業省に入省。産業技術環境局、大臣官房、商務流通G、 資源エネルギー庁、商務情報政策局などでキャリアを重ねる。2012年よりイギリスのウォーリック大学、ロンドンスクールオブエ コノミクス、中国の清華大学に留学。帰国後、経済産業政策局、大臣官房を経て、2017年7月より現職。

佐別当隆志(Takashi Sabettou)

一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長。2000年株式会社ガイアックス入社。広報・事業開発を経て、2015年秋より シェアリングエコノミーに特化したWebメディア「Share!Share! Share!」をリリース。2016年1月に、一般社団法人シェアリング エコノミー協会を設立し、事務局長に就任。2017年3月、内閣官房・シェアリングエコノミー伝道師に任命される。

城譲(Yuzuru Tachi)

元 株式会社メルカリ リーガルグループ マネージャー。国土交通省の役人として12年を過ごした後、楽天株式会社を経て2014年9月に メルカリに入社。 国土交通省時代には、まちづくり、防災、地域振興、航空行政など幅広い分野に従事するとともに、国連に出向 してアフリカで2年を過ごした経験もあり。楽天時代には、法務課長として、同社の多種多様なサービスに関わってきた経験を持つ。

 

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メルカリ政策企画では11月30日に虎ノ門でmeetupを実施します!

mercari.connpass.com

「政策企画meetup / Mercari Public Policy Meetup」
 ー 霞ヶ関 × ベンチャー の可能性 ー

時代にあった政策をどのように作っていくか。
ベンチャーが霞ヶ関とどのようにコミュニケーションを図るか。
ルールメイキング思考が、なぜベンチャーに必要とされるのか。

霞が関と民間の双方を経験してきたメンバーで、ロビーする側/される側の関係を超えて、新しいルールメイキングのあり方について、会場の参加者も交えて考えます。

取締役社長兼COO 小泉文明も来場します。

時間 スケジュール内容
19:00~ 受付開始
19:30~ 挨拶・乾杯(メルカリ小泉)
19:45~ パネルディスカッション
20:20~ 懇親会
21:00 イベント終了