模倣品の流通阻止に向けたメルカリの取り組み

現在、特許庁による「コピー商品撲滅キャンペーン」が行われています。今回は20代の若者を主なターゲットとして、「内心ひいた。ニセモノを買う友達に。」というキャッチコピーのもとに意識調査の結果や、フリマアプリ、ネットショッピングやリアルの店舗でのブランド品購入時の注意点の啓発を行っています。

特許庁コピー商品撲滅キャンペーン

www.jpo.go.jp

メルカリでは、2013年のリリース以降、マーケットプレイスに出品される模倣品の対策を行ってきました。最初はカスタマーサービスに商品監視のチームを作り、お客さまからの通報や権利者からの申立を受けて、模倣品の削除を行ってきました。その後、権利者の方とのコミュニケーションを通じてより迅速にこれらの出品物の削除を行うために「権利者保護プログラム」の提供を開始しました。

さらに、2015年に インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP) に加入し、権利者や他のECプラットフォーム企業と連携した模倣品排除の取組を開始しました。現在では、権利者団体や権利者の訪問を受け、各社の模倣品対策の担当の方々から、ブランドの歴史や模倣品のトレンドをご教示頂く機会を設けて、より迅速な対応に努めています。

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※IIPPFインターネットWGの弊社仙台オフィス来社時の情報交換の風景

メルカリに出品される商標権や著作権を侵害する商品を削除する際に関連する法律として、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆるプロバイダ責任制限法、以下「プロ責法」といいます。)」があります。メルカリのようなECプラットフォームは、この法律で定める特定電気通信役務提供者に当たり、この法律に基づいて、模倣品の削除を行っておりますが、この対応はあくまで権利者自身が、保有する権利を侵害する出品物を発見し、ECプラットフォームに対して申立を行ない、それをECプラットフォームが受けて、申し立ての内容を確認し、削除を行うというものであり、片方向の仕組みです。当社では、この取組だけでは模倣品の撲滅には十分ではないと考え、上記のとおり、権利者と連携した模倣品排除の取り組みを進めており、さらにそれを強化していきたいと考えています。

 毎年3月と9月に、財務省関税局が半期の税関における知的財産権侵害品の差し止め実績を公表しています。日本国内で流通する模倣品の多くは海外から流入したものであり、税関での水際の差し止めは模倣品の流通を止めるために非常に重要な役割を果たしています。

平成30年1月から6月までの税関における知的財産侵害物品の差止状況

www.mof.go.jp

近年の模倣品流通の傾向として、個人使用目的の輸入の問題があります。商標法上、商標とは、業として商品を生産し、証明し、若しくは譲渡する者又は業として役務を提供し、若しくは証明する者によって使用される標章(文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合)をいいます(商標法第2条第1項)。「業として」という要件があるため、仮に税関で検査した製品が模倣品に当たる場合であっても、輸入者が販売等の業としての目的ではなく、個人的な使用を目的として輸入した場合、税関はこれを差し止めることができません。もちろん、この輸入者が模倣品を手にした後、これを販売した場合は商標権侵害になりますが、税関では、全てのケースについてこれを追跡することが事実上困難です。流通してしまった後の模倣品の刑事的な取り締まりは警察が行ないますが、やはり流通する前の段階でそれを止めることができることが望ましく、個人使用目的の模倣品であっても、税関で流通を阻止できる法制度や仕組みの創設が期待されます。

(上村 篤)

 

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