【寄稿】経済産業省職員がメルカリ・メルペイへの派遣で学んだこと

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2019年3月18日に開催された研修報告会の様子

 メルカリ・メルペイでは、2018年8月から2019年3月まで、経済産業省職員の研修を受け入れました。この受け入れは、経済産業省が昨年創設した、意欲のある職員をベンチャー企業等に派遣し、スピード感ある経営現場での経験等を通じて政策遂行力を育成する「経営現場研修」の第1号案件です

2019年3月18日、派遣側の経済産業省、受入側のメルカリ・メルペイの両者が参加し、本研修の成果報告会を開催しました。成果報告会には、経済産業省からは糟谷大臣官房長をはじめ秘書課の皆さんが、社内からはメルカリ取締役社長兼COOの小泉、メルカリ取締役兼メルペイ代表取締役の青柳ほか、60名近い社員が参加しました 

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開会挨拶を行うメルカリ取締役兼メルペイ代表取締役の青柳直樹

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今回の研修の意義を語るメルカリ取締役社長兼COOの小泉文明

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本研修への思いをお話される糟谷敏秀 経済産業省大臣官房長

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今回、メルカリ・メルペイでの研修にあたった経済産業省の八木春香さん 

今回、8ヶ月間の研修を終えた経済産業省の八木春香さんから、メルカリ・メルペイでの研修で学んだことや感じたことについて、寄稿していただきました。

メルカリ・メルペイへの「レンタル移籍」で学んだこと

 

経済産業省 大臣官房秘書課 八木春香

 

今回のメルカリ・メルペイでの「経営現場研修」を通じて持ち帰りたかったもの、それは、ベンチャー企業のスピード感ある意思決定やフラットな組織文化でした。

世界がものすごいスピードで変わっていく中、行政に求められる役割もどんどん変わってきています。霞が関に自動的に情報が集まった時代はとうに終わった今、行政組織は、公務員それぞれが自分の担当分野を超えて、国内外の最前線で活躍する方々の動向を理解し、彼らの考えを日々インプットしながら、それを速やかに政策に還元できる組織である必要があります。

しかし、(経済産業省はまだ役所の中ではマシと言われますが、)依然として、組織が大きいためになかなか上層部まで話が上がらず、横の部局との連携も弱い面があります。そのために、業務が肥大化し、若手は省外と対話する時間が充分に取れず、政策立案が難しくなっていることに危機感を抱いていました。 

「このままではこの国を良くすることはできない、自分自身が経済産業省という組織を変えたい」と思い、組織改革のヒントを得るため、この経営現場研修への参加を志望しました。

私は、経営企画チームと政策企画チームという2つの部署に併任で所属させていただき、中期経営計画の策定、予算のとりまとめ、渉外業務等を担当させていただきました。メルカリ・メルペイは、私を変に特別扱いすることもなく、情報も社員同様にオープンに共有してくださったおかげで、本当の社員と同じように、目一杯全力でお仕事をさせていただくことができました。私を社員の一員として扱ってくださったその懐の深さに、改めて感謝の気持ちで一杯です。

1,600人を超える大きな組織でありながら、ベンチャーらしいスピード感を失わないよう、様々な面で工夫を重ねているメルカリ・メルペイの一員として業務を行うことにより、その意思決定や組織文化から、予想以上に多くの学びを得ることができました。

 

 

学んだこと① 情報のオープンさ

  • 「情報は社内で全部オープンになっているから、情報は自分で取りに行く」のが基本姿勢
  • チャットツールSlackの徹底活用。メールは外部とのやり取り以外では使わない
  • 基本的にSlackの全チャンネルが全社員にオープン
    • 他のチームでどんな仕事をしているか丸見えのため、縦割りが起きない
    • 幹部にもSlackで質問・確認してOK(わざわざ、会議等の説明の時間を取る必要は、必ずしもない)
  • 基本的に社内全ての資料がドライブ上で公開されている。他の部署の資料も検索可能 

 

 

学んだこと② 組織構造のフラットさ

  • 上層部との距離感が近く、情報が上がるのが早い
    • 役所のような「幹部室」がない(社長も平社員と同じ机に座っている)
    • 幹部自身がSlackを見て情報収集しているので、幹部への不要な説明が必要ない。
    • 社長→取締役→各チームのマネージャー→平社員という組織構造で、平社員の中には係長や係員といった細かいランク分けがないため、上層部に上げるまでの階層が少ない

 

 

学んだこと③「心理的安全性」の重視

  • 社全体として「心理的安全性(※)」を重視
    ※自分の言動が他者に与える影響を強く意識することなく感じたままの想 いを素直に伝えることのできる環境や雰囲気のこと
  • 全社員が、上司と週一で「1on1ミーティング」を実施
    • 仕事の話だけでなく、プライベートの話も含め、他愛もない話をすることで、人間としての距離を近づける
    • それが結局仕事のスピード感につながる
  • 部署を跨いだ社員の交流が促進されるような仕掛けが豊富

 

 

学んだこと④ 業務効率化への強いこだわり(新しい業務ツールの積極導入)

  • Zapier等の自動化ツールが全社的に徹底活用されている
  • 資料は全てドライブ上で即時保存されているので、複数人間で同時編集が可能
  • とにかくパソコンがサクサク動く(地味に超重要。体感速度は経済産業省のPCの3倍)

 

 

学んだこと⑤ 社員をモチベートする仕掛け

  • バリュー
    • メルカリ・メルペイのバリューは、「Go Bold – 大胆にやろう」「All for One – 全ては成功のために」「Be Professional – プロフェッショナルであれ」
    • 日常会話に頻繁に出てくる等、すべての行動の価値判断基準として社員に染み付いている
  • 目標設定・評価
    • 社としての目標を、経営陣が缶詰になって、各期ごとに考える等、目標設定・評価を真剣に行っている
    • バリューに沿った行動が出来たかどうかも評価対象となる

 

 

学んだこと⑥ ベンチャー企業から見た“役所”という存在

  • 役所は予想以上に非常に遠い存在。何が地雷なのかがわからないので、相談しにくい雰囲気。役所側は、企業と一緒に政策を作るというマインドチェンジが必要
  • 世界の最新情報は、国内外で飛び回っている経営トップやトップエンジニアに集まっている。この方々に教えてもらわないと、他国に勝てる政策は作れない(当たり前だけど改めて痛感) 

 

上記以外にも本当に多くのことを日々学ばせていただきました。それだけでなく、経産省ではできないような、貴重な経験もさせていただきました。

一番大きかったのは、2月の「メルペイ」サービスのローンチです。こんな大きなサービスのローンチを経験させていただいたくという極めて稀な経験を通して、実際に社会が変わっていく瞬間を感じられたことは、とても大きな財産です。ローンチの瞬間、全身に鳥肌が立ったあの感覚は今も忘れられません。

メルペイが、「なめらかな社会を創る」というミッションを掲げ、単なる利益の追求ではなく、人々の幸せのために日々本気で頑張っているのを見て、官と民とで組織は違えど、目指すところに共通するものがあるということを知れたのも、貴重な経験でした。

そして、実際にメルカリ・メルペイというベンチャー企業の一員として仕事をしてみて、経済産業省という、法律・税制を変え、経済政策を打ち、他国とのルールメイキングをするという業務は、省内で想像していたよりずっと社会への影響力があるということを改めて痛感するきっかけにもなりました。

「経済産業省担当の1日の停止は、世の中を1ヶ月遅らせる」-それくらいの気持ちで、経済産業省職員はスピード感を持って仕事に取り組むべきだと、気持ちを新たにしています。

私は4月以降、経済産業省内の業務改革と新卒・中途採用に従事する予定です。今回の研修で得た学びを、これでもか、というくらい活かし、経済産業省、ひいては世の中をより良くしていきたいと思います。

 

メルカリ政策企画マネージャー 吉川徳明コメント

8ヶ月という短い期間でしたが、八木さんには、会社設立から間もないメルペイで、サービスや組織を作っていく段階から、大規模なサービスローンチまでという、非常に貴重な期間を駆け抜けていただきました。私たち自身が、八木さんにどこまで学びの機会を提供できたかは心もとない部分もありますが、この間のメルペイが置かれていた環境こそが、スタートアップの現実、新たにサービスを世の中に生み出すことの現実を学んでいただく上で、最高の教材だったのではないかと感じています。

メルカリ・メルペイのような、社内外の環境変化が非常に速い組織において、最初は、霞ヶ関とのギャップに戸惑うことが多かったかもしれませんが、しっかりとキャッチアップして活躍する八木さんの姿を見て、かつて、同じく霞ヶ関で働いていた身として、誇らしく思っています。

今回の研修を通じて、文化の異なる組織の間での人材交流の意義を強く感じました。今後も、メルカリ・メルペイでは、さまざまな組織との人材交流を進め、ともに学び、理解し合う関係を築いていきたいと考えています。

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