IGFはターニング・ポイントを迎えているのか?ーIGF/MAG・2019年第2回会合ー

2019年4月9日から11日にかけて、スイス・ジュネーブの国連欧州本部(UNOG)にて、インターネットガバナンスフォーラム・マルチステークホルダー諮問グループ(IGF/MAG)2019年第2回会合が開催されました。

今回の会合は、2019年11月にドイツ・ベルリンで開催される第14回IGFのプログラム構成を前進させること、また、IGFの成果や会期間活動(intersessional activities)、IGF関係者間の連携を強化しつつ、いかにしてIGFのプレゼンスや影響力を高めていくかを議論することを目的としたものでした。政策企画の望月は(以下、筆者)は、MAG唯一の日本からの委員として今次会合に出席してきましたので、ご紹介します。

なお、今次会合のアジェンダについてはこちらを、MAGの詳細につきましてはこちらをご覧ください。

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2019年IGF/MAG第2回会合・結果概要

2019年第2回会合では、4月9日(1日目)と11日(3日目)に本会合が、10日(2日目)に「オープンコンサルテーション」が開催されました。 

4月9日、冒頭、国連事務局経済社会局(UNDESA)のDeniz Susar氏から、2020年のMAG委員任命に向けた候補者募集がまもなく開始される旨、また、2020年IGFの開催国についても検討を続けている旨の報告がありました。その後、今年のIGF開催国であるドイツ政府のDaniela Brönstrup氏から、IGF開催に向けた準備の進捗状況について報告がありました。その中で、Angela Merkel首相が開会の辞を述べる予定であること、国連事務総長の参加についても調整を進めていること、ハイレベル関係者によるマルチステークホルダー・セッションをDay 0に開催する計画があること、IGFの最終日に世界各国の議員を集めたセッションを開催する予定であること等が発表されました。なお、IGF事務局からは、ワークショップの企画書受付の期限を延長した旨、改めて報告がありました。 

初日の会合では、その他、MAGワーキンググループ(WGs)やベストプラクティスフォーラム(BPFs)といったIGFの会期間活動、2018年7月に国連事務総長が設置した「デジタル協力に関するハイレベルパネル(HLPDC)」、そして各セッションの開催報告の形式を含むIGFの成果をどのように改善していくかについて、さまざまな議論が行われました。

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4月10日、2日目の会合は「オープンコンサルテーション」にあてられました。これは、本会合に参加しているさまざまな利害関係者・コミュニティから意見を聞く場です。基本的には、MAG議長やIGF事務局、国連事務局経済社会局(UNDESA)やドイツ政府等から、今年のIGF開催に向けた進捗状況や会期間活動(intersessional activities)の進捗状況等について報告を行い、一般参加者からの意見を聞きました。

一般参加者からは、リソースや資金不足の観点から、IGFのマーケティング活動を改善する必要があるといった発言や、IGFの成果がより広く共有されるよう使いやすいものにすべきといった発言がありました。加えて、IGFのプログラムにおいて似たようなセッションを減らすべきといった発言や、具体的な活動や連携をサポートしるようなセッションを含めるべきといった発言がありました。

その他、ベストプラクティスフォーラム(BPFs)やダイナミックコアリッション(DCs)といった会期間活動の進捗状況や国別・地域別イニシアチブ(NRIs)に関する報告のみならず、インターネットガバナンスに深く関与している国際機関や団体等から、その活動に関するさまざまな報告がありました。

最後に、「デジタル協力に関するハイレベルパネル(HLPDC)」の事務局を務めるJovan Kurbalija氏から、同パネルの検討作業に関するこれまでの経緯と現在の進捗状況に関する報告がありました。その中で、今後国連事務総長に提出される予定の最終報告書(および勧告)を踏まえつつ、デジタル協力におけるギャップを取り扱うためのモデルとして、以下の3つが示されました。

  1. 「複数のネットワーク間のネットワーク(’network of networks’)」アプローチをとり、政策規範を提案しつつ支援やキャパシティ・ビルディング機能を有する新たな官民デジタル協力のイニシアチブ
  2. マルチステークホルダーコミュニティとマルチラテラルコミュニティのより緊密なインターフェイスとして機能するような、また、途上国に対し「ヘルプデスク」を提供するようなIGFの活用と強化
  3. 国連とより密接に連関したデジタル・コモンズ・プラットフォーム

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(© United Nations Internet Governance Forum)

 

4月11日、最終日の会合では、11月に開催されるIGFのプログラム構成について、テーマやワークショップ企画書の採点作業等、さまざまな議論が行われました。今回はより焦点を絞ったプログラムとすべきことにつき広く合意があったため、3つの主要なプログラムテーマそれぞれに関する政策的論点に焦点が絞られました。この3つの主要なプログラムテーマそれぞれに関する開会セッション(IGF初日)と閉会セッション(IGF最終日)が開催されることにもなりました。

この他、メインセッションや並行して開催されるセッションの数を減らすこと、今年のIGFの全体的なテーマについても議論が行われました。

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むすびにかえて

今回の第2回会合でも、IGFの関連性と影響力を高める必要があるといった意見や具体的な成果を意識していく必要があるといった意見が国連事務局経済社会局(UNDESA)やMAG議長からあり、MAG委員も含めてさまざまな議論が行われました。それ自体について否定するわけではありませんが、MAG委員の発言の中には、IGFのマンデートを踏まえていないとみられるものもありましたので、筆者は会合の場で、2005年の「チュニス・アジェンダ(Tunis Agenda for the Information Society)」のパラグラフ72を全て読み上げ、改めてMAG委員に想起させました。実際、筆者の発言については、2日目の「オープンコンサルテーション」の場で、オブザーバー参加していた英国政府より明示的に支持いただくことができました。 

IGFの開催は、2015年にマンデートがさらに10年延長されてから今年で4回目になります。おそらく、2025年を迎える数年前に、IGFマンデートのさらなる延長の議論が開始されることになるでしょう。つまり、IGFは今後のさらなるマンデートの延長を占う上で非常に重要な時期に入ってきています。「IGFを単なる議論の場にとどめるのではなく、もっと具体的な成果を上げるべき」といった声が出てくるのは、IGFの知名度や参加者数、財政状況の改善等の観点から至極当然のことであると思います。他方、IGFには付与されたマンデートがあり、そのマンデートの範囲内で活動をしなければならないですし、IGFにはIGF固有の価値があります。毎年2,000人から3,000人を超える関係者が参加し、国連の下でインターネット関連政策を議論する会議体は他にはありません。意思決定がなされないとしても、IGFにはまだまだできることがたくさんあります。私たちが考えるべきことは、IGFをいかにして国際・国内の意思決定、ポリシーやルールメイキングにつなげていくかであり、その仕組み作りはMAG委員ができるかもしれませんが、結局のところは、参加者がIGFをどのように活用するかにかかっています。実際、IGFを有効活用していこうとする動きが多々あり、日本もそれに乗り遅れないようにしていく必要があるでしょう。 

IGF/MAG第3回会合は、6月5日から7日の日程で、ドイツ・ベルリンの連邦経済エネルギー省(BMWi)で開催されました。その様子についても今後この「merpoli(メルポリ)」のブログでご報告する予定です。

(望月 健太)

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