経団連に「スタートアップ政策タスクフォース」が誕生

f:id:merpoli:20190826185728j:plain写真提供:経団連

6月11日、東京・大手町の経団連会館で、経団連の「スタートアップ委員会 スタートアップ政策タスクフォース」の第1回会合が開催され、委員として参加してきました。

メルカリは、昨年12月に経団連に入会しましたが、今回、「スタートアップ委員会」が新設され、その下に「スタートアップ政策タスクフォース」が設置されました。

構成員がスタートアップに限定されたこのタスクフォースは、「スタートアップから政策要望を吸い上げ経団連の政策委員会へと伝達・反映すること」と、「経団連の政策委員会からの求めに応じてスタートアップとしての意見を議論・答申すること」を役割としています。

金融庁の八幡道典 企画市場局市場課監理官と東京証券取引所の林謙太郎 上場部長から、金融審議会市場構造専門グループにおける市場構造見直しの議論の動向等について説明をいただくとともに、タスクフォース委員として、今後の市場のあるべき姿について議論を行ないました。

また、第2回会合は7月16日に開催され、スタートアップ関連税制について経団連事務局から説明を受けるとともに、委員間で研究開発税制の活用に向けた課題や企業のIT投資を支援する税制のあり方、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)支援やエンジェル税制の活用のあり方について議論を行うとともに、第1回の上場市場のあり方についての意見交換などを行いました。

この第1回、第2回のタスクフォースで議論を行なった結果として、メルカリ政策企画としても強い関心を持って議論に参加していた上場区分についての提案が『スタートアップの成長を促進する上場市場のあり方について』として公開されました。

伝統的な大企業を中心とした議論が多いと思われがちな経団連においても、このようにスタートアップの政策ニーズを汲み取る活動がスタートしています。私たちとしても、今後も、こうした新たな取り組みに積極的に携わっていきます。

(高橋 亮平)

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<資料>

         スタートアップの成長を促進する上場市場のあり方について

                            2019年8月5日

                            一般社団法人 日本経済団体連合会

                            スタートアップ委員会

                            スタートアップ政策タスクフォース

1.はじめに

デジタル革新を通じて多様な人々が想像力・創造力を発揮する社会「Society 5.0」の実現に向けては、ビジョンドリブンで課題解決や価値創造に取り組むスタートアップがその担い手として期待される。

わが国では、大企業におけるオープンイノベーション志向の高まりもあってスタートアップに流入するマネーは拡大を続けているが、その規模は世界的に見て未だ小さく、世界的に展開するスタートアップをなかなか生み出せていないのが実態である。

加えて、ミドル・レイターステージに対する資金の出し手が少ない、バイオ・ヘルスケア・素材等のディープテック系ベンチャーでは依然として資金調達環境が厳しい、上場(IPO)後に成長が伸び悩むスタートアップが少なくないなどの課題も存在する。

このような中、本年5月に金融審議会の下に設置された市場構造専門グループでは、スタートアップ向け市場を含めて、現状の課題やあるべき市場コンセプト等について議論がなされている。また、これに先立つ東証における検討については、「現在の市場構造を巡る課題(論点整理)」(以下、東証論点整理)として既に公表されている。

経団連スタートアップ政策タスクフォースでは、今後の上場市場のあり方として、「企業価値向上」を強く意識し、上場企業に成長のインセンティブを強く働かせることで、国内外の投資家を呼び込むことが重要と考える。

以下、スタートアップの成長を促進する上場市場のあり方について意見を述べる。


2.スタートアップの成長を促進する上場市場のあり方について

スタートアップの成長促進に向けて、市場コンセプトを明確にし、それを実現するために必要な基準や方策を導入することが重要である。

(1)東証論点整理「C市場」について

市場コンセプトとの関係

東証論点整理によれば、「C市場」は「国際的に投資を行う機関投資家をはじめ広範な投資者の投資対象となる要件を備えた企業」からなる市場とのコンセプトが掲げられている。

したがって、こうした要件を備えたスタートアップは、直接あるいはB市場経由のいずれにおいてもC市場に上場できるような市場設計とすべきである。

上場基準

東証論点整理によれば、C市場の上場基準は「ガバナンス体制・流動性・利益水準・市場評価(時価総額)等による基準」とされている。

このうち「利益水準」については、スタートアップは短期的な利益よりも先行投資を優先して将来の大きな成長を目指す企業群であるとの特性を十分に鑑みる必要がある。C市場への上場に際しては、利益水準のみにとらわれることなく、ガバナンス体制、時価総額、流動性、中長期的な成長ポテンシャル等から、総合的にその可否を判断すべきである。

また、C市場への直接上場とB市場経由での上場のいずれにおいても、上場企業の健全な成長を促すよう、上場基準は同一とすべきである#2。


(2)東証論点整理「B市場」について

市場コンセプトとの関係

東証論点整理によれば、「B市場」は「高い成長可能性を有する企業」からなる市場とのコンセプトが掲げられている。

したがって、B市場は、多くのスタートアップにとっての主たる上場先となるものと考える。

上場基準

東証論点整理によれば、「B市場」の上場基準は「先行投資型企業を含め、成長可能性の高い新興企業に幅広く上場機会を提供する観点から、A・C市場の基準より緩和された基準」とされている。

こうした基準の考え方は、多くのスタートアップに資金調達の機会を提供するものであり、これを支持する。B市場への上場に際しても、前述のスタートアップの特性に鑑みて、利益水準にとらわれることなく総合的にその可否を判断すべきである。

機関投資家の呼び込み

B市場が現在の東証のマザーズと同様に、短期的な利益を重視する個人投資家中心の市場になると、スタートアップの成長を阻害される懸念がある。そこで、B市場にも、中長期の視点に立って投資を行うことのできる国内外の機関投資家を積極的に呼び込むことが重要である。

そのための方策として、利益水準によらず成長ポテンシャルの高い企業を主要銘柄とするインデックスの創設を提案する。その際、当該インデックスの信頼性を担保する観点から、構成銘柄の基準として高い流動比率などを設定することで、需給を適切に反映した株価形成が常になされている銘柄のみがインデックスに含まれるようにすることが重要である。


3.おわりに

今般の市場構造見直しの議論は、わが国がイノベーションに対する投資を拡大していくとの姿勢を世界に打ち出す契機となる。ベンチャーキャピタルやCVCからの資金も増加する中、国際的な投資環境にも目を向けながら、わが国における上場市場の役割を考えていく必要があろう。

前述のとおり、スタートアップに対しては、短期的な利益水準ではなく将来の成長性を総合的に評価することが重要である。これは近年、大企業で活発化している新規事業やオープンイノベーションの取り組みに対する評価とも相通ずる。

今般の議論が、スタートアップの成長を促進する上場市場の実現に寄与するだけでなく、大企業の新規事業等への取り組みに対する評価手法の形成にも貢献し、わが国全体のイノベーションを後押しする契機となることを期待する。


以上

 

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