【政策企画メンバー対談】 メルカリ政策企画チームってどんなチーム?Withコロナの「新しい政策企画」の可能性は?(前編)

f:id:merpoli:20200609230219j:plain今回は政策企画チームDirectorの吉川徳明と、政策企画参事で「merpoli(メルポリ)」編集長の高橋亮平で、メルカリ政策企画の仕事や役割について議論しました。(対談は6/1に実施)

 

政策企画って、どんな仕事? 

高橋> 今日は、あらためてmerpoli(メルポリ)で、政策企画の仕事や役割について、Withコロナ時代における環境変化も踏まえ、話をしていければと思います。「政策企画」の仕事や役割について、どう捉えていますか?

吉川> 「政策企画」というと、よく連想されるのは、国会議員や省庁向けのロビー活動だと思いますが、それは、政策企画の仕事の一部でしかありません。会社が長期に渡り安定的に成長するために、非事業領域も含めて社外の幅広いステークホルダーと信頼関係を構築する仕事といえるのではないでしょうか。

高橋> 政策を実際に変えることで、ビジネスを行う環境をより良い形に変える、という仕事でもありますよね。メルカリに政策企画チームを作った際、チーム名を決めるのに、「GR (Government Relations)」や「政府渉外」だとロビー活動を行うチームというニュアンスが強くなるよね…とか、「公共政策」だとシンクタンクのように政策部分ばかりが強調されるかな…とか議論しながら、「政策企画」に決めたことを思い出しますね。「PR」という言葉も日本だと広報と同義語のようにも使われたりしますが、元々は、パブリック・リレーションズ(Public Relations)ですからね。

吉川> 大学などで、企業による政策形成への関与について話すことがあるのですが、政策企画には、法律・ルールを変え、会社ができることを増やすという「攻め」の仕事と、さまざまなリスクを早期に検知し、能動的に解決にあたっていく「守り」の仕事があると説明しています。f:id:merpoli:20200609214436j:plain

理想は、経営者・経営レベルの戦略策定時に、ルールの変更も選択肢として持った上で意思決定が行われることだと思っています。政策企画チームとしては、社外のみならず、社内における関係構築が重要だと思っています。

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高橋> 実は、今日で、メルカリにジョインして丸2年になりました。吉川さんとほぼ同じ時期に入社して、政策企画チームを作って来ましたが、この間の仕事でとくに印象的な仕事ってどの仕事ですか? 

吉川> メルカリの政策企画チームでは、お話したような社外向けの仕事だけでなく、社外からメルカリやメルペイに対する視線を最も直接感じ取る立場から、社内のいろいろなチームをサポートすることに注力してきました。ここは、かなり意識的にやってきました。直接的に政策企画の仕事でなかった周辺の仕事についても、社外からのメルカリの期待を踏まえてやるべきと思ったことは、他チームの支援含め、積極的に社内調整に乗り出していきました。あらためて思うのは、我々、政策企画の仕事は、社内と社外の接点を創る仕事だなということです。社内の要望を社外に伝えて変えていく。また、社外の期待を社内に伝えて社内を変えていく仕事です。社内と社外のギャップを埋める仕事とも言えるかもしれません。これは単に何でも社外の要請に、社内を合わせていくということでもないし、逆もまた然りです。社外の要請と、社内のWillや現実との一致点を探していく、社外から社内に向けられる意見を整理して持ち込むことで社内を変えていくといった仕事とも言えるかもしれません。f:id:merpoli:20200609214655j:plain


社内で政策企画チームの使い方を理解してもらうことの重要性

 高橋> 一方で、社内からさまざまな相談を持ち込んでもらい、政策やルールとして落とし込んで実現していくには、経営陣はもちろん、プロダクト・ビジネス・CS等のさまざまなチームとの信頼関係を構築していくことが重要でしたね。政策企画の仕事には、本来的な公共政策的な側面での仕事と、もう一つ、事業支援の側面での仕事があると思っています。政策企画チームのメンバーの中には、公共政策的な役割を担いたいというメンバーも多いと思いますが、会社という組織の中に存在する以上、事業貢献は必要です。それを抜きにしては、社内において頼られることもないし、情報も集まってこないし、意見も通りません。まずは、社内での信頼関係の構築が重要だと、当時、吉川さんとよく話をしていたのを思い出します。

 吉川> そこは、明確に意識してきましたね。政策企画の仕事は、法律や政策などに関する専門的・マニアックな議論も多く、プロダクトやビジネスなどを担当する人たちには伝わりにくかったりします。経営陣はもちろん、社内のあらゆるチームの人たちに理解してもらえるよう、早期に、「明確にわかりやすい成果を出す」ということは意識的にやってきましたね。

 高橋> よりビジネス近いところ、経営陣、プロダクトやビジネスの現場が困っていることへの対応などを意識的に拾いに行くことが重要でしたね。法律改正や政策の反映は、本来、長期的に時間がかかるものですが、短期的に成果が出るものにも注力してきました。閣僚、閣僚経験者、各政党のキーパーソンとの面談もたくさん重ねてきました。当初、メルカリは、国会議員との関係がそれほど強くはありませんでしたが、今では、各課題でキーマンとなる方々とも関係性をつくれてきました。そうした関係性の一つの表れとして、メルカリやメルペイのカンファレンスに、毎回、現職大臣や経団連の会長からメッセージをいただけるようになったことがありますね。

 吉川> メルカリで初めて政策企画の部署がつくられて、社内的には、どういう人達で、どういう貢献してくれるか分からない状況で「なるほど、そういう感じで役に立つんだ」と思ってもらうっていうのが重要でしたね。

高橋> 特に政策企画の仕事が機能したと言えば、メルペイの事業支援の時でしょうか。この際は、政策企画チームはもちろん、PRチームやLegalチームなどと連携しながら、戦略的に、またタイミングとバランスを取りながら、社内外の関係者に働きかけ、結果につながりました。先日入社した他チームの新メンバーがこの話を聞いて感動してくれてましたもんね。政策企画や公共政策のようなチームを社内に抱えている企業はまだ少なく、当初、政策企画チームが立ち上がったころは、社内のみなさんも政策企画というチームがどういう役割なのか、自分たちの仕事をどうサポートしてくれるのか、捉えにくかったかと思います。今は、だいぶ私たちの仕事について理解してもらえるようになってきたと思いますが、吉川さんとして今後やっていきたいと思っていることはありますか?

吉川> 会社のステージもスタートアップという立場から、社会のなかで存在感が大きくなってきているなか、メルカリ・メルペイが社会とどのような関係を構築していくか、社会のなかで中長期的にどのような役割を担っていくか、ということを議論し、社会とコミュニケーションをとっていくことが大事なステージになってきているように感じます。

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後編につづく

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吉川 徳明 (Noriaki Yoshikawa)

メルカリ会長室政策企画Director。2006年、経済産業省入省。商務情報政策局でIT政策、日本銀行(出向)で株式市場の調査・分析、内閣官房でTPP交渉などに従事。2014年からヤフー株式会社に入社、政策企画部門で、国会議員、省庁(警察庁、総務省、金融庁等)、NGO等との折衝や業界横断の自主規制の策定に従事、2018年4月、政策企画参事としてメルペイに参画、同年8月にメルカリ社長室政策企画マネージャー、2020年3月に現職。東京大学大学院経済学研究科修了。

 

高橋亮平(Ryohei Takahashi)

メルカリ社長室政策企画参事 兼 merpoli編集長。1976年生まれ。元 中央大学特任准教授。一般社団法人日本政治教育センター代表理事、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房客員研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。