知財関連国内最大規模の「グローバル知財戦略フォーラム」にメルカリ上野が登壇

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株式会社メルカリ知財チーム上野です。

2021年1月25日、特許庁および(独)工業所有権情報・研修館主催の「グローバル知財戦略フォーラム2021」が開催され、「日本企業の強みを生かすプラットフォーマーのカタチ」と題したパネルディスカッションにパネリストとして参加しました。

(2021年2月8日9:00~3月8日18:00までアーカイブが配信されています)

「グローバル知財戦略フォーラム」は毎年1,000人以上が参加し、知財関係のカンファレンスとしては国内最大級のものです。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、運営者および登壇者のみ会場に集まり、聴講者はすべてオンラインから参加する形式で開催されました。参加者数は例年並みであったとのことです。

本パネルディスカッションのテーマが「プラットフォーマー」であったため、メルカリというマーケットプレイスを運営する企業の知財担当者として、プラットフォームらしい判断が必要とされる業務である模倣品対策(メルカリに出品される模倣品の削除要請を権利者から受け、削除含め必要な対応を行う業務)について紹介させていただきました。

ここでは、当日紹介しきれなかった事例や事業の方向性との関係などについて述べ、知財関係者が日々の知財業務を進める一助となればと思います。

従来、メーカを中心とする企業の知財業務としては、特許・商標など権利を取得し、競合他社が自社の権利を侵害していないか、逆に自社が他社の権利を侵害していないか調査し、警告・設計変更等の対策をとるといった内容が主でした。つまり権利を侵害するか否かが知財実務の最重要問題でした。

これに対し、当社の模倣品対策業務では、出品物が権利侵害品であるか否かは同様に非常に重要な問題ですが、それ以上に重要な問題があります。それはマーケットプレイスとして出品者や購入者、出品物のメーカ(権利者)などステークホルダーから信頼されるにはどのような判断が最適かという問題です。したがって、場合によっては法的に権利を侵害しない出品物であっても社内規則により削除と判断することがあります。この社内規則の策定も上記観点から知財業務のひとつとして行われています。なお、これらの判断には、削除を申し立てた権利者と削除を望まない出品者との利益の衡量も含まれます。

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次に知財戦略と事業の方向性についてです。当社グループの知財戦略も上記の”プラットフォームとしてステークホルダーの信頼を得る”という点に重点をおいたものとなっています。当社で「Open & Defensive」と呼んでいる知財戦略のうち「Open」は知財を通じてステークホルダーとの信頼関係を構築する”開かれた知財活動”を念頭に名づけたものです(Defensiveはマーケットプレイスを知財で守るという意味です)。

この知財戦略は、特許などの知財情報を分析して、経営陣に事業の方向性を提案するといったものではありません。むしろ事業の方向性に沿って経営に資する知財活動を行っていくことを意図しています。そこで、以下”事業の方向性に沿った知財活動”という観点で、引き続き模倣品対策について事例を用いて述べます。

当社は2021年1月27日、マーケットプレイスの基本原則を公開しました。これは当社EC事業の方向性を示すものといえます。原則のひとつ「安全であること」には、知的財産侵害品のような違法な商品の取引の排除が含まれています。この原則に沿った知財活動として、当社は2014年より「権利者保護プログラム」の運用を行っており、現在500社以上の権利者に加入いただいています。本プログラムを通じて、権利者は、メルカリ上の知財侵害出品物の削除申立てを簡略化することができます。

そして、2021年2月2日、権利者保護プログラム加入者専用のウェブページを開設しました。これにより従来はメールまたは郵送によって行われていた知財侵害品の削除申立てをウェブフォームによる送信で行うことができるようになります。

また、当社グループは2021年2月3日、INTA(International Trademark Association)に加盟しました。INTAは1878年設立、185カ国、6,500以上の組織が加盟する世界最大規模の模倣品対策に取り組む団体です。INTAでの活動を通じて世界の権利者との関係を構築し、権利者保護プログラムを海外に向けてより一層広げていくことを企図しています。

今回の加盟は当社および米国現地法人の模倣品担当者同士の協議から生まれた案でした。今後の目標として、日米マーケットプレイスの模倣品対策をスムーズに連携させることで、グローバルなブランド等の信頼を得て当社グループの事業の方向性である「世界的なマーケットプレイス」における模倣品の撲滅を目指していこうと考えています。

以上のように当社グループの知財戦略は、信頼されるマーケットプレイスを目指すという事業の方向性に沿ったものとなっています。自他社が互いの権利を侵害しているかという観点だけでない知財活動の事例として知財関係者の参考になれば幸いです。

(上野 英和)

 

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