【トップ対談】日本財団とメルカリが業務提携でめざす「モノの売り買いが寄付になる」仕組みの構築とは

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3月29日、株式会社メルカリと公益財団法人 日本財団は、両社の持つアセットを通じた寄付の仕組みを構築・推進する業務提携に合意しました。

月間利用者数1,800万人超の顧客基盤を持ち、循環型社会の実現に取り組むメルカリと、60年近く社会課題解決に取り組んできた日本財団の知見・ネットワークを掛け合わせることで、誰もが気軽に社会貢献できる環境の実現を目指します。

今回は、締結に際して、日本財団の笹川陽平 会長と、メルカリの山田進太郎 CEOが行なった意見交換でのお話をご紹介できればと思います。

 

笹川陽平 日本財団会長(以下、笹川)> 昔は個人と地域社会が密接に関わり支えあい、「利他の心」といって困る他人を助ける気持ちが根付いていたように思います。しかし、最近は人間関係が希薄化し、特に若い人は誰かを支えたり、支えられたりする経験が減っているのではないでしょうか。今回の提携は、そのような社会に一石を投じると考えています。

 

山田進太郎 メルカリ代表取締役CEO(以下、山田)> メルカリを使ってモノを売ったお金は、生活費とは異なるもう一つのお財布だと認識し、趣味や少しの贅沢に使う人もいるようです。こうしたことから、メルカリの売上金を使った寄付の仕組みは、通常のお財布より寄付をするハードルを低くできるのではないかと思ったりもしています。特に、メルカリのお客さまには若い方も多いので、これまで寄付という行為に踏み出せなかった方も参加するきっかけにできればと思っています。

 

笹川> 金額の多寡じゃありませんよね。

 

山田> これまでメルカリは、自分にとって役目を終えたモノを他の必要とする誰かに繋げるという、モノの循環を支えるビジネスとして社会に貢献してきました。ただ、これからはモノ以外も循環させるスキームを作ることで「社会の公器」としての役割にいっそう力を入れようと話をしています。

 

笹川> 日本財団はアフリカで35年間農業指導をしていますが、昔の日本の農業は化学肥料でなく、微生物で行なっていました。排泄物をくみ取らせる代わりに、野菜をもらうといったやり取りがありました。アフリカの農業支援においても、こうした日本の古くからの循環型農業の知恵を試してみたいと考えています。

服についても昔は今よりずっと大切に扱っていました。私は男三人兄弟だったのですが、戦争前、母が兄貴のセーターを解して、炭の上でヤカン渡して湯気で糸をまっすぐにして、私のセーターを編んでくれました。リサイクルしたセーターは、最後は毛糸のパンツになりました。

日本財団では、海の豊かさを次世代に引き継ぐための活動もさまざま行なっていますが、海洋ごみの問題でも循環型の解決モデルに取り組んでいます。例えば、海洋ごみの中では漁網は大きな問題の一つですが、私たちは、これを集めてリサイクルペレットにし、、その素材を使って素敵なバッグにするという取り組みもはじめました。

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山田> 最近は、商品の背景にあるそうしたストーリーで買う方も増えてきています。

 

笹川> メルカリは、アメリカでも積極的にビジネスを行なっていると聞きますが、こうしたリユースなどに関する意識や文化は、欧米ではどうでしょうか。

 

山田> ヨーロッパでは日本よりも古着を着る印象ですし、寄付もさかんです。日本よりもオフライン・オンラインの寄付ともに多くなっています。

ただ、さきほどお話を聞かせていただいたように、最後まで大事に使うという感覚は日本の方があるかもしれません。

一方で、アメリカでも最近はこんまりさんが大人気になるなど、モノを大切にするトレンドへと変わってきています。

最近は、コロナで家にいることが増えた結果、欧米でも我々のようなサービスが増えて循環型社会に近づいてきています。

 

笹川> 日本だとまた状況が違うのでしょうか。

 

山田> 日本でメルカリを使う人のなかには、お小遣いを稼ぎたいからというよりも、モノを大切にするために、次に使ってくれる人に譲りたいという思いがあるようで、モノが循環しています。

一方で、「お金などはいらないからメルカリ使わない」という人もおり、今回の提携を通して「社会貢献のためならやろうかな」と思う方が増えればいいなと思っています。

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笹川> 日本財団は、皆様からいただいた寄付金は間接経費には使いません。多くの方々からの想いを受け取るからには、透明性と説明責任が大切だと思っています。今回の提携においても、寄付がどう使われたかのストーリーをきちんと御社や寄付者にお伝えしていこうと考えています。

日本財団では最近、「母乳バンク」を始めました。日本には1,000g以下など低体重で生まれる早産児が数多くいて、こうした子どもたちはには免疫力を高める母乳が必要とされているんですが、多くの方々から母乳の提供を受けられそうです。また、難病と闘っている多くの子どももいます。中には、人工呼吸器を必要とし24時間看護が必要な子どももいます。さらに、日本では7人に1人の子どもが相対的貧困にあると言われています。家の水道が止められ、1か月以上風呂に入ってない子もいました。

日本の社会の見えないところで苦しんでいる方々に、多くの方の目が向きお金が循環していくことは素晴らしいことですね。

もちろん行政からの公助が重要ではありますが、共助といって助け合いの精神でいま私たちにできることから進めることが重要です。

 

山田> 今回、メルカリと日本財団が業務提携を結ぶことになりましたが、オンラインとオフラインを融合した社会貢献には大きな可能性があると思っています。

 

笹川> 社会を変えるのは私たちです。どうかよろしくお願いします。

 


メルカリと日本財団、寄付促進に向けた
オンライン・オフライン両面での業務提携に合意

「モノの売り買いが寄付になる」仕組みの構築を目指す


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■業務提携概要 (21年7月以降順次実施予定)

モノの売り買いが寄付になる仕組みの構築・推進

「メルカリ」上での取引が寄付に繋がるキャンペーン、スキーム等の企画・開発検討

オフラインの場を活用した寄付促進プログラムの開発

「メルカリ教室」(※1)、「メルカリステーション」(※2)を活用した、オフラインの場での寄付促進プログラムの企画・開発

災害発生時に迅速に寄付できる仕組みの開発

災害発生時に「メルカリ」のお客さまが被災地支援活動に寄付できる特設Webページの開設など、災害発生に備えた被災地支援施策の企画・開発


※1 「メルカリ教室」:メルカリ認定講師が専用テキストを使って解説し、参加者は講師と一緒にワークショップスタイルで実際にアプリを操作しながら「メルカリ」の基本的な使い方を体験できるサービス。

※2 「メルカリステーション」:「メルカリ教室」を開催したり、出品する商品の撮影ができる撮影ブース、売れた商品がその場で発送出来るメルカリポストなどを設置した、「メルカリ」を体験しながら学べるオフライン店舗。

 

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(高橋 亮平・鈴木 万里奈)

 

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