パブリックに関わるキャリアを考えるイベントに政策企画の吉川が登壇

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6月18日、マカイラ株式会社主催の「パブリックに関わるキャリアを考える」第4回が開催され、同イベントにメルカリ政策企画から吉川が登壇しました。

「パブリックに関わるキャリアを考える」イベントには、過去第2回にメルカリ政策企画の安井が登壇しました。

今回のイベントでは、弁護士からキャリアをスタートしたアンドパッドの岡本杏莉氏とともに、ファーストキャリアが現在の仕事に与えた影響や今後のキャリアについての議論が交わされ、大変有意義な時間となりました。

当記事では、同イベントの中から、吉川が発信した情報をピックアップしてお届けします。

 

民間だからできる規制の細部を描く面白さ

インターネット分野の特徴の一つとして、他の分野と比較した場合に、公的規制と同等かそれ以上に、自主規制の影響力が大きいということが挙げられます。それは、現状の民間企業による自主規制が広範な影響を持つということだけでなく、行政の側も自主規制を尊重する意思が強いということです。過去のインターネット分野の規制を見ても、政府は規制の大枠を示して細部は自主規制に委ねるという形がしばしば見られます。

こうした状況の下では、規制の詳細な設計や細部の執行は民間側が担っていくことになります。そして、こうしたルールの具体的な設計や実務を担えるところに民間企業でのパブリック・アフェアーズの面白さがあります。

公務員時代、例えば、私は「〜していくことが望ましい」という文末で括る報告書をよく書いていました。行政という立場では「望ましい」というところまでしか書けないし、逆にそこまでで書くのを止める方が適切な場面も多かったからです。しかし、民間ではその先を描くことができます。「望ましい」と書いた行政の先を、民間では自分の手で実行していくことができます。

 

民間企業における公務員の「強み」

公務員としてやってきたことの強みとはなんなのかということを皆さん気にされているように感じます。特に、業務を2、 3年でローテーションする公務員の方は、「ゼネラリストではあるがこれといった専門性がない」ということを問題意識として抱えている方が多いです。しかし、民間企業の中で求められる能力は、特定の分野に対する専門的な知見を持ってるという意味での「専門性」だけではないと私は考えています。

スタートアップでは、外部環境の変化に合わせて、次々と新しいビジネスを始めることが常となっています。そこでは特定の分野に詳しいこと以上に、いかに新しい分野にキャッチアップできるかということの方が重要になります。例えば、こうした資質は、民間企業で働く上での貴重な資質・能力であると言えます。

また、公務員の中には、大臣や政治家、知事や市長の意思決定をサポートするような仕事に携わっている方もいます。こうした方々の中には、情報収集・整理の力、論点抽出・論点設定の力、複雑な利害関係をまとめ上げる合意形成の力といった優れた能力を備えた人がいます。

民間企業においても行政機関においても、重要な意思決定を行う役職の人たちは、常に時間に追われていて、個々の問題に対する十分な知識や時間を必ずしも持っているわけではありません。そこで、そういった人たちに、雑多で膨大な情報の中から論点を抽出して意思決定に必要な情報を揃える能力、すなわち論点抽出・論点設定の力が必要となります。そして、論点を抽出した上で、意見が異なる人たちの合意を形成する、そのために調整するということが次に求められます(合意形成の力)。

このような能力は、様々な部署の業務を広く横断的に取りまとめた上で決裁者に判断を仰ぐ仕事をしてきた人の中によく見られます。日々の業務の中で、論点抽出・論点設定そして合意形成の訓練を重ねてきている公務員は確かにいて、それは民間企業でパブリック・アフェアーズをやっていていく上で大きな武器となります。

 

新しい仕事を作っていく

パブリックに関わる職種のニーズは、年々高まっていると感じています。一方で、この職種がどのような広がりを持っていくかについては、いまだはっきりとせず、各社のチームの中で徐々にその輪郭が作られていっています。メルカリでは、政策企画の役割をあまり限定せずに、『事業成長と信頼獲得のために「何でもやる」』というふうに一旦定めています。自分たちの仕事をどう定義したらいいのかということを日々考えつつも、会社に必要とされること、事業に貢献できることをみんなそれぞれがやっていく段階であると思っています。

かつて、瀧本哲史先生が東京大学で開講していた授業に呼ばれた際に、瀧本先生から、個社の事情に囚われずに「新しい職種・仕事を作る」という気概でやってくれと何度もハッパをかけられました。

もちろん、企業で働く以上、事業に貢献するという枠組みのなかで仕事をするわけですが、それと同時に、自分たちはこれまで社会になかった新しい仕事を作っていくんだというぐらいの心持ちでやる方が楽しいです。そして、そうやって楽しんでやった方が、みんなが面白がって興味を持ってくれて、企業にいろんな人が集まってくれます。結果として優秀な人材が集まり、事業に対する貢献も大きくなると考えています。

 

本記事は、株式会社アンドパッドの運用する建設DX研究所とのコラボ企画で、建設DX研究所にも『建設DXを推進するパプリックアフェアーズの魅力・やりがい』が掲載されています。

合わせてご覧ください。

 

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吉川 徳明 (Noriaki Yoshikawa)

メルカリ執行役員。2006年、経済産業省入省。商務情報政策局でIT政策、日本銀行(出向)で株式市場の調査・分析、内閣官房でTPP交渉などに従事。2014年からヤフー株式会社に入社、政策企画部門で、国会議員、省庁(警察庁、総務省、金融庁等)、NGO等との折衝や業界横断の自主規制の策定に従事、2018年4月、政策企画参事としてメルペイに参画、同8月にマネージャー、2020年3月にディレクター、2021年7月に現職。