ソウゾウの「メルカリShops」により広がる地域との連携や社会課題解決の可能性(前編)

f:id:merpoli:20210810144353p:plain

7月28日、新サービス「メルカリShops」がプレオープン(試験提供開始)されました。今回は、メルカリ政策企画チームからこの「メルカリShops」を運営するグループ会社である株式会社ソウゾウ(以下、ソウゾウ)に出向し、政策企画を担当している布施健太郎 参事(以下、布施)と、merpoli編集長でもある高橋亮平 メルカリ会長室政策企画参事(以下、高橋)の2人で、この「メルカリShops」により地域との連携がどのように広がっていくのか、また社会課題解決の可能性について話をしました。

 

新サービス「メルカリShops」ってどんなサービス?

高橋> 7月28日に新サービス「メルカリShops」がプレオープンされました。まず、この「メルカリShops」とは、どういうサービスなのか教えてもらえますか?

布施> 今まで「メルカリ」は、個人間取引(CtoC)を行うマーケットプレイスでしたが、「メルカリShops」では、新たに法人や個人事業主などの事業者が出品できるようになりました。どなたでも「メルカリ」アプリ内にネットショップを開設して、独自の集客なしで月間1,900万人超の「メルカリ」の利用者に自社の商品を届けることが可能になります。

※プレオープン時点では先行出店へ申し込みいただいたショップ運営者のみが出店できます。

布施> 大きな特徴は3つです。1つ目は、スマホ1つで「かんたん」にネットショップが開設可能ということです。「メルカリ」へ出品するのと同様の簡単な操作で、商品管理や在庫管理まで、スマホ1つで完結することが可能です。2つ目は、先程も述べましたが、1,900万人以上の利用者様に商品を販売できるので、独自で集客することなく「売れる」機会を提供できることです。3つ目は、メルカリと同様に、初期費用・月額利用料無料で、商品が売れた際にのみ、販売価格の10%が手数料として発生するだけなので、出品するのに費用がかからない、ということです。とにかく出店・出品のハードルがとても低いサービスなので、今までネットショップを開設したことなかった方や、ネットショップを開設したが売れなかったという方にぜひ利用していただきたいです。

f:id:merpoli:20210805114013p:plain

 

新サービス「メルカリShops」は地域経済活性化につながる

高橋> 布施さんは、この「メルカリShops」に大きな可能性を感じ、今年4月に、この新規事業を担うために作られたグループ会社、ソウゾウへ出向をされたわけですが、なぜこのタイミングでソウゾウに行こうと思ったのでしょうか?ソウゾウでの役割も含めて教えてください。

布施> ソウゾウでも政策企画というポジションで仕事をしています。仕事としては守りの面と攻めの面がありますが、守りの面では、省庁や関係団体への説明や、プロダクトの法的・社会的リスクのチェック、特定DPF透明化法等の新法への対応の検討、CS部門のサポートなどを担当しています。攻めの面では、地方自治体や団体との連携による地域経済活性化の推進や、「メルカリShops」を活用した社会課題の解決などを担当しています。

自分がメルカリにジョインしたのが2019年4月でしたが、以来、主にメルペイの業務について政策企画の立場からサポートしてきました。メルカリへの入社以前から、やはりよりプロダクトに近いところで働きたいなという思いがあり、今回このソウゾウの社内公募があり、手を挙げました。自分自身が元々、自治体の仕事をしていたので、地域に対する思いがありました。住んでいる地域を良くしていくとか、活性化していくとか、何らかの形でそういうことに携わりたいなと思っていたところに、BtoCをやるという話になったので、ぜひ関わりたいと。新型コロナウイルスの感染拡大以降の経済情勢の中で、地域経済の活性化にまさしくこのサービスが役に立つのではないかと感じたのも理由の一つです。このように自分がやりたいと思ったことをできる環境を与えてくれるのも、メルカリという会社の良いところだと思います。

メルカリがこれまで行ってきた、個人をエンパワメントすることにより暮らしを良くしていくことであったり、そのことを通じて地域コミュニティの活性化をしていくということに加えて、BtoCという新たなサービスを地域に提供していくことにより、直接的に事業者をエンパワメントしたり、地域経済を活性化していくことに携われています。

高橋> 「メルカリShops」でどのように地域経済を活性化していきたいですか?

布施> 「メルカリShops」が、地域で経済活動を行っている法人や個人事業主の力強い味方になるとともに、起業や副業でチャレンジしようとしている個人やスタートアップを応援する存在になれればと思っており、地域を特定したキャンペーンなども今後検討していきたいと考えています。また、事業者が出品できるということは、自治体自身も出店し、出品することができるようになるということです。資源循環型社会の推進や財源確保といった観点からも、不要となった備品や使えそうな粗大ごみなどを「メルカリShops」で販売するといったこともできるようになります。また、空き家対策(空き家の物品の販売推進)として自治体が空き家の所有者との間をコーディネートして「メルカリShops」で販売するなど、新しい連携の形が考えられるのではないかと思っています。

自治体や地域の商工団体、農協等との窓口をこちらに設けましたので、連携を希望される場合は、ぜひご連絡をいただければと思います。

 

多くの皆さんに地域に生活実感を持ってもらえるようにしたい 

布施> 地域が良くなるためには、住んでいる地域に生活実感を持ってもらうことが大事なんだと思います。行政も民間もそれぞれの役割・分野で頑張らないといけないのはもちろんですが、一方お互いにアメーバーみたいに連携して、行政が民間のようなことをやったり、市民が行政のようなことをやったりといった具合に、各々の領域にオーバーラップしていくことで、地域はもっと良くなっていくのではないかと思っています。

高橋> かつては、公的な社会課題を解決するのに、行政は、税金を使って行政職員自身が実施するという認識があったと思うんですが、時代が変わってきて、例えば、民間のお金を使って公的な課題を解決しようというPFI(Private Finance Initiative)や、公共の担い手みたいな視点で、企業だけでなく、NPOや市民までを社会課題解決の当事者にして行こうというPPP(Public Private Partnership)と言われる公民連携みたいな考え方が徐々に生まれてきましたよね。行政や政治の分野にいた者からすると、その認識って共有されると思うんですが、僕自身もメルカリに加わって、民間の人たちの感覚なども中に入っても見てきたのですが、民間でビジネスをやっている方々からすると、ビジネス側ももっと社会課題解決や公的なところと連携してと言うところまでは、まだ意識がいっていないかなとも感じますね。

f:id:merpoli:20210805114144p:plain

 

DX推進の文脈での「一億総EC化」を「メルカリShops」で

高橋> 話は少しずれてしまいますが、今、役所などでもDXということがしきりに言われています。この側面でもこの「メルカリShops」には可能性がありますよね。

布施> 業界業界に文化や伝統もありますし、それぞれ慣行もあるので、DX化も大変だと思います。ただ、こうしたDXによる変化の流れは元に戻らないものだとも思います。そう考えると、自治体も「街の中全体をデジタル化していく」ということについてよりセンシティブに動いた方がいいのではと感じます。役所自体のデジタル化も重要ですが、街のデジタル化ということが今後はより大事な政策イシューになっていくのではないでしょうか。その意味で、今回の「メルカリShops」みたいなサービスを地域の店舗や事業者が使っていくことも一つの手段で、こうしたことの積み重ねが、地域のDX化につながっていくのではないかと思います。

高橋> 私は最近、「一億総EC化」と言ったりしています。これまでメルカリ自身も「人をエンパワメントする」と言ってきていましたが、ものを売ることってこれまでは店舗だったりなど特定の方々しかできないものであったものが、個人が急激にエンパワメントされ、全国の人達が全国の人達を相手に売買ができるようになりました。これがさらに全国の店舗や事業者がエンパワメントされ、極端に言えば、すべてのお店がECサイトを持つようになるという世界観が「メルカリShops」だと思っています。今までリアルに売るしかなかったところに、黒船のように大手のEコマースなどが入ってきて、「ECというのはこれまで商売やってきた人たちの敵だ」といった意識があった人達もいるかと思いますが、これって、一昔前にショッピングモールが日本中に作られた際に「商店街が潰れる」などと言われていた構図に似てるなと思っています。その世界観から、ECというのは商売をする人たちにとって、大きな武器になりえて、リアルの店舗も全ての店舗がその武器を持てるという世界観に変わるのかなと思っています。そういった世の中を変えるインパクトがこの「メルカリShops」にはあるのではないかと期待しています。

(高橋 亮平)

ソウゾウの「メルカリShops」により広がる地域との連携や社会課題解決の可能性(後編)はこちらから

----------------------------------------------------------------------------------------------------- 

布施 健太郎(Kentaro Fuse)

ソウゾウ政策企画参事。1972年生まれ。大学卒業後、百貨店に勤務。その後、国会議員政策担当秘書(衆議院)を経験し、市議会議員、県議会議員として地方自治に従事。介護会社の立ち上げや病院の事務責任者・開発担当等を経て、2019年4月メルカリ入社し、主に政府系キャッシュレス事業を担当。2021年4月より現職。宅地建物取引士、ソムリエ協会認定ワインアドバイザー、ホームヘルパー2級などの資格も持つ。東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻修士課程修了。

 

高橋 亮平(Ryohei Takahashi)

メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長。1976年生まれ。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、 神奈川県DX推進アドバイザー、国立大学法人滋賀大学講師。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか