ソウゾウの「メルカリShops」により広がる地域との連携や社会課題解決の可能性(後編)

f:id:merpoli:20210805114605p:plainソウゾウ政策企画参事 布施 健太郎

7月28日にプレオープン(試験提供開始)された新サービス「メルカリShops」についての布施健太郎 ソウゾウ政策企画参事(以下、布施)と、merpoli編集長でもある高橋亮平 メルカリ会長室政策企画参事(以下、高橋)の2人による対談の後編です。今回は、とくにこの「メルカリShops」を通じた社会課題や解決や、地域との連携についていの思いを語りました。合わせて前編もご覧ください。

 

「メルカリShops」を通じた社会課題解決への思い

高橋> 私がメルカリに入った直後に自治体連携をやり始めた時には、メルカリの中でも全然響かず、そこまで重要なの?とか、まだ早いんじゃない?という感じでした。それが継続しているうちに徐々に認知されてきて、最近では自治体連携ということを色々なビジネスが言うようになってきたりなど、その認識も大きく変わってきたなと感じています。こうした自治体連携など社会課題の解決にも、この「メルカリShops」には大きな可能性があると思っています。例えば、「GtoC(Government to Customer)」と言っていた自治体など公的機関が直接「メルカリ」を使うアイデアがありましたが、この辺りもどんどん進めていきたいですよね。

布施> 役所そのものは販売して利益出すということを目指すところではありませんが、官公庁オークションの活用などもされていた実績があるので、ITツールを使うということや、収益を得て住民に還元するということについては、だいぶハードルも低くなっているのではないかと思います。

高橋> 役所が直接「メルカリShops」を使って地域産品や不要品を売るということもあると思いますが、それ以外にも公的な組織などに使ってもらうという意味では、障害者施設の人たちが作業所で作ったものを売る販路拡大に使うといった世界観にしていくことを、役所と連携しながら創っていくということは「新しい福祉」の提供になるのではないかと思いますし、新しい社会課題解決の仕組みになるのではないかなと思ったりしています。

布施> 障害者の人達もですが、さまざまなハンディーを抱えている人たちでも普通に稼いで生きていくということが当たり前になる世の中にどんどんなってもらいたいですね。福祉を受けているという部分があるとしても、自分で稼いで生きていくということが究極的のゴールであっていいと思いますし、それにどんどん近づけていくことが可能になったのかなと思います。

高橋> メルカリももちろん株式会社であり、ビジネスで成功して行かなければならないというのは当然あるんですが、単に儲かればいいよねということではなく、社会をより良くしていくとか、社会課題を解決していこうとかそういうところがあるのが、メルカリなのかなと思ったりしますよね。

布施> その点に私も期待しています。すべての障害者施設が上手くいくとは思わないんですが、10%でも上手くいけば、大きな意味があると思うんですよね。

高橋> 障害者施設のあり方も変わってくるかもしれませんよね。単に障害者施設の売上が上がって、障害者の皆さんの所得が増えますよということだけではなく、本当はさらに一歩進めたいと思っています。今までは、障害者が所得を得ようと思うと、障害者雇用の数を増やすしか選択肢がありませんでしたが、障害者雇用ってなかなか進まなかったりします。例えば「メルカリShops」で売ることがスタンダードになってくれば、障害者自身も個人での「メルカリ」利用からもっと広がって自分でショップを開設して売るとか、雇用ではない所得を得る方法方法が多様化することで、大きな可能性が広がるのではないかと思っています。そういうことって、障害者福祉のあり方自体変えていく可能性がありますよね。

f:id:merpoli:20210406074426j:plainメルカリ会長室政策企画参事 高橋 亮平

 

買い物難民対策にも「メルカリShops」には大きな可能性

高橋> また、この他にもメルカリで自治体連携をはじめた当初から言っていたことに、例えば、買い物難民対策なども挙げていました。買い物難民みたいな高齢者って大勢いるじゃないですか。ああいうところの対策って、今までは、バスを通すとか、タクシーチケットを配るとか、交通利便性を税金で解消するという発想しかなかったわけですが、むしろそういう人たちこそ、ECの利便性を活用することで、あまり外に行かなくても便利な暮らしができるようになるといった方法もあるかなと思っています。例えば、買い物難民になっている団地があったら、団地でまとめて「メルカリ」でみんなで共同購入をして配るとか、利用の方法はもっと色々あって、こういったフリマアプリも含めた様々なインターネット技術を使うことで、今まで一番利用に縁遠かった人たちも救える仕組みができたらなと思います。

布施> このコロナ禍でUber Eatsとか出前館とかどんどんみんなが使うようになって、宅配に対する抵抗意識ってハードルが下がったと思うんですよね。ECとか生協の宅配を使っていく人って、便利なのでこれからもっと増えていくと思います。過疎化していく地域などはとくにそうで、先日、福島に行った際にも現地の人が、土地を買ってスーパーを建てて、人を雇ってものを売るよりも、ある程度まとめて宅配した方が実はコストが安いんじゃないかと話していました。そうすると売れ残りの無駄も出ないじゃないですか。そういう時代になるのかもしれないなと思ったりします。

 

地域における新たな価値観や未来感を提供していくのも政策企画の役目

高橋> そこは同じ認識です。新型コロナウイルスの感染拡大によって、ネガティブなことが多く起きているわけですが、一方で、物凄く社会を変えたり、その変化のスピードを上げたなと思っています。例えば、教育においてもオンラインで教育をするとか、会社の働き方も僕らもそうですがオンラインのテレビ会議がメインになって働いているということなども、コロナ前には、多くの方々はこうした世界観を想像すらしていなかったのではないかと思います。そういう意味では物凄いスピードで未来が来ているわけで、私や布施さんというのは、新しい技術を生むエンジニアではありませんが、新しい技術やビジネスを使って、どういう新しい社会を作り得るのかといった、そういう未来感を創って皆さんにイメージを伝えていくとか、とくに今までそういう感覚が薄かった行政や自治体の世界であったりとか、こうした未来の世界観を伝えて一緒に作り上げていくみたいなことは、物凄く可能性があるかなと思っています。メルカリという会社が、私達のような自治体や公共的な取り組みを行ってきた人材を採用したことの価値をもっともっと出して行かなければならないなと思っており、他の企業にはまだまだ少ないこうした分野の人材がいるからこそできる社会と連携した新しいモデルだとか、社会の新しい未来感とか、提示していけるといいなと思っています。今回の「メルカリShops」も含め、引き続き連携していきながらやっていきましょう。そういう意味でも「メルカリShops」への期待は大きいですよね。

布施> メルカリに入ってからメルペイの仕事をしていて、あまり地域と関わることがなくなってしまっていたのですが、「メルカリShops」というのは一人ひとりの事業者が使っていくサービスなので、より地域に入っていきたいなという思いがあります。地域の人達の意見を聞いて、それをプロダクトやサービスにフィードバックして、そこからまた新しいビジネスの種が生まれてくればいいなと。それにより、また皆んなの生活が良くなっていけばいいと思いますし、そういう循環を作れれば最高ですね。商売の種って、パソコンで一生懸命情報を拾っているだけでは生まれてこないんじゃないかと思っていて、コロナの状況下の中でも、人との関わりの中でしか生まれてこないと考えているので、そういう仕事をしていきたいです。

(高橋 亮平)

 

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布施 健太郎(Kentaro Fuse)

ソウゾウ政策企画参事。1972年生まれ。大学卒業後、百貨店に勤務。その後、国会議員政策担当秘書(衆議院)を経験し、市議会議員、県議会議員として地方自治に従事。介護会社の立ち上げや病院の事務責任者・開発担当等を経て、2019年4月メルカリ入社し、主に政府系キャッシュレス事業を担当。2021年4月より現職。宅地建物取引士、ソムリエ協会認定ワインアドバイザー、ホームヘルパー2級などの資格も持つ。東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻修士課程修了。

 

高橋 亮平(Ryohei Takahashi)

メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長。1976年生まれ。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、 神奈川県DX推進アドバイザー、国立大学法人滋賀大学講師。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか