【せいあんちゃんねる】中の人インタビュー。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に学ぶ面白さとのバランスを取った情報発信の重要性

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現在、メルカリ政策企画チームには、独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下、NITE)より有山航平が出向しています。

NITE(通称:ナイト)は、1928年に商工省(現在の経済産業省)に設置された輸出絹織物検査所として生まれた組織で、2001年からは、経済産業省所管の独立行政法人として、社会に存在するリスクの低減に貢献し、国民生活の安全と持続的な経済発展の基盤を支えています。

このNITEがYouTubeチャンネル「NITE official」で【せいあんちゃんねる】という動画が公開しており、製品安全という固く真面目なテーマを面白く、親しみやすく発信しています。

今回は、メルカリ出向中の有山との繋がりから、この【せいあんちゃんねる】の中心的な制作メンバーであるNITEの向井祐太さんにお聞きしたお話しをご紹介します。

公務員の行う真面目かつ面白い情報発信の秘訣についてご覧ください。

 

「ながら見」でも伝わる注意喚起動画を

浅野> 今回、インタビューをさせてもらうにあたって、【せいあんちゃんねる】のYouTube動画を何度もリピートして見ていたので、こうして実際にお話しすると「本物の【せいあんちゃんねる】だ!」って思っちゃいます。笑

中でも個人的に、すごく好きなシーンがあって【せいあんちゃんねる】第1弾の動画の00:30あたりからなんですけど、短絡したクリップが赤熱して弾けるタイミングと向井さんの語りがぴったりすぎて何度もリピートしちゃいました。笑笑

 

向井> ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。

 

浅野> 【せいあんちゃんねる】では、ザ・YouTubeといった感じのポップでユーモラスな動画を発信していますが、いつからこのような情報発信を行っているのでしょうか?

 

向井> もともと私どものYouTubeチャンネル「NITE official」の中で、今の【せいあんちゃんねる】の動画内に組み込まれているような、製品事故の例などを取り上げる製品事故防止のための注意喚起動画をずっとYouTubeで配信してきました。こうした動画は、現在でも月1本ないし2本アップしています。その上で、別枠として【せいあんちゃんねる】も始めました。

 

浅野> これまでの情報発信に加えて、【せいあんちゃんねる】という親しみやすい動画を配信しようとしたのには何かきっかけがあったのでしょうか?

 

向井> 今までのYouTubeに上げていた動画は、こんな使い方をするとこんなことが起きるという現象をそのまま伝えることをコンセプトにしてました。そのためには、なるべく文字やナレーションを入れずに、視聴者に「読み取ってもらう」動画を制作してきました。そのため、どうしても、前提知識が必要であるとか、集中して画面を見ないといけないといった動画になってしまいがちでした。そんな中で、「ながら見でも情報が伝えられるような動画を作りたい!」という課題意識がありました。

もう一つの理由は、YouTubeでの発信を強化しようと考えた時に、すでに農林水産省の「BUZZMAFF ばずまふ」さんが公務員ユーチューバーの走りとして存在していたことです。私たちもそっちの方向性に突き進んでいいんだ!と思ったことが大きな理由となっています。

 

怖さではなく、安全な使い方を伝える

浅野> NITEの看板を背負っての情報発信ということで、特別な難しさを感じることはありますか?

 

向井> ほんとのほんとは、安全対策をきちんとやってる、あるいは、頑丈に作られている「良い製品」の紹介もやりたいという気持ちがあります。しかし、NITEでそれをやってしまうと公務員の利益誘導になってしまうため、商品紹介はできないという苦悩があります。

 

浅野> なるほど。個人的には、向井さんの商品紹介の動画もめちゃめちゃ見たいです。笑笑

 

向井> あとは逆に、取り扱った製品が「危ないもの」と捉えれてしまうことがないように、情報の伝え方も気をつけています。あくまで、「最悪の場合こうなっちゃうよ」であったり、「こういうところに気をつけると安全に使えるんだよ」ということを伝えたいと思っています。ただ、ショッキングなシーンも一部あるので、「これって怖いものなんだ」という印象を抱かれがちだったりもします。「モノを悪にはしない」ということを意識して、ながら見で視聴している方にもきちんとそうした情報が伝わるように意識しています。

 

浅野> 確かに、単に「怖い」って印象で終わらないためには、情報の前後の文脈をうまく伝える必要があるので、一筋縄では行かなそうですね。そう思ってあらためて見てみると、「なぜ製品事故が起きたのか」と「事故が起きないためにはどうしたらいいか」という2つの情報が短い動画の中でまとまっていて、工夫が詰まっていますね。

 

真面目さとユーモアのバランス感覚

浅野> merpoliの編集に携わっていると、内容としては真面目なテーマを扱うけど、伝え方まで真面目にしすぎると記事が読みにくくなってしまい、結果的に届けたい人に情報を届けられないというジレンマを感じることが多々あります。

【せいあんちゃんねる】は、そこのバランス感覚が卓越しているなぁと感じます。真面目を崩すギリギリを攻めながらも、「公務員」あるいは「NITE」という枠組みは飛び越えない。むしろ公務員が堅いという印象を逆手にとって笑いに変えつつ、伝えるべき情報をきちんと伝えているところがすごいです。

 

向井> バランスの取り方って、本当にやってみないとわからないんですよね。笑

「バランスが取れている」と言っていただけるとすごく嬉しいです。自分達ではバランスが取れているのかも探り探りでやっている状況で、今日のように、外からの声をもっともっと集めていきたいとも思っています。

 

浅野> 【せいあんちゃんねる】を今後こうしていきたい、みたいな展望はありますか?

 

向井> NITEの組織の中だけで完結するような動画だけではなくて、製品を取り扱わせていただけてるメーカーさんと一緒にやって、メーカーおすすめの使い方、安全な使い方を紹介する、みたいなこともやっていきたいです。

また、見ている人にも活用していただけるような情報発信を通して、製品の安全に使われる土壌を作っていきたいです。

 

後編では、政策企画チーム出向中の有山さんも交えた、NITEとメルカリのつながり等についてのインタビュー内容をお届けします。

こちらもあわせてお楽しみください。

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プロフィール

向井 祐太(Yuta Mukai)

独立行政法人 製品評価技術基盤機構 製品安全センター広報担当。大学時代はロボット工学を専攻。事業者が実施している製品の安全対策に興味を持ちNITEへ入構。6年間製品事故の調査を続けた結果、簡単な知識や意識で多くの事故を防ぐことができると思い、広報業務に従事することを決める。

 

インタビュアー

浅野 潔志(Kiyoshi Asano)

メルカリ会長室政策企画インターン。大学・学部時代は機械工学を専攻し、学生ロボコンに打ち込む。ロボット制作活動の中で、科学技術に親和的な法律家の必要性を感じ、法学部へ転向。2021年4月より、インターン第1号として政策企画チームに参加。現在は、京都大学法科大学院にて法律を学びながら、merpoliの記事作成に携わる。