岸田政権「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の注目トピック

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11月19日、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(以下、経済対策)が閣議決定されました。

この記事では、経済対策の位置付けや注目のトピックを見ていきたいと思います。

 

「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の位置付け

「経済対策」は、令和3年第14回経済財政諮問会議での議論を踏まえ、閣議決定されたものです。

経済財政諮問会議とは、 「内閣総理大臣の諮問に応じて、経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策に関する重要事項についての調査審議」を行う会議体です(「経済財政諮問会議について」参照)。

先日のmerpoli記事でも取り上げた「新しい資本主義実現会議」が、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」を議論するのに対して、今回、経済財政諮問会議で議論された「経済対策」は、「新しい資本主義」のコンセプトを予算・財政という観点から具体化したものとなっています。

参考:「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策(令和3年11月19日閣議決定)」抜粋

政府としては、新型コロナウイルス感染症対応に万全を期すとともに、「新しい資本主義」を起動させ、「成長と分配の好循環」を実現するため、以下の4つを柱とする総合的な経済対策を策定するとともに、その裏付けとなる令和3年度補正予算を編成する。

参考:形式から分析する岸田政権目玉の「新しい資本主義実現会議

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菅政権下の「成長戦略」から引き続き注目されるテーマ

経済対策23ページ以降の「III.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動」の節では、「1.成長戦略」として、以下の項目が挙げられています。

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「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策の概要」(内閣府) (https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2021/20211119_taisaku_gaiyo.pdf)を一部を切り抜いて作成

菅政権下の「成長戦略実行計画」の内容と比較すると、「デジタル」「グリーン」といったテーマが踏襲されていることがわかります。「2050 年カーボンニュートラルの実現」(経済対策26ページ)についても、引き続きアジェンダとして挙げられています。

 

ウィズコロナ、アフターコロナを意識した施策

「コロナ克服・新時代開拓のための〜」と題名にあるように、経済対策では、ウィズコロナ、アフターコロナの新しい生活様式を意識した成長のための施策を随所にみることができます。

例えば、「国産農林水産物等販路新規開拓緊急対策事業(農林水産省)」(12,15ページ)、「日本産酒類の販路拡大・消費喚起等推進事業(財務省)」(35ページ)、さらには「中小企業等の...販路開拓」(38ページ)など、販路拡大に関する記述が多数みられます。これらは、従来からある卸売を前提とした販路に加えて、消費者が家にいながら買い物を行う新しい生活様式への対応を通じて、諸産業を維持・発展させることを企図したものと考えることができます。

また、「分配戦略」の項の中でも、「時間や場所を有効に活用できる良質なテレワークの定着を促進する企業支援」(45ページ)として、新しい生活様式を意識した記述が見られます。

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「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策の概要」(内閣府) (https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2021/20211119_taisaku_gaiyo.pdf)を一部を切り抜いて作成

以上のように、経済対策は、予算や財政の観点から政府の重点政策を読み取ることができます。年明け以降、通常国会に提出される法案をはじめ、予算・財政以外の政策も公表されます。merpoliでは、引き続き、注目の政策についてお伝えしていきたいと思います。

(天野 宏、浅野 潔志)