岐阜市でのやさしい日本語+やさしい日本語コミュニケーション職員研修を実施

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11月30日に岐阜市との※1包括連携協定に基づく連携事業として「やさしい日本語やさしいコミュニケーション職員研修」を実施しました。

※1 岐阜市とメルカリ、メルペイ 地域社会活性化などへの寄与を目的に包括連携協定を締結 

今回のテーマとなる「やさしい日本語」とは、普通の日本語をより簡単にすることで、日本語を母語としない人などにもわかりやすく文法や語彙を調整した日本語のことです。例えば、短くはっきり最後まで言う、あいまいな表現を使わない、尊敬語や謙譲語を使わず、「です」や「ます」など丁寧語で話すことによって、日本語を母語としない人のみならず、日本語が母語の子どもやお年寄りにとってもわかりやすい日本語となるというものです

メルカリでは、社内で「やさしいコミュニケーション」を提唱しています。この「やさしいコミュニケーション」は、「やさしい日本語」だけでなく、英語母語話者や英語上級者が、英語を学習中のメンバーにわかりやすい英語を使うことを推奨する「やさしい英語」の考え方も含めたコミュニケーションのことです。メルカリが特に重視しているのは「マインドセット」で、やさしい日本語ややさしい英語の作り方よりも、コミュニケーションの責任はいつも双方にあるという意識を持ち、お互いに歩み寄ることが大切だと考えています。学習者のみにコミュニケーションの負担を強いるのではなく、自分が話す日本語や英語が、相手にとってわかりやすいものになっているかどうか、いつも観察する必要があります

本記事では、この「やさしい日本語とやさしいコミュニケーション」を用いた研修を実施した内容について、岐阜市からの派遣によりメルカリにて研修中の今井田浩嗣(以下、今井田)が報告していきたいと思います。

 

なぜメルカリと岐阜市が「やさしい日本語とやさしいコミュニケーション」の研修を実施したのかというと、岐阜市の課題に対し、メルカリの強みを活かすことができ、包括連携協定の目的に合致する取り組みであったためです。

岐阜市では「やさしい日本語」用語集の作成や職員向けの研修を毎年行うなどやさしい日本語の普及・使用促進を図ってきました

このような中、岐阜市において本年度、外国人市民を参加者とする会議を行い、意見を聴取する事業(以下、外国人意見反映事業)が公益財団法人岐阜市国際協会と連携して実施されるに当たり、やさしい日本語の使用とやさしいコミュニケーションの実践により、よりよい意見聴取を目指して、連携する運びとなりました。

そして、10月3日に実施された第1回外国人意見反映事業をメルカリがレビューさせていただ第2回の会議に向けて以下の点で改善が必要であることを提案しました。

  • 参加した外国人市民の日本語レベルはかなり高かった今回の参加者より日本語を得意としない外国人市民の意見を吸い上げるためには、さらなる配慮・工夫が必要
  • 主催者が使っていた日本語は、謙譲語と尊敬語が多く難しい。また、センテンスが長く、終わらない。ゆっくり話しているが、語彙・文法レベルが高い。
  • 今回は参加者が意見を順番に話すいわゆるゴルフ形式で進行された。この形式は参加者全員から意見が聞ける一方、自由な意見を話すには心理的ハードルが高い形式であるため会議の目的や参加者の言語レベルに応じて他の形式を検討する等、会議ファシリテーションの部分も工夫する必要がある。

 

メルカリには約40か国から集まるメンバーが東京オフィスで働いています。特に、東京オフィスのエンジニアの約半数が海外からのメンバーですこのため、日本語の方が得意な人と英語の方が得意な人が同じチームで仕事をしていることが多いです。英語も日本語も得意な人も多いですが、全員がバイリンガルというわけではなく、両言語ともさまざまなレベルのメンバーが在籍しています。そんなメルカリには、言語教育ややさしいコミュニケーション研修を提供するLanguage Education Team (LET)、通訳や翻訳サポートをしているGlobal Operations Team (GOT)というチームがあります。これらのユニークなチームとDiversity & Inclusion (D&I) Teamが連携して、言語やコミュニケーションの壁を乗り越え、インクルーシブなコミュニケーションを実現するため、さまざまな施策に取り組んでおり、その取り組みがメルカリの強みとなっています。

そこで、メルカリのLETから講師のウィルソン雅代(@Mazを派遣しやさしい日本語とやさしいコミュニケーションの習得、さらには、会議の円滑なファシリテーションの実現を図るための研修を行うこととなりました。

スケジュールは、11月に研修1回目(やさしい日本語とやさしいコミュニケーションについて)、12月に研修2回目(会議ファシリテーションについて)、翌年2月に開催される第2回の外国人意見反映事業のファシリテーションサポートをします。

 

研修1回目は岐阜市の職員のうち各部局から1名ずつ選任されている多文化共生推進リーダーと外国人意見反映事業の実施を担う公益財団法人国際交流協会職員を対象に実施しました。

今回の研修に私自身も参加し、これまで意識をしていなかったことで気付きが多くありました。特に必要に感じたポイントは以下となります。

  • 日本語を母語としない方の全ての方が英語を話せるわけではなく、英語で話すよりもやさしい日本語を求めている方のほうが多いこと。
  • 災害の際に正しい行動を取れたのが「頭部を守ってください」より「帽子をかぶってください」という言葉。
  • 「やさしい日本語」は言い換えるだけではなく、伝えるためのものである。
  • 日本人はハイコンテクストで空気を読んで会話をしているため、文化の異なる方に伝える際には伝え方を注意しなければならない。
  • 最後にやさしい英語講師のジョン・ヴァンソムレン(@JohnV)に実践する場があり、文化が異なる相手に前提を端折ることなく伝えるための「やさしい日本語」つまり「やさしいコミュニケーション」の本質の理解を深めることができた。

 

今回の講師を務めたウィルソン雅代(@Maz 以下、ウィルソン)に研修後に政策企画チームの今井田がインタビューを行いました。

今井田 今回の研修で伝えたかったポイントはどこですか。

ウィルソン ただ単にやさしい日本語の作り方をレクチャーしたり、難しい日本語からやさしい日本語へ言い換え練習をするだけの研修にしたくないなと思っていました。今回の研修の特徴は、日本語母語の人のコミュニケーションにはどんな特徴や傾向があって、日本語を母語としない人との行き違いがどんなところで生じやすいのかといった内容も含まれていたことです。これによって日本語でのコミュニケーションをちょっと俯瞰して見る習慣と、歩み寄りのマインドセットを作ること、インクルーシブなコミュニケーションとは何か?について考えることを目標としていました。

今井田 私自身とても気付きが多かったです。受講者の岐阜市や国際交流協会の職員の皆さんにも伝わったと思います。

ウィルソン 実際「これが正しいやさしい日本語だ」という正解は一つではありません。今回参加してくださった方々は、日々市民の方からのたくさんの問い合わせに対応していると思いますが、相手に「わかった」と言ってもらえること、相手が正しい行動ができること、そして相互理解ができたと思えたら、それはやさしいコミュニケーションとして成功といえます。そのために自分なりに試行錯誤してコミュニケーションをあきらめないこと、うまくいった、という体験を増やせるといいなと思いました。事後アンケートでは、多くの方がマインドセットの部分に触れられていて、実施してよかったと思いました。

今井田 今回は岐阜市を対象に実施しましたが、今後、メルカリのLETが様々な自治体に関わって行けると良いですよね。

ウィルソン どの自治体も、やさしい日本語の取り組みは進んでいると思います。行政からの情報は、正しい情報を早く多くの人に届ける必要がありますので、自治体が発信する情報がすべてやさしい日本語であることは必須だと思います。ただし、一方通行の情報提供をやさしい日本語で実施するだけでは十分とはいえません。そこでともに暮らす人々、ともに仕事をする人々をどうインクルーシブにし、よりよいコミュニティや組織を作っていくべきか、という課題に対して、メルカリが経験していることが役に立てるのではと思っています。日本語を母語としない人が今後も増えていく日本で、自治体と企業が連携し課題を共有し、ともに課題に取り組むことでよりよい社会を作っていくことができたら良いなと思います。

 

ご興味を持っていただいた自治体様、

まずはお気軽にお問い合わせください。

※上記フォームに「やさしい日本語について」の問い合わせである旨、ご記載ください。

 

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プロフィール

ウィルソン 雅代(Masayo Wilson)

外資系国際物流会社を経て2013年より日本語トレーナーとして活動。留学生やビジネスパーソン、看護師・介護士候補者への日本語教育を担当。2018年7月よりメルカリに在籍。日本語プログラムとスピーキングテストを開発。また「やさしいコミュニケーション」の社内トレーニングを開発・主導。現在、メルカリLanguage Education Teamのマネージャーを務める。

 

今井田 浩嗣(Koji Imaida)

2009年に岐阜市役所入庁。税務や広報に従事し、その間、岐阜県庁、観光協会への出向を経験。直近の所属である広報広聴課ではシティプロモーションを担当。2021年4月よりメルカリに派遣研修中で、現在は会長室政策企画に所属し自治体連携やメルカリ寄付などの業務を担当。