前回に引き続き、2021年の振り返りと2022年の活動方針などについて、メルカリ執行役員VP of Public Policyの吉川徳明(以下、吉川)と、merpoli編集長の高橋亮平(以下、高橋)による対談記事です。
前編記事も合わせてご覧ください。
経営目線に立ち、センターピンに集中できる政策企画に
高橋> 昨年末、メルカリ政策企画チームの中長期方針を小泉さん(小泉文明 メルカリ取締役会長、鹿島アントラーズFC 代表取締役社長)も交えて議論する機会がありました。経営視点で見た政策企画チームへの期待について議論する機会になりましたが、今回はそのことから話していきたいと思います。小泉さんの話には数多くのヒントがあったように思います。
吉川> 小泉さんから政策企画への期待というのは、2つのことに集約されると思います。1つが「経営視点に立って視座を高く持つこと」、もう1つが「フォーカスすること」です。私自身も含め、政策企画チームにおいて、この2つを大事にしていきたいですね。
高橋> その2点について、メルカリのミッションとバリューをもとに説明していました。メルカリのミッションは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」という非常に高い目標になっています。昨年メルカリの利用者が月間アクティブユーザーが2,000万人を超えましたが、こうした状況でも「ミッションで目指すところには、まだ5%も達成していない」と小泉さんが話していたのが印象的でした。そもそもメルカリは設立時点から世界を狙うという明確な経営の意思がありました。政策企画の仕事も、こうした高い視点に立っていきたいですね。もう一つがメルカリの3つのバリューの1つである「All for one」についての話です。「All for one」には2つの意味があり、1つはイメージしやすい、いわゆるチームワークを指すもので、もう一つが、「1つにフォーカスする」という「一点突破」の意味だということでした。ボウリングですべてのピンを倒すために、先頭にあるセンターピンを狙うことが重要なように限られたリソースの中で、どれだけ絞り込んだ目標に集中して投下できるかが大事だという話でした。ここは私自身も物凄く考えさせられました。
吉川> 政策企画チームの仕事は多岐に渡り、どれも重要な仕事ですが、今年はこうした「経営目線で動くこと」と同時に、「フォーカスすること」について、実践していきたいです。
吉川徳明 メルカリ執行役員VP of Public Policy
経営判断に必要な正しい情報をスピーディーに届けたい
高橋> ベンチャー経営でもう一つ大事なのは、スピードとタイミングとも話していました。
吉川> メルカリでは日常の業務において、情報の透明性・オープン・シェアということが非常に重視されています。この背景には、メンバー一人ひとりの意思決定のスピードと精度を上げるために、経営陣と極力同じ情報を持つべきであるという考えがあるのだと思います。政策企画にとっても、いかに重要な経営課題にタイミングを逃さず取り組めるかが、成果の大小に直結します。この部分は2022年、チーム全体がもっと意識していきたい部分ですね。正確で最新の情報がきちんオープンに共有されていること、正しい情報に基づいて意思決定すること、その判断に対して素早い行動することを重視したいです。
高橋> 政策企画について、「攻めと守り」という言い方はあまり好きじゃないという話も出ていました。攻めと守りが表裏一体だという指摘はその通りで、政策企画チームも組織が大きくなっていくに従って、縦割りにならないようにチーム内の連動は考えていかないといけないと思ったりします。
自ら社会との対話の場に出ていく政策企画へ
吉川> 最近はスタートアップでもかなり初期の段階から、Public Policy/Public Affairsを担う人材を募集するような動きも増えてきました。インターネットの世界に閉じない領域でビジネスを展開する企業が多いということが背景にあると思います。
高橋> メルカリかなり早いフェーズで政策企画チームをつくって来ました。「よく分からない存在には人々は不安を覚えるものなので、社会に対して積極的に関わっていこう」という経営の意思のもとで政策企画の活動が始まりました。こうしたこともあり、政策企画チームは、これまでも積極的に社会の中の幅広いステークホルダーと対話ができてきたのではないかと思います。社内外限らず社会とのコミュニケーションの架け橋を担う人材が求められており、メルカリの政策企画としてもその部分で役割を果たしていきたいですね。
吉川> 将来的には、メルカリの政策企画で働いていた人たちが、また別の企業やスタートアップで政策企画チームの立ち上げを担うようになっていくといいなと思っています。メルカリは、もともと業界に還元することやフィードバックすることを率先して行う会社でもあったりします。IT業界では、「株式会社インターネット」という言葉を使ったりしますが、単にメルカリという企業に固執することなく業界自体に還元していって欲しいという思いは私も感じています。
高橋亮平 メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長
根拠を持って正しく恐れることと、インターネットの世界における自由
高橋> 話は少し変わりますが、インターネットサービスにおける「自由」の考え方についての話も印象的でした。かつても、自由を守ったサービス、一方は規制を過度に強めてしまったサービスがあり、後者のサービスは消えてしまったという話です。可視化されている批判の声だけでなく、サイレントマジョリティがどう考えているのかを捉えていくことが重要だという話で、非常に重要なヒントが有るように思いました。
吉川> インターネットは個人や中小の事業者をエンパワーする存在であるので、極力、自由であるべきだと思います。最低限守らなければいけないことは、しっかりとルール化して整備していくことも重要ですが、C2Cのマーケットプレイスにとって自由というのは極めて大事な価値だと思います。批判を受け止めることも重要ですが、大きな声の一方で、声を上げない大勢の支持者がいることがあることも忘れてはいけないというのはつくづく感じます。正しく恐れ、批判を正しく受け止め、批判以外のサイレントマジョリティの意思がどこにあるのかも根拠を持って把握していくことが重要です。
政策企画は経営者と同じ目線で、中長期を意識して仕事をすべき
高橋> 経営者は、2,3年先以降の中長期を見据えて行動しており、政策企画チームやメンバーも「2、3年後をイメージして意思決定、行動できるか」ということが重要になってくるとも話していました。2018年に政策企画チームを立ち上げた時に、政策企画のミッションや中長期計画をつくったことを思い出しました。
吉川> メルカリの中長期期計画であるロードマップとの関係も重要で、中長期を見据えたコミュニケーションを経営者と同じ目線でみて欲しいというのはいつも言われており、この視点はぜひ政策企画のメンバーにも持ってもらいたいと思っています。
高橋> 「政策企画チームをどれだけ経営者の近くに置けるかが経営者としては重要」という話や、「政策企画チームのメンバーには、短期的な成果よりも長期的な目線での取り組みを期待している」とも話されていました。政策企画にとっての2022年の方針にもなりそうですね。
吉川> 2022年も激動の一年になると思いますし、予測がつかないことも多く、気づいていない機会もあると思いますが、自分たちで目線を上げて、明るく楽しく元気に絞り込んでやっていきましょう。
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吉川 徳明 (Noriaki Yoshikawa)
メルカリ執行役員VP of Public Policy。2006年、経済産業省入省。商務情報政策局でIT政策、日本銀行(出向)で株式市場の調査・分析、内閣官房でTPP交渉などに従事。2014年からヤフー株式会社に入社、政策企画部門で、国会議員、省庁(警察庁、総務省、金融庁等)、NGO等との折衝や業界横断の自主規制の策定に従事、2018年4月、政策企画参事としてメルペイに参画、同8月にマネージャー、2020年3月にディレクター、2021年7月に現職。
高橋 亮平(Ryohei Takahashi)
メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、 神奈川県DX推進アドバイザー、国立大学法人滋賀大学講師。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか
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