IT企業による実際のデータ活用と企業の公共政策部門の役割について中央大学国際情報学部にて講義

6月17日、中央大学国際情報学部にお招きいただき、中央大学国際情報学部の授業科目「ICTビジネスと公共政策」において、『IT企業による実際のデータ活用と企業の公共政策部門の役割について』と題して、政策企画チームの中井博が講義しました。

昨年度の野々宮麻美に続き政策企画チームで2年連続での同授業での講義になりました。

本記事では、本年度の講義の内容をご紹介します。

 

「企業の」公共政策とは

企業の公共政策部門は、抽象的には「事業成長の支援会社の信頼獲得のため、社内外に向け、あらゆることをする部門」であると考えます。

これを社内外に分けてみましょう。

社外には、企業の事業目的達成のために、公共分野・非営利分野をはじめとした多くのステイクホルダー、世論・メディア・地域社会等に対し、戦略的関与活動を行います。

これに対して社外には、経営層や関係者に対して、様々な提言・アドバイスを行い、事業の安定成長のための支援を行います。

上述の通り、公共政策の仕事は「事業支援」と「信頼獲得」という大きく2つの分野から成り立っています。これらの切り口から具体的な仕事の事例を見てみましょう。

事業支援の分野では、社外に対しては、法令、ガイドライン等のルールメイキングへの提言、社内に対しては、自社ポリシー、運用体制構築支援をします。

そして信頼獲得の分野では、社外に対しては、社会や自治体、業界団体との連携構築、社内に対しては、リスクに対する提言や、個人情報の漏洩が起きた際の確認や不正対策における対応方針の運用フロー構築などへ関与しています。

これらの仕事内容から、公共政策の仕事は「攻め」と「守り」の双方へのアプローチを内容にしているといえます。

 

「攻め」と「守り」のアプローチとは

では、「攻め」と「守り」のアプローチとはどのようなことを意味するのでしょうか。

「攻め」とは、法律・ルールを変え、できることを増やすことを意味すると考えます。

例えば、新しい技術・ビジネスに見合った新規立法や法改正を通じたルールづくり、また業界横断の自主規制や官民が連携した共同規制の導入が挙げられます。

これに対して「守り」とは、事業の安定成長のためのリスク検知・回避を意味すると考えます。

例えば、法的リスクや政治的リスクの精査と社内への説明・フィードバック、法的ルールに沿った社内運用の構築支援、レピュテーションリスクの分析や対処が挙げられます。

 

メルカリの政策企画に求められていること

以前、弊社取締役会長の小泉文明は政策企画に求める役割についてこのように述べていました。

コロナがあってDXなども言われるなど物凄く変化していますが、変化に対しては、楽しめる人もいれば、不安になる人などさまざまな人がいます。
一方で、世の中の変化・進化のスピードは止まらないので、どう社会に馴染ませるのか、それをどうデザインするかが大事になってきます。

政策企画チームには、メルカリがという範囲でなく、もっと大きなソーシャルイシューの目線で、社会はどうなるのか、どういうやり方が良いのかというところから、自分たちはどうしたいのか、その先に自治体の住民がどうなればいいんだろうかというところまでも考えるなど、大きく捉えてやってもらいたいです。

また、社会は変化していきます。

社会が変わるということは、必ず軋轢も生まれます。

それをどうポジティブに解決するかが大事な課題だと思っています。

 

参照記事:

このように、「社会がどうなるのか」を考え、社会が変わる時に生まれる課題をポジティブに解決していくことが、メルカリの政策企画チームの役割だと考えます。

 

政策企画部門がやる「攻め」と「守り」とは

では、具体的に「攻め」と「守り」のアプローチとしてどのようなことをやっているのでしょうか。事業支援と信頼獲得の分野に分けて考えてみます。

まず「攻め」の事業支援では、メルペイによる少額の与信サービス「スマート払い」の提供が挙げられます。

メルペイのようなスマートフォンを通じた新たな与信サービスの登場に合わせ、割賦販売法が改正されました。この改正により、メルペイの「スマート払い」の与信審査において、AIを活用した与信の提供が可能となりました。

「守り」の事業支援では、2022年4月の改正個人情報保護法に施行に合わせ社内外への支援等が挙げられます。

具体的には、施行までの約1年の間で、改正法のガイドラインやQAの解釈を分析し、解説資料の共有や自社のサービスへの影響を社内へ周知しました。さらに、個人情報保護委員会と意見交換や、社内のステークホルダーへの注意喚起もしました。

次に「攻め」の信頼獲得では、自治体や学校との連携が挙げられます。

メルカリグループの自治体連携については、下記のサイトでも紹介しています。

自治体連携を通して、各自治体が抱える課題を共に解決する取り組みをしています。

また「守り」の信頼獲得では、コロナ禍のマスクの出品停止が挙げられます。

コロナ禍でのマスク等の品薄を受け、メルカリと品薄の関係性についてのご意見を多くいただきました。「社会の中で二次流通マーケットプレイスが果たすべき役割や機能とは何か?」を有識者会議を設けて議論し、安全であること」「信頼できること」「人道的であること」を柱とする「マーケットプレイスの基本原則」を策定しました。

 

まとめ

メルカリのようなIT企業の活動は日進月歩であり、法律が現状に追いついていない部分があります。その中で、世の中と社内とのコミュニケーションを通じて、適切なルールメイキングと様々な判断を行いながら、事業の推進と社会の醸成に携わるのが、「公共政策部門」であると考えています。

講義を通して、学生の皆様により政策企画の仕事への理解を深めていただければ幸いです。

中央大学国際情報学部の皆様、ありがとうございました。