2023年は「メルカリ」をより「社会の公器」に
新年あけましておめでとうございます。
今年もメルカリの政策企画ブログ「merpoli(メルポリ)」をよろしくお願いします。
2022年は年末の記事でも紹介したように自治体との連携の可能性が生まれた1年でもありました。
株式会社メルカリ創業者の山田 進太郎は、常々「「メルカリ」を「社会の公器」にしたい」という話をします。
2023年は、昨年取り組んできた自治体との連携による社会課題解決の取り組みをさらに深堀りし、自治体との連携をさらに深めていくことで、新たな可能性を見出していければと思っております。
こうした思いから、今年のmerpoli年始記事は、メルカリがこの間に連携してきた自治体の市長インタビューからお送りしたいと思います。
第1弾は、昨年5月30日の「ごみゼロの日」に、全国初の取り組みとして、「メルカリShops」による粗大ごみ販売と、「メルカリエコボックス」による市民のリユース推進の実証実験を行った蒲郡市(愛知県)の鈴木 寿明 市長のインタビューをmerpoli編集長の高橋 亮平が行ってきました。
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全国初となる「メルカリShops」での粗大ごみの販売
メルカリ 高橋 亮平(以下、高橋)> 2022年は、メルカリやソウゾウと蒲郡市は、5/30の「ごみゼロの日」に合わせて、「メルカリShops」での粗大ごみ等の販売と、「メルカリエコボックス」による実証実験を行いました。蒲郡市にとっては、どういった意味や機会になりましたでしょうか。
鈴木 寿明 蒲郡市長(以下、鈴木市長)> メルカリさんとの出会いは、昨年1月の万博首長連合でした。講演会でメルカリさんの考えている取り組みを聞いた時に、蒲郡市が進めている「サーキュラーシティ」をよりスピーディに進めていくために必要なのは「これだ!」と感じました。「メルカリShops」での粗大ごみの販売もそうですが、「メルカリエコボックス」での実証実験は、実施したことで本当に市民の皆さんの行動変容を促すものになりました。蒲郡市が進める「サーキュラーシティ」や「サーキュラーエコノミー」を企業や市民に浸透させていくにあたって、メルカリさんのような著名な企業との連携ができたことで、注目を集めることもでき、メディアにも取り上げられたことで、今まで伝えることが難しかった層にまで、伝わってきているように思います。 高橋> 今、市長が仰ったように、蒲郡市はメルカリとの連携以前から「サーキュラーシティ」と題して、循環型社会の推進に向けて、自治体としての方針を示して活動をされてきたと聞いています。蒲郡市の掲げる「サーキュラーシティ」とはどういうものなのか、また、蒲郡市では、これまでにどういうことを行ってきたのかお教えください。
蒲郡市がめざす「サーキュラーシティ」と「メルカリ」との連携
鈴木市長> 蒲郡市では、2021年3月に2050年「ゼロカーボンシティ」宣言を行いました。これをきっかけに、11月にはサーキュラーシティをめざしていくことを表明。2022年3月にはサーキュラーエコノミーシンポジウムを開催し、4月にビジョンと7つの重点分野を発表しました。この枠組の延長として実施したのが、先程ご紹介したメルカリさん、ソウゾウさんとの包括連携協定の締結であり、「メルカリShops」での粗大ごみ販売、「メルカリエコボックス」での実証実験ということになります。
「サーキュラーシティ」のビジョンでは、蒲郡市のもつ自然などの地域特性を活かし、サーキュラーエコノミーによって、人と人、街や企業とがつながり、人々のウェルビーイングを叶え、誇れる街にしたいとしており、同時に教育、消費、健康、食、観光、交通、ものづくりという7つの重点分野を掲げました。「サーキュラーシティ」とは、こうした「サーキュラーエコノミー」の考え方に基づいてこの街は進んでいくんだという決意でもありました。
高橋> 蒲郡市の「サーキュラーシティ」の取り組みで具体的に出てきた活動などもあるのでしょうか。
鈴木市長> まさにそれを意識し、シンポジウムを行った際に、全国からサーキュラーエコノミーに関心があり、実際に活躍する事業者や研究者に集まってもらい、そこに市内事業者や多くの市民も参加してもらうことで、「サーキュラーシティ」やサーキュラーエコノミーの考え方を共有しました。実際にアイデアを共有することで、新たなマッチングも生まれてきました。この年末にも、人に優しい持続可能なモビリティの試乗体験という交通分野での実証実験も行ったところです。市内の高校での授業では、市内の繊維の企業と連携して役目を終えたシャツを糸に戻し、違う商品にするといった取り組みも行われています。市内のホテル内にあるレストランでの食品残渣を堆肥化したものを使い、作物を育て、福祉法人が運営する子ども食堂でそこで育てた野菜を食べるという取り組みも行われています。こうしたサーキュラーエコノミーの考え方が、ありとあらゆる産業でアイデアを生むようになり始めています。
4ヶ月で全国初の取り組みを実現したスピード感を持った行政運営
高橋> 蒲郡市が「サーキュラーシティ」に向けて、着実に積み重ねられてきていることが分かりますね。今回、蒲郡市と「メルカリShops」での粗大ごみ等の販売と、「メルカリエコボックス」での実証実験でご一緒させていただきましたが、市の職員も非常に積極的な方が多い印象を受けています。
先程、市長からも紹介いただきましたが、メルカリと蒲郡市との取り組みのきっかけは、昨年1月の万博首長連盟で、メルカリが行った講演でした。そこからわずか4ヶ月で全国初となる「メルカリShops」での粗大ごみの販売や「メルカリエコボックス」の実証実験を実現したわけですが、蒲郡市は、その後も新たな商品の出品や、中にはマンホールの蓋の販売など、次々に新たな取り組みも行っていただきました。他の自治体と比較しても、スピード感を持って実行されていく自治体だという印象がありますが、その秘訣やポイントなどがあれば教えてください。
鈴木市長> 「サーキュラーシティ」や「サーキュラーエコノミー」というのもそうですが、多くの行政サービスや日々の行政の仕事も、市役所だけでは完結しないものだと思っています。多くの市民はもちろん、民間企業の皆さんとも連携しなければ実現できないことがほとんどですし、そのためには、民間のスピードを意識する必要があります。もちろん行政には行政のプロセスやルールがあります。例えば、議会を通じて市民の皆さんの想いを反映するなどがありますが、一方でこうした決まったルール以外の場面においては、市民や企業との対話、会話などスピード感持ってやっていくことができます。職員には、こうしたことを意識してもらっていることが、スピードにつながっているのではないかと思います。蒲郡市役所の中では、報告も早いですし、当然、決定も早くなっています。
対話による市民や企業とボーダレスな市役所にしていきたい
鈴木市長> 繰り返しになりますが、自治体の課題は、全てが市役所の中で解決する問題でなく、民間企業や市民が主役なので、そのためにも民間のスピードと合わせることが重要だと思っています。例えば、「サーキュラーシティ」の話にしても、今は行政がリードして進めていますが、ある段階まできたら、むしろ市民や企業の方々が引っ張っていただく社会にできればと思っています。
私自身、市民の声が市政になかなか届かないという思いがあり、まちづくりに距離を感じていました。こうした市民と行政との距離を縮めたいという思いが市長になったきっかけでもあります。本来の行政は、市民のために仕事をするべきです。市民も「市役所がやってくれる」ではなく、市民が主役となってまちづくりをするべきだと思っています。
高橋> ケネディ大統領が「あなたの国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。 あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい。」と演説したことが思い出されますね。民主主義の根幹のようにも思います。
鈴木市長> 市役所は市民のことを考えている場所であるはずなのに、なぜか、相手が目の前のパソコンになってしまうことがあります。市民の生の声、行動によりそうことが重要であり、市の職員には現場にいくことの重要性を伝えています。そのことで必ず優先順位が変わってくるはずです。3年前に市長に就任してはじめて市役所に来た時に、職員の見る目に物凄くアウェー感を感じました(笑)。仲間づくりは対話や会話で始まると思っており、対話をすれば市長の考えも伝わるし、チームとして市民の皆さんとも一体になれます。「役所が」や「市民が」でなく、ボーダレスな関係になるべきだと思いますし、市民の方から提案をもらえば、それをテーブルにあげるようにしています。また、職員には「失敗もあってもいいんだ」「俺が責任を取るから行って来い」と伝えています。最後に市長が責任を取ればいい。そのことがスピード感を持った行政運営につながっているのかもしれません。
社会をより良くするために必要な「ファーストペンギン自治体」
高橋> いい話ですね。私自身も30代の頃、自治体で部長職を務めていました。今も神奈川県のDX推進アドバイザーなども務めるなど、様々な自治体とお仕事をしていますが、こうしたスピード感は自治体によって本当に変わってきます。今回、蒲郡市は全国で初めての取り組みにある意味飛び込んで実践していただいたわけですが、こうした「ファーストペンギン自治体」とも言える存在が社会を大きく変えていくんだと思っています。現在、「メルカリShops」による粗大ごみ販売は、多くのメディアで取り上げられ、全国の自治体からも問い合わせをいただくようになりました。ただ、これも最初に実施してくれた自治体がなければ生まれなかったことだと思っています。その意味でも蒲郡市には感謝しています。
鈴木市長> 「ファーストペンギン自治体」と言ってもらえるのは嬉しいですね。
高橋> 今回、メルカリと実施した取り組みもそうですが、これからの自治体にとって、こうした官民が連携して行う取り組みは、社会課題解決にとって大きな可能性があると思っているのですが、市長はこの点についてはどうお考えでしょうか。
鈴木市長> 官民連携について言えば、サーキュラーエコノミーもそうですし、防災もそう、ハードもソフトも含めて、まちづくりの全てにおいて官民連携が必要だと思っています。蒲郡市にとっては、とりわけサーキュラーシティの取り組みで、今まさに市民の皆さんに行動変容を呼びかけていますが、市民レベル、企業レベルで、どんどん提案をしてもらいたいと期待しています。官民連携をボーダレスで実施していきたいです。
2023年は実装の年。さらに様々なアクションにつなげたい
高橋> 最後に、2022年は、蒲郡市とメルカリ、ソウゾウとで実施した取り組みは、とくに循環型社会の推進やリユースの推進にとって、自治体にとって新たな一石を投じられたのではないかと思っています。「サーキュラーシティ」を名乗る蒲郡市として、2023年は、さらにどういうことに取り組んでいこうとされているのでしょうか。
鈴木市長> 「サーキュラーシティ」を表明して1年が経ちました。2023年は、実装段階の年です。さらに色々なものを試していかなければならないと思っています。いろいろな提案を受けた中で、実装に結びつけていこうと思いますし、カンファレンスなども実行しながら、さらに様々なアクションに移していきたいと思います。
高橋> メルカリやソウゾウとの連携についてもさらに進化させて実施していきたいことなどもあればお教えください。
鈴木市長> 昨年、「メルカリShops」に粗大ごみ出品することをはじめましたが、今後はさらに、役目を終えた行政の備品も積極的に販売していこうと思っています。「メルカリエコボックス」も市民の皆さんに広く周知して、リユースという選択肢が自然と家庭にあるようになるよう実践できる年にしていきたいですね。メルカリとも連携をさらに強化していきたいです。
(高橋 亮平)
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プロフィール
鈴木 寿明(Hisakaki Suzuki)
愛知県蒲郡市長(1期)。1962年9月14日生まれ。愛知県蒲郡市出身。蒲郡市立蒲郡中学校、愛知県立蒲郡東高等学校、金沢大学教育学部卒業。家業の新聞販売店を長兄と継承するため、1986年4月、株式会社鈴木新聞舗に入社。2008年4月、株式会社新鈴木新聞舗の代表取締役に就任。2009年4月、蒲郡商工会議所青年部会長に就任。2014年から3年連続で蒲郡市を会場に開かれた「全国ご当地うどんサミット」で、実行委員長を務める。2019年10月、任期満了に伴う蒲郡市長選挙に立候補し初当選。同年11月市長就任。
インタビュワー
高橋 亮平(Ryohei Takahashi)
メルカリ経営戦略室政策企画参事 兼 merpoli編集長。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、 神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員、国立大学法人滋賀大学講師。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか。