体験した高校生100%が「難しかった」としながら「良かった」と評価した地域の事業者をEC化する授業の結果と可能性

全国3校で、高校生が地域の商店をEC化してネット販売する授業を実施

メルカリ政策企画では、2022年度、「メルカリShops」を用いて高校生たちが実際にECで販売する教育プログラムを全国で実施してきました。

2021年10月に「メルカリShops」を本格提供開始したことを受け、スマホ1つで誰でも簡単にネットショップを開設できるEコマース(以下、EC)プラットフォームという特徴を最大限に活かし、より多くの方々が、全国の隅々までECを活用する象徴として、高校生たちがECを活用して地域を活性化させていくモデルを創ること、また、学校を始めとした教育機関にとっても、ECを活用して実際に全国に販売するという新たな教育モデルを構築できるのではないかと思い取り組みました。

今回は、このうち、船橋市立船橋高等学校(以下、市立船橋高校)、熊本市立千原台高等学校(以下、千原台高校)、徳島県立つるぎ高等学校(以下、つるぎ高校)で実施した「メルカリShops PBLプログラム」の実践について振り返るとともに、生徒に行ったアンケート結果などを元に、こうした一連のプログラムの効果について紹介していきます。

「メルカリShops」で高校生たちが販売する授業は、2022年5月に市立船橋高校でスタート。2回のクールに分け、地域の呉服屋のEC出店から支援し、11月まで、5店舗のEC出店と販売の支援を行いました。

2校目の千原台高校の授業は9月からスタート。地域の市場で卸を行う漬物店をEC出店し、販売支援しました。

3校目のつるぎ高校は9月末からスタート。近くにある道の駅をEC化し、地域の特産品の販売を行いました。

3校の取組がすべてNHKはじめ各地域のキー局で取り上げられるなど注目していただきました。

プログラムの内容については以下の記事も合わせてご覧ください。 

また、市立船橋高校の取り組みについて、担当した商業科の先生へのインタビュー記事もありますので、ご関心のある方は、合わせてお読みください。

 

授業プログラムのアンケート結果

今回の授業プログラムの終了時に、参加した全ての高校生たちにアンケートに協力してもらいました。

対象とした3校でプログラムに参加したのは、市立船橋校の2年生19名、千原台高校の3年生9名、つるぎ高校の1年生18名の46名です。

授業前の「メルカリ」に対する認知は100%でありながら、購入経験ありは23.9%、出品経験ありは13.0%しかおらず、「メルカリShops」の認知度は47.8%でした。

授業を実施したことにより、「メルカリ」で購入をはじめた人は15.2%、出品を開始した人は26.1%となったほか、「メルカリ」を親や友人に紹介した人は32.6%、「メルカリShops」を紹介した人は45.7%いました。

 

実施した高校生100%が「難しかった」としながら「良かった」と評価した授業

プログラムへの評価や各分野の理解度などについて5段階で聞いたところ、今回授業で行った「メルカリShops PBLプログラム」の評価は、「とても良かった」と「良かった」を合わせて93.5%、フリマやECへの理解が深まったかとの問には「とても深まった」と「深まった」を合わせて97.8%、学びはあったかについては「とてもあった」と「あった」を合わせて100.0%と高い評価をいただきました。

難易度についての問には「とても難しかった」と「難しかった」を合わせて100.0%だった点で、生徒たちは主体的に学ばなければならないPBLのプログラムで、しかもECの専門家や、実際に商品を販売する「プロ」としてのレベルが求められる中で、これまでに経験したことのないプログラムに難しさを感じたようです。

特徴的なのは、プログラムで目指した、こうした難しいプログラムに挑んだことが、同時に彼ら自身が学びや成長も感じてくれたようで、ほとんどの学生がプログラムの目指す目的を共有し、その効果を体感してくれたようです。

また、今回のプログラムでは、道の駅や地域の商店などのEC化に挑むことで、地域への理解も深まったようで、地域の産業や名産品などへの理解についても「とても深まった」と「深まった」を合わせて97.8%、地域でのビジネスを身近に感じることはできたかとの問にも「とても感じた」と「感じた」を合わせて93.5%となりました。

一方で、こうしたプログラムが、今後の進路に影響を与えたかとの質問については、「とても与えた」と「与えた」を合わせて52.2%と一定の効果はあったようですが、「まだわからない」と答えた人が47.8%もいました。

また、今回実施したプログラムについて、後輩にお勧めしたいかと聞いたところ、「とてもお勧めしたい」と「お勧めした」を合わせて91.3%がお勧めしてくれるなど、自分たちが体験した成長の経験を後輩たちにも体験してもらいたいと思ったようです。

どの学年で実施した方がいいかとの質問では、2年次が56.5%、1年次が41.3%と2つに別れました。ただ、実施した学年が学校ごとに異なる影響もあり、2,3年生は、78.6%が2年生、17.9%が1年生だったのに対して、1年生は、77.8%が1年生、22.2%が2年生と、自分の学年かそれより若い年齢で体験するべきだと思われていることが分かりました。

高校生たちが書いてくれた感想についても一部紹介しておきます。

  • めっちゃ大変でした。でも、みんなで協力してプレゼンしたり写真撮ったりして仲良くなれたり、協力することと一人ですることの違いとか、良さとかがわかってよかったです。
  • とても大変でしたが、とても学びのある体験でした。新しく知った地域の特産物もたくさんあったので、地域のことやEC販売について知れてよかったです。
  • 最初は、どんなことをしたらいいかわからないことも多くあったけれど、今回のPBLプログラムを体験して、たくさんのことを知り、とても成長できたと思います。班員と一緒に協力して物事を考えたり、プレゼンを作ったりなど、今までにない経験ができ、とても良い体験だったと思います。
  • 今回のメルカリショップスでのEC化で、自分の意見や相手の意見を共有したりたくさんの事業所のみなさんとショップについて意見を交わしたりすることができ、商品を販売することの大変さや、社会に出たときに責任は自分にあることを実感することができた。
  • 高校生の立場で大人の人と購入のやり取りをしたり、実際に事業者に行って販売戦略をねったり、普通の高校生ではできない体験ができてとても勉強になりました。
  • 授業を行う前と比べて、しっかりと自分の意見を持てるようになって、今後に活かせるプログラムだったなと思いました。とても頭を使い難しい授業でしたが、やりがいをとても感じました。

 

2023年度は、より学校や先生方と連携した形での実施へ

昨年はモデルケースということで、3校に対してメルカリ・ソウゾウメンバーも積極的に現地にも行き、「高校生たちが地域の事業者をEC化することで、地域経済を活性化させる」という新たなモデルを創りました。

取り組んできた新たな教育モデルをmerpoliに掲載することで、教育現場で日々実践している先生方や、教育関係者の皆さんに関心を持ってもらい、こうしたプログラムも自ら実践してみようという取り組みにつながればと思っています。

実施イメージ

  • 第1回:マインドセット(全体説明)、メルカリとは
  • 第2回:「メルカリ」での出品体験と、ワークショップ
  • 第3回:「メルカリShops」セミナー EC市場の現状と課題とメルカリShops概要、出店手続き、出品、配送について
  • 第4回:店舗見学
  • 第5回:グループワーク(出品計画)
  • 第6回:発表(出品計画)
  • 第7回:出品計画まとめ(実際の出品の写真・文章の作成)
  • 第8回:出品開始
  • 第9回:梱包発送作業、出品見直し 
  • <梱包発送作業>
  • 第10回:まとめ

高橋 亮平