【寄稿】岐阜市からのメルカリ派遣研修経験職員による対談 〜メルカリで得られるもの〜(前編)

左から今井田さん、柳原さん、横山さん

メルカリでは、包括連携協定に基づき、2019年4月から自治体職員の派遣研修の受け入れを行っています。

今回、岐阜市からの派遣研修経験者である、横山 竜一さん(2020年度)、今井田 浩嗣さん(2021年度)、柳原 浩亮さん(2022年度)の3人で、自治体職員がメルカリへの派遣研修で得られたもの、自治体に戻って役に立っている経験、派遣者が考える自治体が職員を派遣する意義などについて語ってもらいました。

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研修で感じた市役所とメルカリのギャップ

柳原 浩亮(以下、柳原)> お二人は既に研修から帰任されて岐阜市で活躍されているわけですが、メルカリでの研修中、岐阜市との違いを感じた部分があるかと思います。

僕自身、メルカリで働いていて課題解決や目標達成までのスピードの速さが岐阜市と比べてすごく早いなと感じることが多かったです。市役所では一年単位で目標を設定して業務を進めていくことが多いですよね。課題が出てきても今年度は予算が無いから来年度以降ですね、となることもよくあると思います。

メルカリでは、基本的に3ヶ月単位で新しいOKRを設定して進捗を確認しながら業務を進めていきます。市役所の1年間がこの3ヶ月で進んでいる感覚です。もちろんミッション、ロードマップのような中長期的な目標もありますが、その中長期的な目標達成に向けて、短期の目標を設定して、定期的に進捗を確認しながら進めていくというところがこのスピード感を生み出しているのかなと思います。こうすることで、業務を後回しにできないということもありますし、今その目標に向けて何をしないといけないのかということもはっきりします。

岐阜市役所でも「一年勝負」という基本方針がありますし、もっと短期的な目標設定と進捗管理をして、スピード感を持って業務を進めていけるといいなと思っています。 もちろん民間企業と行政という大きな違いはありますが、お二人が派遣研修期間中に感じた岐阜市とメルカリとのギャップを教えてください。 

今井田 浩嗣(以下、今井田)> そうですね、まず働き方が180度違うというのがあるのかなと思います。メルカリでは多くの社員がフルリモートで働いていますよね。だからみんなが職場に出勤して仕事する環境と比較するとスピード感もあると思いますし、必然的に情報共有されているなという事をすごく感じます。それはもちろん今までに色々と試行錯誤してきたうえでそういう仕組みが出来上がっているんだと思います。

あとはSlack、チャットツールの使い方ですね。岐阜市もTeamsが導入されていますけど、メルカリは情報共有という部分でもっと広い使い方をしていて、みんなが全部情報を開示しているようなイメージです。もちろんオープンにできない情報は出ていないですけど、情報を一人で抱え込まないという意識は強いですね。例えば、この情報を他の部署が活用してくれたら、これはもっと発展するだろうという情報があった場合にも誰でもその情報を取りに行けるような環境です。 一部の人だけ知っていればいいというような意識がなく、 岐阜市もそうあるべきなのではないかなと思います。みんなが平等に情報を持ってる方が議論も活性化すると思います。

柳原> メルカリでは社内会議などでも、経営レベルの情報まで共有されていたりとか、Slack上で経営陣の方も議論に参加していたりしますよね。そうやって様々な情報を共有する意識がやっぱり違うなっていうのは確かにあるかと思います。 

横山 竜一(以下、横山)> そこは根本的なカルチャーの違いというのが大きいと思います。閉鎖的なカルチャーである行政からメルカリに研修に行って、横の繋がりが簡単にできるっていうのは衝撃的でした。行政には縦社会というのが相変わらずあって、あまり外向きに興味がないというか、自分の仕事が果たして市役所全体の中でどういうところにあって、どうしたらもっと市政に貢献できるかっていうような考えを持った職員が少ないように思います。

岐阜市でも全職員が持ち運んで利用できるノートパソコンが配布され、今年度からはTeamsが導入されました。メルカリと全く同じ環境とまではいかないですが、ある程度情報が開示されているという中でも、その情報を積極的に取りに行く、情報の取捨選択をする、というところまではまだまだ意識できていないですね。

岐阜市も徐々に変わりつつありますが、根本のカルチャーを変える必要があるかと思います。 そういったカルチャーの大きな違いを今後の課題として、職員の意識改革をして行く必要があると思っています。

柳原> カルチャーを変えていくということは一朝一夕にはできないですけど、情報を共有するという考え方は、これから行政職員もみんなで効率的に業務を行っていくためには必要ですね。 

横山> 先日メルカリの社員の方にDX研修に来ていただいた時に、岐阜市は環境が先進的だということを言ってもらえましたが、それを活かすソフトの部分がまだまだ追いついていないですね。

ただこれから入庁してくる若い方は、ITツールの使いかたや、そういうものに対する感覚、自分たちが経験してきたメルカリの働き方にフィットするような考えを持ったいわゆるデジタルネイティブと言われる世代なので、そういう職員達から働き方を変えていけば、徐々にカルチャーは変わっていくんじゃないかと思います。

また、今までは経営層が発信する機会というのが少なくて、年間でこの時だけと決まっていますよね。ほとんどの職員が経営層と直接コミュニケーションをとれる機会が無い中で、遠い存在になってしまっているということがあって、その時に聞いた話を自分ごととして捉えられていないのかなと思います。メルカリでは、All Hands(定例の全社会議)などで直接経営層がパッと話をして、社員の皆さんが気軽に聞いているところがさすがだなと思いました。

あとは、社員の皆さんが常にミッションや、バリューを意識していて、最終的に目指すべき姿をイメージしながら仕事をしてるってこともメルカリの強みだと思います。

これは、事あるごとにミッション、バリューっていうことを言い続けてるから意識せざるを得ない状況になっているんだと思います。

例えば、岐阜市の予算編成においては、進むべき5つのベクトルという話が良く出てきますが、詳しく知らない職員も多いのではないかと思います。定例会見や予算の話はテキストでは共有されていますが、もっと経営層の考えなどが直接聞ける機会があれば、岐阜市全体の事も理解できて、何を岐阜市が目指しているか、岐阜市のミッション達成に向けて自分たちが何をやるべきかといったことを考えやすくなると思います。 

左:横山さんと、右:柳原さん

柳原> 岐阜市の職員間でも例えば、議会のサイクルに合わせて3ヶ月に1回とか、定期的に市の最近の動向などをシェアできるような機会があると良いですね。オンライン会議も活用して録画すれば他の業務で出られなかった人も後から見返すことできますよね。

今井田> 岐阜市でも毎月、行政経営会議で市長から訓話がありますが、参加しているのは部局長なので全職員に直接届くわけではないですね。

横山> そういった経営層からの話は何か問題が起こると発信することはありますけど、当然市民に発信している「岐阜市をこうして行きたいよね」というような話を常日頃から職員向けにも発信してもらえると、そこで情報に触れることができて良いと思います。 

民間企業がどこもそうなのかはわからないですけど、メルカリのそういうところを見習うべきですね。

柳原> 情報共有の話だと、現状、関係者以外、他部署の職員は知らないという事も多いと思います。職員でも報道や新聞で初めて知ることもありますよね。

メルカリはSlack上にいろんな部署や担当者のやりとりが共有されているので、社内で今どういう動きがあるのかということや、過去の経緯なども探せば確認できます。岐阜市でもTeamsが導入されてそういった事ができる環境になったので、これからTeamsを使う時にはDMだけではなく、基本的に出せる情報はどんどんオープンにして行くような使い方が出来ると良いと思っています。

ただ、それも職員全体の考え方を変えていかないといけないわけなんですが、数人が言ってるだけでは恐らく変わっていかないと思うので、メルカリでの研修を経験して、その良さを分かっている僕たちが使いながら周りの人にも「こういう使い方をすると便利だよ」って広めて行けたらいいなって思ってます。 

横山> 既にそういう働き方を広めやすい土壌はできているので、戻ってきたらぜひやってもらいたいと思います。

ただ、行政の中には多様な部署がある中で、いわゆる政策部署などはやりやすいと思いますけど、窓口部署にとっては難しい部分があるのかもしれないですね。 

今井田> 市の事業は各部や課ごとで進められていることが多いので、そこまで横のつながりを求めないというか、縦割りだからそういう情報共有とかをしようとすら思わないんじゃないしょうか。だからもっと、事業自体も横連携を作るとそういう文化ができてくるのかなと思います。 

柳原> メルカリでは部署横断のPJ(プロジェクト)がたくさんありますよね。でも行政の仕事もいろんな部署が横断的に進めていった方が効率的、効果的にできる業務っていっぱいあると思います。岐阜市でも若手のプロジェクトチームもありますが、他の業務でも関係部署横断で連携してやっていった方がスピーディーにできるのかなと思うんですけどね。 

横山> 例えば、1つの案件についてまず会計課に聞いて、その後、契約課に聞いて、最後に行政課に聞いてというように、いちいち段階を経て行かないといけないってのは当然スピードとかもやっぱり落ちるので、最初からそういった人たちをアサインした状態でPJを作って始めて、そこで進めていけるとと早いですよね。 

柳原> そうですよね。 ミーティングでみんな一同に会したり、チャット上でも1つのスレッド内で議論できれば早く進められますね。 

横山> 全員が会議室に集まってということになると、おおごとになってしまうということもありますけど、Teamsがあるのでweb会議で確認を短時間でやるっていうのも一つありかなと思います。今はまだそういうことができてないから、スピード感も含めてどうしても遅くなってしまっているんだと思います。 

 

合わせて後編もご覧ください。

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プロフィール

横山 竜一 (Ryuichi Yokoyama)

岐阜市行政部デジタル戦略課デジタル技術活用推進室長。岐阜市役所には1999年4月に入庁し、主に福祉部局にて管理部門を担当。派遣直前は秘書課にて秘書業務を担当。2020年4月から1年間、岐阜市からの派遣研修でメルカリ政策企画に加わり、自治体経験を活かして主に自治体連携の取り組みやメルカリ寄付を担当。

今井田 浩嗣(Koji Imaida)

岐阜市企画部政策調整課。2009年に岐阜市役所入庁。税務や広報に従事し、その間、岐阜県庁、観光協会への出向を経験。直近の所属である広報広聴課ではシティプロモーションを担当。2021年4月から1年間、岐阜市からの派遣研修でメルカリ政策企画に加わり、自治体連携や「メルカリShops」、「メルカリ寄付」、「やさしい日本語」支援などの業務を担当。

柳原 浩亮(Kosuke Yanagihara)

岐阜市行政部デジタル戦略課デジタル技術活用推進室。2009年岐阜市役所入庁。資産税課で固定資産税賦課業務、農林園芸課、農林政策課では農林業振興業務に従事。直近の市民スポーツ課においては、スポーツイベントの開催など市民スポーツ振興業務を担当。2022年4月から1年間、岐阜市からの派遣研修でメルカリ政策企画に加わり、自治体連携や「メルカリ教室」「メルカリ寄付」「メルカリShops」のほか、不正対策など安心安全に関わる業務を担当。