環境省の実証事業を通じて「メルカリ」でのリユースによって見込まれる環境削減貢献量を公開しました

5月21日、株式会社メルカリ(以下、メルカリ)は環境省「デジタル技術を活用した脱炭素型2Rビジネスの効果実証事業」(以下、本実証事業)においてフリマアプリ「メルカリ」を通じてスマートフォン、タブレット、PC等の情報通信機器をリユースすることにより見込まれる環境削減貢献量(ポジティブインパクト)を算出し公開しました。

本実証事業の目的や見込まれる効果について、担当したメルカリ経営戦略室の石川 真弓(以下、石川)に話を聞きました。

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メルカリのサステナビリティの取り組みとポジティブインパクト

Q まず、メルカリのサステナビリティへの取り組みと、その中で示している環境削減貢献量(ポジティブインパクト)について教えてください。

石川 メルカリは、事業を通じて環境や社会に貢献する「プラネット・ポジティブ」な企業を追求することで、限りある資源が大切に使われる循環型社会の実現を目指しています。

2022年度版のサステナビリティレポートでは、初めてメルカリの事業を通じて生まれた環境に対する削減貢献量​​(ポジティブインパクト)の算出・開示を行いました。「メルカリ」の中で最も取引量が多い衣類カテゴリーを対象に算出した結果、日米のお客さまが「メルカリ」で衣類を取引したことによって、2021年は推計約48万トンのCO2の排出を回避できたことがわかりました。

このように、メルカリの事業が社会にもたらすポジティブインパクトは定量的にも示すことができています。つまり、メルカリが事業成長することがそのまま、循環型社会の体現であるともいえます。

もちろん、サステナブルな事業成長のためには、メルカリが排出するGHG量(温室効果ガス量、ネガティブインパクト)も削減していかなくてはなりません。メルカリは、SBT認定取得をコミットしていて、削減目標は「2030年までにScope1+2を100%削減目標、Scope3を付加価値あたり51.6%削減する」と、SBTの基準をベースに掲げています。

Q 今回の実証事業には、どのような経緯や狙いで応募したのでしょうか。

石川 昨年初めて開示した「メルカリの事業を通じて生まれた環境に対する削減貢献量」の算出においては、mercari R4Dと、東京大学価値交換工学社会連携研究部門の先生と一緒に、さまざまな論文や企業のレポートを参考に、算出ロジックを独自につくりながら取り組んでいきました。開示の第一弾ということで、メルカリにおいて取引量が最も多く、算出データも揃っていることから「衣類」カテゴリーを対象に算出を実施しました。

LCA手法※というものに基づいて算出しているのですが、衣類以外のカテゴリーはLCAデータがそもそもなかったり、算出ロジックも商品カテゴリーに異なるロジックがあっても良いのではと考えていました。

そこに今回の実証事業の公募について事業の委託先であるみずほリサーチ&テクノロジーズからご案内いただき、これは「渡りに船」だと思いました。この実証事業に採択されることができたら、さまざまな議論を行いながら環境省のロジックで削減貢献量を算出いただくわけですが、それがメルカリにとっても知見になります。

また、今回の実証事業を通じて、メルカリの「事業を通じて環境に対する削減貢献」が、環境省等の政府にも伝わり、そして発信されることを期待できたのも大きかったです。

※LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)とは、製品の資源採取から原材料の調達、製造、 加工、組立、流通、製品使用、さらに廃棄にいたるまでの全過程(ライフサイクル)における環境負荷を総合して、 科学的、定量的、客観的に評価する手法です。

 

実証事業でわかった情報機器等のリユースによるポジティブインパクト

Q 実際にどのような調査を行い、環境削減貢献量を算出したのでしょうか。

石川> まず算出対象カテゴリーを「スマートフォン、タブレット、PC等」に定めました。これは、「メルカリ」でもそれなりのボリュームの取引があること、LCAデータ上も算出が可能そうなこと、そして電子機器の廃棄物(E-waste)問題にアプローチできると考えたからです。

「スマートフォン、タブレット、PC」の取引データを取得し、さらにそれらの商品がどのような配送手段でどこからどこへ配送されているかのデータも合わせて取得し、輸送から発生してしまったCO2も鑑みて算出を行いました。

また、プライバシーチームとも相談しましたが、データプライバシー観点で渡せるデータの中身と、算出に必要なデータの精度のバランスをとるのは難しさもありました。

さらに、「メルカリ」で取引されリユースされることによって、その商品の使用年数がどれだけ伸ばすことができたかということを知るために、該当商品を取引した「メルカリ」のお客さま向けに、独自アンケートを実施しました。アンケートは、それぞれ出品者16,174人、購入者10,699人から回答をいただくことができました。

このように必要な各種データを議論しながら取り揃えて、環境省からこの実証事業を委託されているみずほリサーチ&テクノロジーズに受け渡し、算出が行われました。

みずほリサーチ&テクノロジーズとは、何度も議論を重ねて細かい部分まで算出ロジックを詰めていただき、かなり精度の高い結果を出していただいたのではないかと思います。

Q 算出の結果、どのような効果がわかったのでしょうか。

石川> 「メルカリ」の取引によって、スマートフォン、タブレット、PC等の情報通信機器をリユースすることにより見込まれる環境削減貢献量(ポジティブインパクト)は、年間で約1.6万トンのCO2、25%のCO2排出量を削減できると算出されました。

アンケート結果から、それぞれの製品カテゴリーごとに、リユースした場合の平均使用年数は、スマートフォンは4.5年、タブレットは5.3年、PCは6.6年という結果になりました。これは、新品から使用し続けてそのまま廃棄する場合と比較して、スマートフォンは平均3.1年、タブレットは3.4年、PCは3.8年伸びたことになります。

今回、実証事業の対象としている、スマートフォン、タブレット、PC等の電気製品や電子機器の廃棄物(E-waste)に関する日本の排出量は世界4位となっており、年間約257万トンを排出し、1人当たり約20kgもの電気電子機器廃棄物を捨てている状況です。こういった廃棄物を減らすためにも、「メルカリ」等でのリユースを通じて長く使うことの大切さを定量的に示せたと思っています。

 

メルカリでリユースすることが循環型型社会の推進につながる

Q 今回の実証事業を実施するにあたって、どんなことが大変でしたか。

石川> ロジックを精緻にすればするほど、不足するデータがあったりします。その不足分は推計していくのですが、そのバランスを決めるのが複雑で、みずほリサーチ&テクノロジーと何度も議論しました。

個人的にはこういったアカデミックで理系の素養がなかったので、会話するだけでも精一杯でした。

Q 最後に、今後、こんなことに活かしたい、こんなことをしていきたいという事があれば教えてください。 

石川> 実証事業の背景や内容、算出ロジックは確かに難しいのですが、結果としては「メルカリ」でリユースをすることは環境によい、サステナブルな行為である」ということに対して、ある意味で「お墨付き」をいただきながら定量的に示すことができたと思っています。

「メルカリ」が事業成長することがそのまま、循環型社会の体現である」ともいえるということを、もっと多くの方々に認識してもらえるよう、メッセージの発信についても積極的にしていきたいと思います。

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プロフィール

石川 真弓(Mayumi Ishikawa)

株式会社メルカリ 経営戦略室 ESG Specialist。2018年メルカリに入社。現在は、ESG委員会の運営、サステナビリティレポートの作成、ESG評価機関対応、TCFD提言に基づく情報開示、メルカリエコボックスの開発、自治体連携、教育プログラムの開発、メルカリの事業を通じて生まれた環境貢献量​​の算出・開示等を担当。