日本市場のエシカル消費の規模は約8兆円
一般社団法人 日本エシカル推進協議会および一般社団法人 日本フェアトレードフォーラムの後援を受けて組織されたエシカル市場規模調査実行委員会により、日本初となるエシカル市場規模調査(2022年)を実施され、その結果が発表されました。本調査は日本国内でのエシカル消費の実態を明らかにするものであり、多くの注目を集めています。
調査実行委員会ではイギリスで過去25年にわたって行われてきたエシカル消費の市場規模調査に携わってきた「エシカル消費リサーチ協会」から調査手法を学び、それを準用して日本のエシカル市場規模を推計したとのことです。
特筆すべきは、2022年の日本のエシカル消費が約8兆円となったことです。この規模は、エシカル消費が経済の重要な一部であることを示しています。イギリスと日本では調査対象に違いがあるため単純な比較はできませんが、日本のエシカル消費市場全体の規模は、イギリスの約23兆円に対して約3分の1とされています。
調査では、イギリスの基準を参考にしつつ、日本の実情に合った8つの分野と29のエシカル消費行動が調査されました。この中で、特に「連帯消費」※1が市場規模で2兆3030億円と最大の割合を占め、全エシカル消費の1/4以上を示しました。次いで「エシカルなエネルギー」※2や「エシカルな家庭/個人用品」※3、さらに「エシカルな移動/旅行」※4にかかるエシカル消費が続きました。また、個別の行動では「地産地消」が最も高額で、1兆1250億円となりました。(詳細は、報告書 もご確認ください)
エシカル市場規模調査の数値をもとにメルカリ作成
※1 「フェアトレード」「応援消費」「地元商店での買い物」「地産地消 (農産物直売所販売)」「寄付つき商品」が対象。
※2 「高エネルギー効率の家電製品 (冷蔵庫、エアコン、液晶TV 、照明器具)」「グリーン電気料金」「小規模発電 (太陽光発電)」「家庭用蓄電池」「ヒートポンプ設備 (エコキュート、エコジョーズ)」が対象。
※3 「持続可能な木工/紙製品」「リユース家庭用品 (家電・家具、日用品・生活雑貨、ベビー・子供用品)」「リユース衣料・服飾品」「エシカルファッション/ジュエリー」「エシカルな化粧品 」が対象。
※4 「クリーンエネルギー車 (PHV、電気自動車、燃料電池車)」「エコツーリズム」が対象
リユース衣料・服飾品、リユース家庭用品の合計は9,000億円
「エシカルな家庭/個人用品」については、全体の約1.2兆円に対して、リユース市場に関連する「リユース衣料・服飾品」「リユース家庭用品(家電・家具、日用品・生活雑貨、ベビー・子供用品)」が9,000億円にのぼり、私たちの生活においてリユース品がいかに重要視されているかが分かります。
ボイコット行動やプラスチック購入控えの影響も1,660億円の経済影響
一方で、ボイコット行動による消費の減少も見逃せません。調査によると「社会/環境への配慮に欠けた製品/サービス」のボイコットをした人は回答者全体の15.7%にのぼり、総額920億円※5 の経済影響があったと推計されています。
また、環境負荷を軽減するためにプラスチック製品の購入を控えた消費者も30.3%、総額740億円※5とかなりの割合を占めており、これらのボイコット行動が日本の市場に与える影響は決して小さくありません。
年代別に分析すると下表のように、10代(15~19歳)のボイコット率が28.2%と最も高く、続いて20代が17.3%と高くなっています。エシカルでない企業への忌避感が強いこれら若い世代が育っていくにつれてボイコットの動きは日本社会でも静かに広がって行き、企業に対してエシカルなビジネス活動への変革を迫ることにつながります。
年代別のボイコット率(%)※6
10代 |
20代 |
30代 |
40代 |
50代 |
60代 |
70代 |
28.2% |
17.3% |
15.2% |
15.5% |
12.6% |
12.4% |
16.6% |
※5 データは2023年
※6 引用元:国民生活センター 月刊「国民生活」2024年12月号 消費者問題アラカルト「日本初のエシカル市場規模調査:2022年のエシカル消費は約8兆円」 https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202412_03.pdf
今後の展望と可能性
今後の調査の課題としては、調査方法の改善が挙げられています。特に、消費データの収集時期や範囲が明確でなかったこと、専門家との意見交換を通じてエシカル消費の定義を確立することが求められています。
エシカルな消費行動が広がる中で、リユースやボイコットの動きは日本の市場に新しい風を吹き込んでいるといえます。日本のエシカル市場は約8兆円となり、市場規模をさらに拡大させる可能性を秘めています。この動向に伴い、企業も消費者とともに責任を果たすとともに、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた具体的なアクションを推進していくことが求められています。
これからもエシカル消費の重要性が広く認識されることを期待し、持続可能な未来に向けて、一人一人のエシカル消費を広げるために何ができるか、考えていきたいと思います。
最後に、調査実行委員会代表の東京経済大学・渡辺 龍也 名誉教授に、メルカリのリユース推進の取り組みに対しコメントをいただいたので、ご紹介させていただきます。
不要になったものを捨てずにそれを必要とする人に譲るリユースは、廃棄物の削減や処理に伴う温室効果ガスの発生の抑制につながる重要なエシカル行動です。 メルカリさんは消費者の間を取り持つだけではなく、企業や自治体と連携してリユースを推進する仕組みを作ったり、リユース教育にも取り組んだりと、幅広く「サーキュラーエコノミー」の構築・拡大にも力を入れていることに敬意を表したいと思います。ともに「エシカル」の輪を広げていきましょう。
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メルカリは引き続き、「捨てる」をへらすことで、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。
(布施 健太郎・今枝 由梨英)