今回は、昨年も何度か記事でご紹介したメルカリで取り組んでいる「リコマース総合研究所(以下、リコマース総研)」の記事をmerpoliでも掲載させていただくことにしました。
「リコマース総研」については、以下の記事も合わせてご覧ください。
リコマース総合研究所
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リコマース総研研究員の藤井彩香です。
今回は、「CEコマースカオスマップ」を作成したので、公開します!2023年6月に作成した「国内リコマース業界のカオスマップ」をさらに範囲を拡大し、リニューアルしました。
昨今の持続可能な形で資源を利用する「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行が世界的に進む中、資源循環だけでなく、物品の効率的な利用を促進するビジネスとしてCE(サーキュラーエコノミー)コマースの重要度が高まっています。
そこで、メルカリのリコマース総合研究所とリユース経済新聞は共同で、該当企業の抽出と選定※を行い、「CEコマースカオスマップ」としてまとめました。
※掲載企業及びサービスの選定は、各カテゴリにおける実績面だけでなく、企業の知名度も加味し、メルカリ総合研究所とリユース経済新聞が協議を行い決めました。尚、自動車や生産財を扱う企業及び物流や古物市場などのtoB向けにサービスを提供し市場を支える企業は対象外としました。
※本カオスマップは、サービスの網羅性や正確性を完全に担保するものではありません。 また、商標およびロゴマークに関する権利は、個々の権利の所有者に帰属します。
目次
・CEコマースとは?
・なぜCEコマースカオスマップを作成したのか
- カテゴリー分類の説明
- 1.物品の稼働率を高める
- 2. 物品の利用期間を延ばす
- 3.物品の寿命を延ばす
・CEコマース×デジタル製品パスポート(DPP)
・今後も拡大が予想されるCEコマース市場
・おわりに
「CEコマース」とは?
CEコマース(Circular Economy Commerce)とは、物品の効率的な利用を促進し、企業の事業活動がサーキュラーエコノミーへの貢献につながるビジネスモデルを指します。そもそも、サーキュラーエコノミーとは、従来の「作る・使う・捨てる」という直線的な経済活動から、「作る・使う・再び使う」という循環型の経済活動へと転換し、資源の有効活用と環境負荷の低減を目指す考え方です。
この中でCEコマースは、中古品の売買や流通を指すリユースの枠を超えています。たとえば、サブスクリプションやシェアリング、レンタル、リペア、リファービッシュ、リメイクといった多様な形態が含まれ、さらに自社製品の再利用を実践する一次流通のブランドやメーカーも含まれる、幅広い概念です。
なぜCEコマースカオスマップを作成したのか
CEコマースは新しい市場であり、その範囲やリユースとの違いなど、まだ明確でない点が多く存在します。
そこで、視覚的に業界のプレイヤーを表現することで、CEコマースビジネスへの参入を検討している事業者や、サーキュラーエコノミーへの理解を深めたい事業者、さらには既に取り組んでいる事業者など、幅広い層に市場の全体像を把握してもらい、CEコマースの普及及び推進に寄与することを目的として、カオスマップを制作しました。このカオスマップは、CEコマース市場にどのような業界が含まれるかを主に示しており、各業界の詳細は概略的なものとなっています。
カテゴリー分類の説明
CEコマースビジネスにおけるサーキュラーエコノミーへの貢献方法として、以下の3つのカテゴリーに分類できます。今回はこの3つの軸で、カオスマップを制作しています。
1. 物品の稼働率を高める
サブスクリプション・シェアリング、レンタルなど、事業者や利用者が所有する物品を他の利用者が必要な時に一定期間提供することで、物品の稼働率を高めることができるサービスが中心となります。従来の「モノの所有」から「サービスの利用」へとシフトすることで、物品の購入が不要となり、廃棄物の削減につながります。
2. 物品の利用期間を延ばす
「二次流通仲介」や「リユース」など、中古品を価値を見出す先に供給するサービスが中心となります。具体的には、物品の提供者と利用者を効率的につなぐフリマアプリ等のような「二次流通仲介」や、物品の回収や買取りを行い、メンテナンスやリメイクを施し、リユース品として販売する事業を行う「リユース」などが該当します。
リユースのトレンドとして、海外で広まりつつある「自社メーカーリユース」も注目されています。
メルカリでは、事業者と連携して出品商品を買い取る「買取リクエスト」を開始し、商品売買の経験豊富な買取事業者の査定金額による買取を提供することで、ユーザーにとってより売れやすい体験を実現しています。
3. 物品の寿命を延ばす
リペア・メンテナンス、リファービッシュ、リメイク、クリーニングなど、物品の寿命を延ばすサービスが中心となります。顧客が所有する物品の修理やメンテナンス等のサービスを提供、また使用済み物品に新たな付加価値を追加したり、一部の部品等を交換した上で新品と同程度の品質に高めることでこれまでは廃棄されていたような物でも、手を加えることで再び必要とする人の手に渡るようになります。2024年7月、EUは「修理する権利」を導入する指令を発効しており、この概念は日本にも普及していくと考えられます。
CEコマース×デジタル製品パスポート(DPP)
デジタル製品パスポート(DPP)は、製品のライフサイクルに関する情報を電子的に記録したものです。製品の情報を読むことで、「どこで作られたのか」「何からできているのか」「どのように修理できるのか」といったことが分かります。そのため、DPPは「モノのパスポート」とも呼ばれています。
DPPがあると、消費者は製品の環境への影響や修理のしやすさなどを簡単に確認でき、よりエシカルな選択がしやすくなります。また、リユースやリペア、リメイクの履歴を記録できるようになると、メーカーはその情報を活用してより環境に配慮した製品づくりができ、消費者も信頼できる情報を基に、自分にとって価値ある商品を選ぶことが可能になるでしょう。
2024年7月には、EUで「持続可能な製品のためのエコデザイン規則」が施行され、バッテリーや衣類、家電などあらゆる製品にDPPの導入が求められます。これにより、EUで製品を販売する日本企業もDPPへの対応をする必要があります。
日本でも、衣服に洗えるタグを付けて製品の取引情報、修理履歴や鑑定情報を記録する取り組みを始める企業が出てきています。
このように、DPPの導入は、サーキュラーエコノミーの実現に向けた重要な鍵といえるでしょう。
今後も拡大が予想されるCEコマース市場
メルカリとニッセイ基礎研究所の調査によれば
、家庭で保管しているモノを金額換算した「日本の“持ちモノ資産”」の総額は推計約216兆3,925億円に上り、国民一人あたりの平均“持ちモノ資産”は約182.4万円です。
このデータは、家庭内に多くの蓄積された持ちモノ(ストック)が存在していることを示し、CEコマース市場が持つ大きな可能性を象徴しています。
CEコマースがより身近になり、ストックが循環の輪に取り込まれることで、CEコマース品を買いたい人や、CEコマースの「流れ」にモノに出したい人を増やし、市場をさらに活性化させることが重要だと考えられます。
また、CEコマースの浸透と事業者の増加とともに、新たなテクノロジーやサービスが生まれることで、市場は一層拡大していくと考えられます。
おわりに
今後、CEコマース市場の普及が進むことで、蓄積されるデータが増え、例えばメーカーや生産者がそのデータを活用することで、需要に合わせた適切な生産が可能になります。これにより、過剰生産や在庫の無駄が減り、環境負荷の軽減や資源の効率的な活用が期待されます。
この流れは、企業が大量生産・大量消費型のビジネスモデルから脱却し、サーキュラーエコノミーを意識した持続可能な取り組みへとシフトする後押しになると考えられます。
また、政府は2030年までに、サーキュラーエコノミー関連ビジネスの市場規模を現在の約50兆円から80兆円以上に拡大する目標を掲げています。その中で、CEコマースビジネスは、サーキュラーエコノミーの実現に向けてますます重要な役割を担うでしょう。