廃棄物資源循環学会に登壇して発表。エシカル消費の今:CEコマースが促す循環型ファッション

2024年11月、一般社団法人 廃棄物資源循環学会が実施した「ファッションと循環経済~持続可能な未来をデザインする~」セミナーに政策企画マネージャーの今枝 由梨英が登壇し、「エシカル消費の今:CEコマースが促す循環型ファッション」と題した発表を行いました。

※一般社団法人廃棄物資源循環学会は、物質循環と廃棄物管理に関する学の体系化を進め、学術的立場から社会の先導的役割を担い、循環型社会の形成と廃棄物問題の解決に貢献することを使命としています。

※「ファッションと循環経済~持続可能な未来をデザインする~」セミナーの詳細はこちら。

https://jsmcwm.or.jp/?page_id=34015

サステナブルファッションの最前線に立つ専門家をお招きし、循環型経済を中心に据えたファッションの現状と今後の展望について、深く掘り下げて議論します。

 

世界と日本のサーキュラーエコノミー事情

世界的に、資源の大量消費による環境問題が深刻化しています。そこで注目されているのが、資源を循環させてムダをなくす「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という考え方です。

  • EUでは、製品の耐久性やリサイクル性を高めるための規制(EUの改正エコデザイン規則<ESPR>)や、製品情報をデジタルで管理する「デジタル製品パスポート(DPP)」の導入、売れ残り消費財の廃棄規制が進んでいます。
  • 日本でも、政府の成長戦略において循環型ビジネスの拡大が国家戦略と位置付けられました。特にファッション分野では、「家庭から廃棄される衣類の量を25%削減」という目標が設定されています。

資源を捨てずに、循環の輪をできるだけ大きく回す「サーキュラーエコノミー(循環経済、CE)」をどのように実現するか、グローバルでの大きな問いになっています。

 

かくれファッション資産×CEコマースの可能性

CEコマース:CE(サーキュラーエコノミー)に資する製品の長期的・効果的利用を促進するビジネスを、様々な主体が取り組んでいます。

(1)利用=リユース、リース、レンタル、サブスクリプション、シェアリング等

(2)修理・整備・再生=リペア・メンテナンス、リマニュファクチャリング、リファービッシュ等

(3)二次流通=中古販売、二次流通仲介等

リユースのようなCE(サーキュラーエコノミー)コマースは、不要なものを必要な人に届けることで、循環型社会の実現に貢献しています。

  • 「メルカリ」での取引によって、年間5.2万トンもの衣類の廃棄が回避されています。これは、日本で1年間に捨てられる衣類の約10%に相当します。
  • さらに、取引された商品が新品の代わりに利用されることで、1着あたりの平均使用年数は3.2年増加しています。
  • 温室効果ガス排出量の削減にも貢献!例えば衣類を「メルカリ」で取引することで、1着あたり約9.4kgのGHG排出が回避されています。

※(公財)地球環境戦略研究機関の1.5°Cロードマップの事例にも紹介されました。

一方で、日本全国の家庭に眠るファッションアイテム不要品の数量を調査したところ、国民1人あたりの平均“かくれファッション資産”は約21.3万円と、約3割のファッションアイテムはタンスで眠っています

また、約4割の人は「売りたい、手放したい」アパレル品を所有しています。

家庭にあるたくさんの不要なもの(ストック)について、

  • CEコマースの仕組みがより身近になり、循環の輪が大きくなること、
  • CEコマース品を買いたい人、CEコマースの「流れ」にモノを出したい人を増やしていくこと

が重要です。

 

メルカリの「捨てるをへらす」取り組み

CEコマースの現状には課題もあります。

  • 処分したいけど面倒…という人が多い。
  • リユース品の購入経験がない人がまだまだ多い。

メルカリでは、様々な取り組みを通じて、これらの課題解決に取り組んでいます。

  • 自治体との連携によるリユース販売: 粗大ごみや不要備品を「メルカリ」で販売することで、自治体の処分費用削減や市民へのリユース啓発につながっています。蒲郡市では、出品・発送をシルバー人材センターの高齢者が担当するなど、地域活性化にも貢献しています。
  • 「メルカリエコボックス」の配布: 捨てられないものを保管するための箱を配布することで、「捨てる」ではなく「リユース」を当たり前の選択肢にしていくことを目指しています。
  • サステナブル・ファッションショーの開催: 新作ゼロのファッションショーを通して、リユースファッションの魅力を発信しています。新作ゼロの「サステナブルファッションショー」
  • リユース教育: 教育ポータルサイト「mercari education」の無償公開や、高校での実践的な教育プログラムを通して、若い世代にリユースの大切さを伝えています。mercari education

 

未来に向けて

メルカリは、今後も様々な企業や団体と連携しながら、より多くの人がCEコマースを活用できる社会を目指していきます。

  • デジタル製品パスポート(DPP)の導入を視野に入れ、リユースやリペアの実績も捕捉し、消費者やメーカーに情報還元する仕組みづくり。
  • 一次流通・二次流通データの連携による新たなビジネスチャンスの創出。

 

パネルディスカッションで交わされた熱い議論

東京都市大学環境学部環境経営システム学科准教授の森准教授のコーディネーションのもと、登壇者の皆様(環境省環境再生・資源循環局総務課循環型社会推進室兼リサイクル推進室室⾧の近藤様、イオン(株)サーキュラーエコノミープロジェクトリーダーの鈴木様、京都大学環境安全保健機構環境管理部門准教授の矢野様、大正大学地域創生学部地域創生学科教授の岡山様)と共に、活発な意見交換が行われました。

議論のポイントをご紹介します。

  • 中古品の海外流出と適切なリサイクル: 中古衣料の海外流出とリサイクルの実態把握の必要性、人権問題への配慮など、今後の課題が浮き彫りになりました。デジタル技術を活用した追跡可能性の向上が期待されます。
  • 「メルカリ」のお客様の意識と啓発: 環境貢献への意識向上、エシカル消費の促進のために、「メルカリ」を通じた啓発活動の重要性が指摘されました。「「メルカリ」を使う=環境に良い」という認識を広げ、楽しく続けられる仕組みづくりが重要です。
  • サステナブル素材の現状と課題: プライベートブランドにおけるサステナブル素材への切り替え、専用の回収コーナー設置など、企業の取り組みが紹介されました。経済合理性と環境配慮の両立、回収システムの効率化、データ活用によるエビデンス構築などが今後の課題です。
  • 着物のような高価な衣類のリユース: 思い入れの強い衣類、高価な衣類に適した回収・リユース方法の必要性が議論されました。
  • CEコマース促進のためのインセンティブ設計: 配送距離に応じたインセンティブ付与など、CEコマース促進のための具体的な施策が検討されました。EUのようなトップダウン型の規制だけでなく、日本の状況に合わせた、消費者が継続的に参加できる仕組みづくりが重要です。
  • 企業の環境配慮への取り組み: 企業はイメージアップだけでなく、製品価値向上のための環境配慮に取り組むべきとの意見が出されました。循環計画におけるコスト問題、業界間の連携、海外需要への対応など、多角的な視点が重要です。

今回の一般社団法人廃棄物資源循環学会での登壇で得られた貴重な知見を胸に、今後も様々な企業や団体と連携しながら、より多くの人がCEコマースを活用できる社会を目指していきたいと思います。

(今枝 由梨英)