【自治体職員派遣研修報告(後編)】AI・DX・スピード・情報共有からワクワクや挑戦マインドまで持ち帰り新しい自治体へ

岐阜市、愛知県、石川県からも参加いただいての最終報告会

2024年4月から2025年3月まで、岐阜市と愛知県と石川県からメルカリに職員派遣研修に参加した、藤井 彩香、小塚 星一郎、山口 由夏の3人が、メルカリへの派遣で何を感じ、何を学んだのか、派遣元に戻り、どう生かしていこうとしているのかを語ってくれた対談の後編です。

合わせて前編もご覧ください。

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自ら挑戦するメンバーのパフォーマンスを最大化するメルカリの働き方

藤井 彩香(岐阜市からの派遣研修 以下、藤井)> 私は岐阜市役所に入って5年目になるのですが、自治体では、組織の役割や手続きが明確に定められているため、若手のうちは特に与えられた業務をしっかり遂行することが求められる環境でした。一方で、メルカリでは自分で仕事を見つけ、何ができるのかを考え、「これをやりたい」と提案すると、「Go Boldにやってみよう!」と背中を押してもらえる文化があります。

この違いに最初は戸惑いましたが、徐々に「自ら動き、挑戦する」ことの面白さを実感するようになり、働き方や仕事に対する考え方の幅が広がったと感じています。

小塚 星一郎(愛知県からの派遣研修 以下、小塚)> 私も同じことを感じています。自治体だと、部署にもよりますが「与えられた仕事やタスクをどう効率よく、どう正しくやるか」が能力の発揮のしどころだと思っていたのですが、メルカリだと「何がやりたい?」とよく聞かれるんですよね。自分でやりたいことがあって、それを推進する能力が求められる組織だと感じました。

藤井> 私もメンバーから「何をやりたい?」とよく声をかけられました。この問いかけが日常的に交わされることで、組織のカルチャーが自然とメンバー全体に浸透していると感じます。また、「What(何をやるか)」だけでなく、「How(どのように実現するか)」についても裁量が大きく、自分で考え、最適な手法を選びながら進められる環境があることが印象的でした。

山口 由夏(石川県からの派遣研修 以下、山口)> PRチームでは、社内の「Workstyle Sync」シートを用いて、メンバー各々が自分の力を発揮しやすい仕事環境がどういうものかを共有する機会がありました。「この時間は自分の生産性があがる」とか、「この時間は家族のために使いたい」といった働く時間に関するものだけでなく、他にも「嬉しい褒め言葉」とか、「フィードバックの方法は(指摘の辛さ)」などコミュニケーションに関する部分なども共有するんです。そうやって、一緒に働くメンバーの理解を深めながら働こう、という点は自治体との違いを感じました。PRチームは子育て世代の方が多く時間の調整が必要な場面もあったりするので、みんながどんな働き方ができれば一番チームとしてワークするのか、というのを共有したのはとてもよかったと思います。

 

AI活用やDX化、ワクワクや挑戦するマインドも持ち帰りたい

最終報告会でプレゼンする山口 由夏

山口> 自治体に戻って持ち帰りたいものというと、まず小さいもので言えば「とりあえず紙の印刷をしない」ということですかね(笑)。石川県でも共同編集の可能なTeamsが導入されたので、資料を確認しあう際も、データを共有し、「何かあればここにコメントを入れてください」という運用にしたいですね。

藤井> 私自身もメルカリでのほとんどの業務にChatGPTなどのAIツールを活用しながら業務を進めており、作業の効率化を実感しています。こうした工夫を取り入れながら、より働きやすい環境をつくっていけたらと思います。

小塚> メルカリにいたこの一年間だけでもメルカリ社内での働き方が変わった部分がたくさんありました。勤務体制のこともそうですし、生成AIの活用の仕方もそうです。

経営陣の会議の議事録を生成AIで要約しやすい形に変えるという話の共有があった際に「やり方を変えることで一時的に不便になっても、そこを乗り越えてやり方を変える必要があるんだ」という話が執行役員からありました。

メルカリは先進的なツールを使った働き方をしているというのはもちろんですが、それ以上に組織として「変化を嫌がらない、変化を楽しむ」という姿勢があることを感じました。

山口> 自治体のDXも部署によって進捗状況が異なると思うのですが、メルカリに来て「とりあえずやってみよう」マインドが染み付いたので、まずは自分の所属するグループなど小さな単位で、小さいことからでも、変えていきたいですね。

自分の持っている情報は他の人にも役に立つんじゃないかというマインドも持って帰りたいですね。

 

スピード感やオープンな情報共有、自由に発言できる環境も

最終報告会でプレゼンする小塚 星一郎

小塚> 有識者の会議の活用も印象に残っています。「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」という「メルカリ」の出品物のルールをどういう考え方で決めるべきかを議論する会議で、メルカリ内部での意思決定のプロセスについて、多数決の研究をしている経済学者の方から、「原理原則で決めきれないことは、議論と多数決により決めることを制度的に導入してもよいのではないか」と助言をもらったのですが、メルカリの執行役員の方が会議後すぐにその仕組みを形にするよう指示を出して意思決定のフローがすぐにできたんです。こうしたスピード感は自治体でも活かしていきたいです。また、オープンに情報を共有する環境も本当に大事だと思います。情報を誰でも見れるようにしておくだけじゃなく、Open Doorみたいな任意参加で情報発信する場があるといいと思っています。関心のある職員に向けて情報発信する仕組みを自治体の中でやるならどういう形がいいんだろうか、ということは宿題として持ち帰りたいです。

藤井> メルカリでは、自由に意見を言える環境があり、新たなアイデアが生まれるプロセスを実感しました。自由に意見を交わし、新しい発想を形にできる環境があることで、働くことがよりワクワクするものになるのではないでしょうか。

 

まずは、次の3ヶ月から早速、経験を還元していきたい

最終報告会でプレゼンする藤井 彩香

小塚> メルカリでは、今ちょうど次の四半期のOKRを考えています。私たちも研修の成果を自分だけでなく、自治体の中で広めていくために、自治体に戻って2025年6月末までの3ヶ月で達成したい目標を具体的なKey Resultという形にしてみましょうか。

藤井> メルカリでの経験を活かし、岐阜市に戻っても新しいことを企画し、仲間を巻き込みながら取り組むことを続けていきたいと思っています。

例えば、岐阜市には、若手職員の政策立案能力等の向上とともに、若手職員が活躍する組織風土を醸成・定着させていくことを目的とした「岐阜市の未来を共に考えるワーキンググループ(若手職員プロジェクトチーム)」があります。そこに参加することで、他の職員とも意見を交わしながら、新しいアイデアを形にしていく機会をつくるのも一つの方法だと考えています。

小塚> 私は「メルカリで得た学びを何らかの形で県庁全体に発信する」ということをやりたいです。

具体的な案の1つとしては、「愛知県庁版業務で使えるプロンプト集」を作って共有するということを考えています。メルカリでは便利なプロンプトが「prompt library」という形でまとまっているので、同じようなものが自治体の業務に即した形であると便利なのではと思っています。

仕事のやり方を変えていこうよということと、情報はオープンにしようよということを愛知県庁に広げる第一歩にしたいです。

山口> 石川県が派遣に送り出した目的の一つに、庁内のDXを推進するために民間企業の先進的な働き方を持ち帰ることがありました。行政と民間との業務の性質、求められるアウトプットの違いはありつつも、メルカリで経験した働き方を参考に、県の多くの部署で活用できる取り組みを見つけていきたいです。まずは、Teamsでのチャットコミュニケーションにおいて、積極的にオープンチャンネルを活用するなどして、業務効率化に繋がる事例を生み出したいです。

私は、研修を開始した頃の対談で、メルカリでいきいきと働くメンバーの姿を見て「県政にわくわくできる人を増やしたい!」という話をしたのですが、それは今も同じ気持ちでいます。組織としてアップデートをし続ける姿が内外からの会社への期待の高まり、そして良いパフォーマンスに繋がっていると感じたので、成長し続ける県組織づくりに少しずつでも貢献していきたいです。

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プロフィール

小塚 星一郎(Seiichiro Kozuka)

愛知県総務局総務部情報政策課DX推進室。2014年愛知県庁入庁。名古屋西部県税事務所、子育て支援課、国際課で勤務。直近の国際課においては愛知県の国際関係分野の戦略・施策を示す「あいち国際戦略プラン2027」の策定に関する業務などに従事。2024年4月から2025年3月までメルカリにて派遣研修。経営戦略室政策企画に所属し外部とも連携した「メルカリ」の安心・安全に関わる業務を担当。

藤井 彩香(Sayaka Fujii)

岐阜市岐阜市市民協働推進部。2020年岐阜市役所入庁。上下水道事業部、市長公室で勤務。直近の市長公室秘書課においては、岐阜市長の出張手配、交際事務及び市政功労表彰をはじめとする各種表彰の事務に関する業務等に従事。2024年4月から2025年3月までメルカリにて派遣研修。経営戦略室政策企画に所属し、、サーキュラーエコノミーへの移行におけるリユース・CEコマース推進とトレンド作りに関わる業務を担当。

山口 由夏(Yuka Yamaguchi)

石川県知事室戦略広報課。2021年石川県庁入庁。健康推進課にて、指定難病や小児慢性特定疾病に罹患している方への医療費助成をはじめとする難病対策に従事。2024年4月から2025年3月までメルカリにて派遣研修。Corporate PRチームにて、ESG施策やI&Dに関するプロジェクトに携わる。