左から高橋亮平、上村一斗、宮本祐一
高橋 亮平 サーキュラーエコノミー総研 by mercari 主席研究員(以下、高橋)> 本日、「サーキュラーエコノミー総研 by mercari」がリリースされました。まずは、どのような総研なのか、そしてどのような想いで設立されたのかについてお話いただけますか。
宮本 祐一 メルカリグループ全体の広報責任者(以下、宮本)> まず、設立のきっかけからですが、サービスがフリマアプリ「メルカリ」のみだった時代に、大学の先生方にご協力いただき「メルカリ総研」を設立しました。「メルカリ総研」は、「二次流通は一次流通市場の競合となるのではないか」といった懸念に対し、調査によって客観的なデータを提供することで、二次流通が一次流通市場にもたらす貢献を示すなどの役割を果たしてきました。
その後、当時メルカリの新たな事業として検討が進んでいたC2B(Consumer to Business)コマース事業の推進に向け、リコマース市場の認知度を高め、市場を活性化させることを目的とした「リコマース総研」を立ち上げました。時を同じくして、「メルペイ」、「メルカリ ハロ」など、メルカリがサーキュラーエコノミーを推進する上で重要なサービスや要素が増えてきたため、マーケットプレイス事業のみを展開していた時代に設立された総研についても、「メルカリ」という枠組みを超え、より広い範囲を扱えるようにアップデートし、より幅広いステークホルダーに向けた情報発信をしていきたいと考えるようになりました。
こうした考えから、今回「サーキュラーエコノミー総研」を設立することにいたしました。
今後は、事業者、行政、研究者といったステークホルダーの皆様とともに、捨てるを減らし、持続可能な社会を実現するための知見を発信してまいります。
上村 一斗 サーキュラーエコノミー総研 by mercari 編集長兼主席研究員(以下、上村)> 今年1月に育休から戻ってきて、最初に関わることが決まったプロジェクトでした。私への期待としては、単なるメディアに留まらず、ステークホルダーとの共感を作ってもらいたいということでした。そこから、コンセプトやネーミングを含む要件の検討を始めました。
メルカリグループが10周年のタイミングで新たに掲げた「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションの実現には、研究者、ブランド、メディア、行政の方々など、多くのステークホルダーの知見を集めていくことが重要となります。
同様にサーキュラーエコノミーの推進をリードするためには、啓発活動で終わらず、サーキュラーエコノミーへの移行を本気で目指しているという具体的な取り組みが重要であると考えました。
上村 一斗
宮本> 今回の「サーキュラーエコノミー総研」の検討は、これまでの焼き直しや既存のものの組み合わせではなく、「0→1」で、必要なものを必要な目的のために創造しようと検討してきました。
これまで、メルカリでは様々なステークホルダーと協業を検討してきましたが、当然ながら実現に至らないプロジェクトもあります。一方で、検討していた取り組みは非常に意義深いものばかりで、廃棄物を減らし、持続可能な社会を実現するためには、こうした取り組みも含めて、時間をかけて世の中に知見を蓄積していく必要があると感じました。そのためには、PRチームで取り組んでいるメディアの皆様を通じた情報発信だけでは不十分であると考えました。
メルカリでは様々なPR活動を行っていますが、記事にはなりにくいものの、情報発信はしたいという場合があります。mercanやmerpoliだけでは扱いきれない、こうした外部のステークホルダーとの発信なども行っていけると良いと考えています。
上村> 昨年、ヤクルト山陽と広島県の自治体とリユースの実証実験を行う責任者を担当しました。2024年のグリーンフライデープロジェクトでは、業界の垣根を超えたパートナーシップ構築も担当しました。こうした経験から、捨てるを減らす取り組みを進めていく上で、ステークホルダーの皆様とコラボレーションしやすい「器」のようなものが作れないだろうかというイメージがありました。
高橋> 単にメディア媒体を創ろうというよりは、今、上村さんは「器のような受け皿」という表現をされていましたし、宮本さんは関係性を創る武器やツールという表現をされていましたが、そこにこだわりがあったのでしょうか。
上村> 高橋さんとランチした時に二人で話したのですが、総研のようなものを設立するのであれば、今のメルカリの事業推進を妨げる障壁や、ミッション実現のためにとシンプルに考えた時に、プロダクトやマーケティングだけではできない、グリーンフライデーのような取り組みを、年間を通じてどのように重ねていくかということが大切だと考えました。
サーキュラーエコノミーに関わる様々なプレイヤー同士が垣根を超えてコラボレーションしやすい基盤があれば、取り組みの延長線上で、事業連携などより踏み込んだ取り組みに発展させられる可能性もあるのではないかと考えました。これはメルカリだけでなく、関わっていただくステークホルダー同士の連携も有機的に発生していくのではないかという期待も抱いています。
この「サーキュラーエコノミー総研」は、研究や調査機能を持ったメディアという側面と、パートナーと連携する結節点となります。それが武器にもなると考えています。
宮本> 方向性は元々意図した目的が叶えられるものになったとも思いますし、それ以上に良いものになったのではないでしょうか。今回「サーキュラーエコノミー総研」を担当したチームもPRチームに所属しているので、つい発信の手段やメディアという役割を考えがちでしたが、初期の段階から「PV数等のKPIを追うのが良いのかどうか」という議論をし、そうではなく、むしろ「関係性を創る」のが重要だと話していました。
例えば、慶應義塾大学商学部教授の山本先生にお話いただいた記事もそうですが、既に形になってコンテンツとしてできあがったものを発信するのではなく、「どう捉えるべきか、考えるべきか」という議論の段階から、今後アクションするための考え方を発信できることに価値があると感じています。これは大きな役割を担えるのではないかと考えています。
宮本 祐一
高橋 > 先程、上村さんが話してくれたランチで、今のメルカリは企業として成長してきたと感じる一方で、かつてのメルカリにあった「メルカリらしさ」というものは失ってはいけないという話をしました。当時のメルカリは、マーケットプレイスとしての質だけでなく、働き方の新しい仕組みや、情報発信の仕組みについてもこれまでにない仕組みであり、働いているメンバーがどの部署も「新しい価値」を生み出していました。企業である以上ビジネスは行うのですが、単に収益を上げるだけのビジネスを行うのではなく、そこに新しい価値や新しい視点をメルカリ自身が創り出していくことも同時にできることが大事ではないかと話しました。
「総研」というとシンクタンクを連想しますが、アカデミックな研究というわけでもなく、かといってビジネスのためだけに行うのでもない、「価値を生む」ということがまさに「メルカリらしい」のではないかと思いますし、その手段としてこうした仕組みを作り出すこともまたメルカリならではなのではないでしょうか。
宮本> 先程、この装置を「器」という表現をしていましたが、「サーキュラーエコノミー総研」を通じて、メルカリの取り組みやサーキュラーエコノミー推進の取り組みにおける関係人口を増やせるということが大きいように思います。サーキュラーエコノミーという日本ではまだ浸透していないものについて、関係する人を可視化するという意味合いもあるのではないでしょうか。
こうした直接的に自分たちのビジネスに関わることではなくても、より良い社会にしていくための取り組みは、メルカリが立ち上げ以来ずっと行ってきたことでもあります。サーキュラーエコノミー全体に貢献することが、いつかは私たちにも還元されるはずという考え方です。それこそが「メルカリらしさ」と言えるのではないでしょうか。
上村> サーキュラーエコノミー総研の取り組みを始める時に、扱いたいテーマについて高橋さんに話した際、「絶対にやった方がいいよ」と背中を押してもらいました。主業務でなくても「面白い」、「やるべきだ」というプロジェクトについては、メンバーが自身のチームの業務範囲を超えてサポートしてくれるという働き方もまたメルカリらしく、心強いと改めて感じる瞬間でした。
高橋> そのようなことは「The メルカリ」的であり、「そういう働き方や、そういうビジネスの仕方、そういう世の中の動かし方や創り方があったのか」ということまでもを対外的に可視化していくということでもあり、シンクタンクと言いながら研究者が研究しながらアカデミックな論文を出すというものでもなく、ビジネスに携わる人たちが自分たちに都合のいいマーケティングのために行うのでもなく、そのような付加価値も創造し、世の中を良くしよう、業界を良くしよう、ということを、サービスも巻き込みながら提示するといった、そのような「メルカリらしさ」を外部に共有するものにもなれば良いと考えています。
高橋 亮平
高橋> 先程、宮本さんが「結節点」にしていきたいという話をされていましたよね。結節点という意味では、もっと様々な人が関われる場になると良いですよね。例えば、このような人が関われるようになったり、この総研を使ってくれるようになると良いといったことはありますか。
宮本> メルカリという会社に関わる結節点であり、社内メンバーにとっても、メルカリの働き方を体現できるメディアでもあると考えています。
どの部署や担当であっても関われるというポジティブなもので、例えば、マーケットプレイスのビジネスデベロップメント(BD)の方などが、担当の仕事においてはビジネスインパクトが小さく実行しないという判断をしたとしても、「こうやってメルカリと連携できたらビジネスとしては成り立たないが、社会にとっては非常に良いことですよね」という視点でパートナーなどとの連携が始まったり、お客様も登場人物として、「メルカリ」を使う時に、「自分にとっては不要なモノが、誰かに大切にしてもらえるのが嬉しい」というモノへの想いが紡がれるといった良い話なども多くの人に知ってもらえると良いと思います。そのようなものも共有してもらえる場になると良いですよね。
上村> 社内の関係人口を増やすという意味では、メルカリの研究開発組織R4Dとも連携してきていますし、共通課題であるインターナルコミュニケーションの部分で社内にどう知ってもらうかについても取り組みたいと思います。相互連携しながら、まずは身近なところから取り組みの共感者を増やしていきたいです。
高橋> mercanは社内報を外部に公開したのが革新的だったと思うのですが、人事やプロジェクト、カルチャーを発信するものだったと思います。メルカリらしい仕事のし方というのは、先程も話があったように、部署を横断してメンバーが集まってきたり、このようなメルカリらしい構造自体を外部のステークホルダーなども巻き込みながら加速させていくプラットフォームになると、さらに面白く、新たな価値が生まれそうな気がしますね。
上村> すでに起こっていることとして、研究者の先生から他の分野の研究者の先生をご紹介いただくなど、縁が広がっていくのも「サーキュラーエコノミー総研」の新たな価値かもしれません。
宮本> 今回のプロジェクトについて、上村さんが先生方に説明してくれている時も、非常に反応が良かったのですが、その際もこうした結節点的な要素に共感してくれている方も多かったと思います。そういう意味では、今回のような発信もしていくことで、「一緒に取り組みたい」と感じてもらえると良いですね。
(高橋 亮平)
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宮本 祐一(Yuichi Miyamoto)
メルカリGroup PR Director。大学を卒業後、マネックス証券に入社。お客さま対応業務を経てマーケティング部に異動し、各種金融商品のマーケティングを担当。その後、経営企画部、広報室にて証券事業のブランディングや全社横断プロジェクトの統括、事業戦略の策定・実行に携わる。2019年1月より株式会社メルペイに入社し、スマホ決済サービス「メルペイ」の立ち上げPR担当としてメルペイカンファレンスの企画・運営を担当。その後、暗号資産を含めたFintech領域全般のPRを担当。現在は、企業広報(Corporate PR)とサービス広報(Japan Region PR)を統合したメルカリグループ全体の広報責任者を務める。
上村 一斗(Kazuto Uemura)
サーキュラーエコノミー総研 by mercari 編集長兼主席研究員。2016年1月にメルカリに入社。新規サービスのCSチーム立ち上げ、 採用・育成を担当する部門のマネージャーやCommunityチームの立ち上げなどを経て、現在はPRチームにて、メルカリ教室事業、地域循環モデル創り、グリーンフライデープロジェクトの企画などを担当。
高橋 亮平(Ryohei Takahashi)
メルカリ経営戦略室政策企画参事 兼 merpoli編集長、サーキュラーエコノミー総研 by mercari 主席研究員。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長。中央大学特任准教授、松戸市部長職、 神奈川県DX推進アドバイザー、千葉市アドバイザー、明治大学客員研究員、東京財団研究員、政策工房研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)、「「新しい生徒会」の教科書」(旬報社)他。