
2025年7月に開催された長野県環境理工系職員会総会にて、メルカリ経営戦略室政策企画マネージャーの今枝 由梨英が「リユースによる循環型社会の実現に向けて」と題し講演を行いました。
気候変動や資源枯渇といった課題が深刻化するなか、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした社会経済システムからの脱却が急務となっています。そこで注目されているのが、製品や資源を廃棄することなく循環させ続ける「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という考え方です。
今回の記事では、長野県での発表内容をダイジェストでお伝えするとともに、当日の質疑の模様などもご紹介します。
世界と日本が直面する資源問題とサーキュラーエコノミーへの転換
京都議定書やパリ協定以降、CO2排出量削減の議論が進む中で、現在は「資源消費トレンドの転換」と「環境対策と経済成長の両立」が喫緊の課題となっています。
国連環境計画(UNEP)の「グローバル・リソース・アウトルック2024」によれば、天然資源の採掘や加工が、地球危機(温室効果ガス排出量の55%以上、陸域の生物多様性損失の90%以上、水のストレス)の主な要因です。持続的でない活動を段階的に廃止し、政策的なアクションを進める必要がありますが、資源利用を減らしつつ経済成長を両立することは可能であると、各国に主体的な行動を促しています。

そのためには、従来の「リニア・エコノミー(直線型経済)」、すなわち「採掘→製造→使用→廃棄」という一方通行の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済スタイルから脱却し、「サーキュラーエコノミー(循環経済、CE)」への移行が重要と国内外で言われています。CEは、資源を捨てずに循環の輪をできるだけ大きく回し、高い価値のまま環境負荷を低減しながら資源を循環させることを目指しています。
日本の「第五次循環型社会形成推進基本計画」とリユースによる環境貢献
2024年8月に閣議決定された「第五次循環型社会形成推進基本計画」では、循環経済が国の戦略として位置づけられました。私たちメルカリが事業の中核とする「リユース市場規模」も重要な指標として設定されており、さらに、家庭から廃棄される衣類の量は2030年度までに2020年度比で25%削減するという目標も新たに掲げられています。

リユースは、この目標達成に大きく貢献しています。日本全体で廃棄される衣類の大部分は家庭からの廃棄物(94%)ですが、メルカリのみでも、衣類の不要品の出品により、日本で1年間に捨てられる衣類の約10%に相当する5.2万トン(52,000トン)の廃棄を回避できました。さらに、取引された商品が新品の代わりに利用されることで、1着あたりの平均使用年数が3.2年増加しています。
価値を循環させるための、メルカリと様々な主体との連携
社会全体でサーキュラーエコノミーを推進するためには、自治体、企業、そして生活者一人ひとりが連携し、社会の仕組みやモノの流れそのものを変えていく必要があります。そのような考えのもと、メルカリは、「捨てるをへらす」ために様々な主体との取り組みを進めています。
1. 自治体との連携によるリユース促進
全国60以上の自治体と連携し、粗大ごみとして出されたものや役所の不要品をメルカリ上で販売する取り組みを行っています。これにより、ごみ処理コストやCO2排出量の削減、最終処分場の延命化に貢献しています。愛知県蒲郡市では、この取り組みが市民の意識にも変化をもたらし、46.5%の人が「リユースする意識が高まった」と回答しています。
2. 「メルカリエコボックス」によるリユースの習慣化
「まだ使えるけど、すぐに売るのは面倒…」そんなモノたちを一時的に保管しておくための「メルカリエコボックス」。日本財団と連携し、全国の自治体で配布しています。家の中にエコボックスを置くことで、「捨てる」の前に「リユースする」という選択肢を自然に想起させることを目指しています。
3. 「グリーンフライデー」でサステナブルなファッションを提案
大量消費の象徴であるブラックフライデーに対し、メルカリはリユースやサステナビリティを考える「グリーンフライデー」を提唱。2023、2024年には、新作を一切使わない「新作ゼロのサステナブルファッションショー」を開催し、リユース品でもおしゃれを楽しめることを発信しました。
4. 異業種連携による地域循環モデルの構築
株式会社ヤクルト山陽様と連携し、ヤクルトレディの宅配網を活用して家庭の不要品を回収し、「メルカリShops」で販売する実証実験を行いました。この取り組みは、地域内の資源循環と新たなモデル構築を目指すもので、「全国シェアリングシティ大賞」も受賞しました。
消費者の意識変革の方向性
私たちは、リユースが特別なことではなく、誰もが当たり前に行う社会を目指しています。その実現に向けて、以下の2つが重要だと考えています。
1. 消費者一人ひとりの意識と行動の変容
メルカリの利用を通じて、「モノを大切に扱うようになった(60.0%)」、「新品にこだわらなくなった(54.0%)」という声が多く寄せられています。リユースを一度でも体験することが、消費行動そのものをサステナブルなものへと変えていく力を持っています。

2.「エシカル消費」の広がりによるモノの売り方への示唆
エシカル消費とは、地域の活性化や雇用なども含め、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動を指し、その市場規模は8.1兆円と推計されています。消費者は、商品やサービスを選ぶ際に、安心・安全・品質だけでなく、「エシカル(倫理的・道徳的)」という基準も重視するようになってきています
社会や環境への配慮に欠ける製品・サービスを「ボイコット」した経験がある人は全体の15.7%、約920億円と推計されています。これは、消費者が倫理的な選択を重視する傾向が強まっていることを示しており、「モノを売る」時には、エシカルな企業・商品やサービスであるかどうかも、消費者に選ばれる際に重要な要素となってきているといえます。

質疑応答の模様
参加者のみなさんからは、行政においてデカボ施策を考えつつ地域経済の振興を考える際には、どのような観点が重要であるかといった官民連携に関するご質問や、GHGの削減貢献量で見た場合の環境負荷について特に高いまたは低いカテゴリは何であるかといった環境観点のご質問をいただきました。
さらに、メルカリのサービスの使い方や教育プログラム(Mercari Education)、安心安全の取り組み(製品安全サポートなど製品安全等に関する情報をお届けする取り組み、全額補償サポートプログラム)についてもご質問をいただくなど、大変活発な質疑応答となり、今後の活動の貴重なヒントとなりました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
最後に:未来のために、今日からできるアクションを
今回の長野県での発表は、私たちメルカリが目指す社会像と、その実現に向けた課題を改めて認識する貴重な機会となりました。
これからも、サーキュラーエコノミーを前進させ、「捨てる」をへらし、限りある資源が大切に使われる循環型社会を目指し、活動してまいりたいと思います。
(今枝 由梨英)
=====
よくあるご質問(FAQ)
Q1. サーキュラーエコノミーとは何ですか?
A1. 従来の「作って、使って、捨てる」という一方通行の経済(リニアエコノミー)に対し、製品や資源を廃棄せず、修理・再利用・再生などを通じて価値を循環させ続ける経済モデルのことです。政府でも、「循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行加速化パッケージ」を策定し、推進しています。
Q2. 自治体や企業として、メルカリと連携することは可能ですか?
A2. はい、可能です。メルカリでは、リユース促進やサステナビリティに関する連携のご相談を随時受け付けております。ご関心のある担当者さまは、弊社コーポレートサイトのお問い合わせフォーム「循環型社会推進に向けた連携に関するお問い合わせ(国・自治体・団体のみなさま)」よりご連絡ください。
Q3. なぜ今、リユースが重要なのでしょうか?
A3. 新品の生産・輸送・廃棄にかかるエネルギーや資源を削減できるため、気候変動対策や資源の有効活用に直結するからです。