「透明性」が信頼を創る。メルカリ安心・安全の現在地と、初挑戦のプロジェクトオーナーが込めた想い

メルカリが掲げる「安心・安全」への取り組みは、いまや単なる一機能ではなく、社会インフラとしての責任そのものと言えます。

2026年3月、メルカリは「安心・安全の取り組みに関する透明性レポート 2025年下半期版」を公開しました。

https://about.mercari.com/safety/transparency/

不正利用者の「徹底的な排除」とお客さまの「徹底的な救済」を掲げるこのレポート。その制作をプロジェクトオーナー(PO)として牽引したのは、石川県からの派遣研修でメルカリPRチームに所属する井村 健吾です。

なぜメルカリはあえて「生の数字」を公開することに踏み切ったのか。異色の経歴を持つPOが、スピード感溢れるテック企業のプロジェクトで直面した苦労と、その先に見えた「透明性」の真価について、話を聞きました。

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「排除と救済」の進捗を、透明なデータで示す意義

――メルカリの「透明性レポート」の発行は、2025年8月に初めて公開し、今回は2度目の発行となりました。まずは、今回の「透明性レポート」の全体像について教えてください。

メルカリPRチーム 井村 健吾(以下、井村)> 「透明性レポート」は、2025年5月にメルカリが発表した安心・安全の方針――不正利用者の「徹底的な排除」とお客さまの「徹底的な救済」という2つの骨格に基づいたものです。単に方針を掲げるだけでなく、その取り組み状況や成果を定期的に公開し、透明性を確保することでお客さまからの信頼構築につなげることを最大の目的としています。

――今回は、2025年7月から12月までの下半期分をまとめたものですが、前回からアップデートされた点や特徴を教えてください。

井村> 最も大きな変化は、主要な項目において「生の数字(実数)」を公開した点です。前回のレポートでは、多くがパーセンテージや指数による表現に留まっていました。しかし今回は、メルカリがどれだけの熱量で対策を講じているかをより具体的にイメージしていただくため、踏み込んだ情報開示を行いました。

 

徹底的な排除:AIと人間の「合わせ技」がもたらす改善

――レポートの中で特に象徴的な数字を挙げるとすればどこでしょうか。

井村> やはり「トラブル遭遇率」の改善です。2024年の同時期は0.46%でしたが、2025年下半期には0.38%まで着実に低下しています。この背景には、多角的な「排除」の取り組みがあります。

――「排除」というと少し強い言葉に聞こえますが、具体的にはどのような方を対象としているのですか?

井村> 決して一般のお客さまを排除するわけではありません 。偽ブランド品の出品者やフィッシング詐欺を企むような「不正利用者」を徹底的に排除するということです。また、法律で禁止されている医薬品や、使用期限切れの化粧品を知らずに出品してしまうようなケースもあり、規約違反として適切に削除や制限を行っています。

――その「排除」の実効性が、今回の「生の数字」で示されているわけですね。

井村> その通りです。2025年下半期だけで、不正アカウントの利用制限数は約76万件、規約違反商品の削除数は約5,600万件に上ります。これらはAI技術を活用した監視体制の強化による成果です。

――さらに、2025年9月からは「メルカリ鑑定センター」も始動しました。物理的な鑑定体制も加わったわけですね。

井村> 自社運営の鑑定センターを設けることで、偽ブランド品の撲滅やすり替え被害の防止など、より盤石な体制を構築しています。また、高額取引の安全性を高めるために推進している、アプリ上で完結するオンライン本人確認(eKYC)について、本人確認済みのお客さまによる取引割合は78%まで向上しており、着実に安全なマーケットプレイスへと進化しています。

 

プロジェクトオーナーとしての葛藤と「自治体出身者」としての視点

――井村さんは今回、初めてプロジェクトオーナー(PO)としてこの大規模なレポート作成を牽引されました。自治体からの派遣研修生というお立場で、苦労されたことも多かったのではないでしょうか。特にどのような場面で「壁」を感じましたか?井村> そうですね、公務員時代を含めても、こうしてプロジェクトの先頭に立って「オーナー」を務めるのは初めての経験でした 。正直なところ、最初は手探りの状態でした。特に苦労したのは様々な部署との、圧倒的な知見量の差でした。不正対策に直接的に取り組むチームや、お客さまと直接対峙するチーム、行政とやりとりが発生するチーム。それぞれが、異なる分野のプロフェッショナルだからこそ、それぞれに熱い想いがあります。一方で、PRチーム側としては、それをそのまま載せるのではなく、お客さまやメディアにとって何が最も分かりやすく、刺さるストーリーなのかを考える必要があり、各部の出したいことを学ぶことからのスタートでした。

――「出したい情報」と「伝わる情報」のギャップですね。

井村> 「何を出して、何を削るか」。社内の熱量と世間の透明性へのニーズのバランスをどう取るか議論を重ねました。今回の「生の数字を出す」という決断も、この真摯な議論の結果です。メディアの方から「ここまで詳細な数値を出せるんですね」と驚きをもって評価していただけたときは、議論を尽くして良かったと心から思いました。

――自治体での仕事の進め方と、メルカリでの経験に違いはありましたか?

井村> スピード感と「前例」に対する考え方が全く違いますね 。自治体では前例踏襲が重んじられる場面も多いですが、メルカリでは「前回のアップデート版を作ればいい」という発想ではなく、「今、何が最適か」をゼロから組み直す議論から始まります。この自治体では経験できなかったスピード感で現状最適を追う姿勢は、大きな学びになりました。

 

「安全」のその先へ。メルカリが目指す説明責任

――最後に、この透明性レポートを通じて社会に伝えていきたいことを教えてください。

井村> メルカリがこれほどまでに安心・安全に心血を注いでいる事実は、実はまだ世の中に十分に伝わりきっていないと感じています。PRの役割は、プロダクトの裏側にある地道な積み重ねを、伝わる形に咀嚼して世に出すことだと思っています。

――レポートは今回で終わりではなく、継続していくことが重要ですね。

井村> その通りです。透明性とは、都合の良い数字だけを出すことではありません。たとえ数値が悪化したとしても、その原因を明らかにし、どう改善していくかを示し続ける。それが、お客さまに安心してメルカリを使っていただくための、企業としての誠実な説明責任だと考えています。今後も半年ごとの更新を通じて、社会の信頼に応えていきたいです。

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プロフィール

井村 健吾(Kengo Imura)

メルカリPR 兼 政策企画。2016年石川県庁入庁。健康福祉部、商工労働部、企画振興部で勤務。直近の企画振興部企画課においては、SDGs推進や新型コロナウイルス対応、知事懇談会、予算・決算業務等に従事。2025年4月から2026年3月までメルカリに派遣研修中。Corporate PR及びPublic Allianceに所属し、広報や自治体連携業務を担当。

インタビュアー

高橋 亮平(Ryohei Takahashi)

メルカリ経営戦略室政策企画参事 兼 merpoli編集長、サーキュラーエコノミー総研 by mercari 主席研究員。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長。中央大学特任准教授、松戸市部長職、 神奈川県DX推進アドバイザー、千葉市アドバイザー、明治大学客員研究員、東京財団研究員、政策工房研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)、「「新しい生徒会」の教科書」(旬報社)他。