
石川県庁からメルカリに派遣された井村 健吾です。1年間の研修を終え、今の率直な思いを自分の言葉で綴らせていただきます。
石川県庁から派遣研修職員としてメルカリに飛び込み、駆け抜けた1年が過ぎました。2025年4月から2026年3月まで、コーポレートコミュニケーション(CC)とパブリックポリシー(PP)という、組織の「顔」と「行政との架け橋」を担う2つの部署を兼務した日々は、私の公務員人生において最も刺激的で、かつ自分自身の「当たり前」を根底から覆される経験となりました。
研修の集大成として、私が何に悩み、何を掴み、そしてこれから石川県をどう変えていきたいのか。その軌跡を報告します。

期待と不安の裏側で――「GWに帰ってしまおうか」と思ったあの日
石川県庁ではこれまで、健康福祉部や商工労働部、企画振興部など、石川県庁で幅広い行政実務を経験し、一通りの知見を積み上げてきた自負はありました。しかし、いざメルカリに飛び込んでみると、そこは全く異なる原理で動く「異世界」でした。
使われる言葉、スピード感、意思決定のプロセス。すべてが180度違いました。 実は、4月に着任してすぐの頃は、その圧倒的な文化の差に打ちのめされていました。「自分はこの組織に何も貢献できていないのではないか」という焦燥感。5月の大型連休中には「このまま石川に帰ってしまおうか」と頭をよぎったほどです。
しかし、そこを踏みとどまらせてくれたのは、メルカリのメンバーが当たり前のように体現している「Go Bold(大胆にやろう)」の精神でした。「未経験であることは欠点ではなく、むしろ組織に新しい風を吹き込む『純粋な視点』という武器になる」――。そう思考を切り替え、自分を鼓舞し、がむしゃらに食らいついた1年間が、今の私の大きな自信に繋がっています。

プロフェッショナルと共に駆け抜けた3つの挑戦
私はこの1年、CCとPPの業務を兼務し、いくつもの大きなプロジェクトに携わらせていただきました。その中で主なものをいくつか紹介します。

1. メルカリの「意志」を社会の価値へ――インパクトレポート作成とAI活用
7月頃から本格的に携わったのが、メルカリが社会に与える価値をまとめる「インパクトレポート(Impact Report)」の作成です。メルカリが掲げる「サーキュラーエコノミー」や「安心・安全」への取り組みは多岐にわたりますが、それらを単なる数字の羅列ではなく、いかに「社会に対するインパクト」として可視化し、届けるか。その「翻訳」のプロセスに深く関わりました。
実は、私が本格的に業務でAIを活用し始めたのも、このインパクトレポートの作成からでした。膨大な社内ドキュメントを読み解き、複雑な専門知識を世の中に伝わる言葉へと昇華させる作業。ここでAIという「右腕」に情報を整理する作業や構成の検討など任せることによって、「どの言葉が最も心に響くか」などのクリエイティブな思考により多くの時間を割けるようになりました。
https://merpoli.mercari.com/entry/2025/10/03/113858
2. 「自治体メルカリShops」の拡大でサーキュラーエコノミーの実現へ
PPとしては、自治体の不要品販売などを支援する「自治体メルカリShops」の拡大に注力しました。立川市、岐阜県、松戸市など、実際に現場へ足を運び、首長や自治体の皆様の熱意に触れました。この「捨てるをへらし、価値を循環させ、さらには財源も生み出す」という一石三鳥のモデルが全国81自治体等にまで波及していることは、メルカリが目指すサーキュラーエコノミーの実現への大きな一歩だと考えています。
https://merpoli.mercari.com/entry/localgovernment
3. 未経験から挑んだ「透明性レポート」のプロジェクトオーナー

2月に公開した「透明性レポート 2025年下半期版」で、私はプロジェクトオーナー(PJO)という大役を任されました。不正対策やカスタマーサービス(CS)のプロフェッショナルたちが集まるプロジェクトで、最初は彼らの専門知識と熱量に圧倒されるばかりでした。
私の役割は、多岐にわたる専門部署の合意形成を図り、その深い議論をメディアやその先にいるお客さまに伝わる形にすること。未経験だからこそ生まれる視点も踏まえてステークホルダーと対話を重ねた結果、メディア露出は目標を上回る結果となり、大きな手応えを得ることができました。「未経験でも、意志があれば組織は動かせる」――そう思えた私にとって最高に「Go Bold」な挑戦でした。この経験を、次は石川県庁の様々な施策を県民に届ける「対話の架け橋」として昇華させていきたいと考えています。
https://merpoli.mercari.com/entry/2026/03/23
行政の本質へ立ち返るための効率化。AIが生み出す「人間らしい仕事」の価値

AI活用に対する圧倒的なスピード感と「当たり前」の基準の高さにも衝撃を受けました。ここでは「AIを使うかどうか」という議論はすでに過去のものであり、「AIによっていかに余白(時間)を生み出し、人間にしかできない高付加価値な業務にリソースを集中させるか」という戦略的な思考が組織全体に浸透していました。
私も今では、日々の議事録作成や資料構成の壁打ち、要約などにAIを使い倒しています。 石川県庁に戻っても、このマインドを伝道し、「手作業が美徳」などの庁内の当たり前をアップデートしていきたいと考えています。ツールで省力化した時間を、県民の皆様の声に耳を傾け、より精度の高い政策を練り上げるための「クリエイティブな時間」へと転換していく。AIという強力な相棒を得ることで、行政はもっと本質的な役割を果たせると確信しています。
石川県庁へ持ち帰る、「ナイス・トライ!」の風

1年間の研修を経て、私が石川県庁で一番やりたいこと。それは、メルカリで肌身に感じた「Go Boldな挑戦を讃える『ナイス・トライ!』の風」を庁内に吹かせることです。
県庁を外から客観的に見ることで、ある課題が浮き彫りになりました。それは「前例がない」という理由で、新しい提案を形にする前に否定してしまう空気。これでは、どんなに優秀な若手職員も「どうせ言っても無駄だ」と諦めてしまうのではないかという懸念があります。
メルカリでは、どんなアイデアもまずは「それ面白いね!」「ナイス・トライ!」と肯定されることから始まります。
- 前例踏襲で否定する前に、まず提案の内容やチャレンジしようとする姿勢を評価する。
- 心理的安全性を担保し、「知りたいこと」「知ってほしいこと」をオープンに発信できる場を作る。
この「風」があると、行政組織はもっと面白くなると信じています。

結びに:「一緒に働きたい」と思われる人材であるために
1年間の研修を終えて、力不足を痛感することもありましたが、組織の最適を考え、自分にできるアクションを積み重ねてきた自負はあります 。石川県庁に戻った後も、まずは私自身が周囲から「この人と一緒に働きたい」と思われるような、ポジティブな影響を与えられる人材を目指します 。1年間、本当にありがとうございました。メルカリで得た経験を糧に、石川県で新たな「Go Bold」な挑戦を始めます !
(井村 健吾)
