担当者に聞いてみた。「インパクトレポート」で見えるサステナビリティと事業成長の好循環

メルカリは9月25日、サーキュラーエコノミーの実現に向けて2024年度に取り組んだ活動とその結果をまとめた「FY2024.6 Impact Report(以下、インパクトレポート)」を公開しました。

この記事では、サステナビリティチームのマネージャーであり、インパクトレポートの作成を担当した山下 真智子に、同プロジェクトに携わった政策企画チームの藤井 彩香がインタビューした内容をご紹介します。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

インパクトレポートの意義と名称変更の背景

藤井 彩香(以下、藤井)> インパクトレポートの公開、お疲れ様でした!表紙も青と緑で前回から一変していますね。4月にプロジェクトがキックオフしてからあっという間でしたが、最後まで修正が続いて大変だったと思います。まずは、インパクトレポートについて簡単に教えてください。

山下 真智子(以下、山下)> メルカリのインパクトレポートは、メルカリの事業を通じて社会にどのようなインパクトを与えているのかを「マテリアリティ」に基づきまとめたものです。他社ではこのような非財務情報はサステナビリティレポートや統合報告書として発表されることが多いですね。

インパクトレポートについて話をする山下

藤井> 2023年度から「サステナビリティレポート」を「インパクトレポート」に名称変更されていますが、その経緯を教えてください。

山下> 社会にインパクトを「与えたい」という思いと、温室効果ガス(以下、GHG)の削減貢献量を開示しているとおり、「メルカリ」が既に環境にポジティブなインパクトを「与えている」という自負の両方があり、これを明確に表現するために名称を変更しました。

 

あらゆる価値が循環する社会の実現

藤井> こうしたレポートの発行は今回で5回目になると思いますが、2024年度のインパクトレポートの特徴を教えてください。

インタビュアーの藤井

山下> ページ数は昨年度の約半分の30ページ程度にしました。私自身、5回のうち4回作成に携わっていますが、今年は、昨年の良い部分を踏襲しつつ、より重要な点にフォーカスした内容にしています。そのため、構成や考え方は昨年と大きくは変わっていません。読者が昨年のレポートと比較しやすいように大きな変更をしないことも大事だと考えました。ただ、メルカリがこの1年間で進めてきたことがたくさんあるので、それがきちんと伝わるように内容を絞って、メッセージをよりシャープにしました。

藤井> 私が4月にメルカリの政策企画チームにジョインした際、多くの方から最初に読むべき資料として「インパクトレポート」を勧められました。メルカリで働くことの意義を理解する上で非常に興味深く感じたことを今でも覚えています。今回のインパクトレポートの主なハイライトについて教えていただけますか。

山下> マテリアリティ2で挙げている「削減貢献量」は毎年算出していますが、今年は数字のアップデートに加え、算出カテゴリーを拡大しました。また、今年は逆にネガティブインパクト、つまり事業を通じて排出している排出量にも目を向け、Scope3カテゴリー9(下流の輸送・流通)を算定対象に含めました。パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定するGHG排出削減目標であるSBTを取得する企業は世界中で増えていますが、今回のレポートに合わせてメルカリもSBT認定を取得し記載したことも今回のハイライトです。「メルカリ」の事業を行う上で配送はなくてはならないものです。配送する際に排出されるGHGに対して会社がきちんとコミットしていくことは、投資家からもずっと求められてきましたし、社員からも「メルカリが配送に対して責任を持たなくてもいいのか」という声がありました。会社としてもここにコミットするという意思決定をし、世界的な認定を取得できたことは大きな成果です。配送業者からもプレスリリースでコメントをいただき、協力してやっていくという一体感を示せたことは本当に良かったと思っています。これをリードしたのは私たちのチームでもあり、3年がかりで取得できたので、まさに悲願達成でした。

※SBT認定取得の詳細についてはこちらをご覧ください:

藤井> 今年のインパクトレポートでも、「メルカリ」での取引を通じて生まれたGHGの削減貢献量と不要品が出品されたことで回避できた衣類廃棄量を公開していますね。このページは政策企画チームが官公庁や団体等との面談で頻繁に活用しています。メルカリの事業が社会にもたらすポジティブなインパクトを、定量的に表現している点は非常に説得力があります。メルカリの事業成長がそのままサーキュラーエコノミーの実現につながるというメッセージを明確に伝えられていると感じます。今後、さらにどのような領域で数値化や見える化を進めていくべきだと考えていますか。

山下> 政府の成長戦略に衣服の削減目標が明記されました。私たちの活動とも整合性が取れるようになったと思っています。また、「メルカリ」の靴の削減貢献量はまだスニーカーしかないので、靴全体に広げていくなど、色々できることはあると思っています。

藤井> 第五次循環型社会形成推進基本計画にも「リユース市場規模」が重要な指標として目標設定されるとともに、「家庭から廃棄される衣類の量を2030年度までに2020年度比で25%削減」するとした具体的な数値目標もモニタリング項目に設定されています。この中で、「メルカリ」の役割は非常に重要ですね。他にもハイライトはありますか。

山下> 基本的には、レポートに載せたいからその働きかけをしたというよりは、実際に取り組みをして、それがレポートに書けた、という感じです。逆に、レポートに掲載することを前提として準備したコンテンツの一つに、社外取締役のインタビューがあります。2023年9月に指名委員会等設置会社に移行するという大きなガバナンス体制の変化があった中で、1年経ってどうなったかをきちんとステークホルダーに届けたいと思っていました。

藤井> 今回のレポートではAIも活用して作成されたと聞きました。

山下> 今年はAIを活用してレポートの文章作成や画像生成も行いました。これにより作業時間が大幅に短縮され、効率も良く質の高いレポートを作成することができたと思っています。

 

インパクトレポート作成の裏側

藤井> 今年のレポート作成で苦労された部分についても教えてください。

山下> 一番苦労したのは、SBT認定の取得がレポートに間に合うかどうかという点でした。これは私たちだけではコントロールできない部分も多かったので、SBT側と粘り強くコミュニケーションを実施しながら進めました。苦労した分、このレポートは社員やステークホルダーにも多く読んでいただき、活用してほしいと思っています。投資家向けのレポートとして作成していたものが、今では社員や採用候補者の方、政策企画チームなどでは官公庁の方とやり取りする際に使っていただいたり、取引先の方に送ったりと、より広範な使われ方をしていて嬉しいです。

藤井> 具体的にはどのように活用してほしいですか。

山下> 昨年は男女の賃金格差などのペイギャップに関する取り組みがメディアに大きく取り上げられるなど、社会的な課題と合わせて語られるようになりました。レポートを見て、メルカリが社会に与えるインパクトを再認識するきっかけにしてほしいですね。インパクトレポートでは削減貢献量など環境へのインパクトだけでなく、インタビュー記事やアンケート結果を掲載していたように生活が豊かになったとか、「メルカリ ハロ」を通じて新しい自分の生きがいを見つけたという声などもあるので、そういう環境に関するインパクト以外の側面もいろんな方に知ってほしいです。

インパクトレポートについて話をする山下

さらなる社会的インパクトを目指す今後の戦略

藤井> インパクトレポートの今後の目標や展望などはありますか。

山下> そうですね。今はまだレポートを出したばかりなので、正直少し「抜け殻」状態という感じですが(笑)。毎年このレポートは出す予定ですし、やはり大事なのは、実際に成果として書ける中身の活動を充実させていくことだと思っています。特に今年は、マテリアリティ1として「寄付」の取り組みを大きく取り上げましたが、これは長年の継続的な努力があってこその成果です。レポートに書けるような実績やコンテンツ、他社との具体的な連携をさらに深め、事業や社会にインパクトが出せるような取り組みを実際にやっていくことです。レポートとしてやりたいことというよりは、チームとしてやりたいこと、ですね。

藤井> このレポートが、メルカリが着実に進んでいることを確認する機会となり、実際に達成したことをハイライトすることで、その歩みを明確に示すものとなればいいですね。

山下> インパクトレポートのメインの読者である投資家と普段コミュニケーションを実施しているIRチームとの連携はもちろんですが、最近は特に政策企画チームとの連携も増えてきました。これは今年のレポート作成にあたって大きな変化だったと思います。2023年に実施した環境省との削減貢献量の算出プロジェクト(https://about.mercari.com/press/news/articles/20230522_positiveimpact/)など、政策企画チームとできることや連携が増えてきたんだという実感があります。社内の連携がさらに進むことで、インパクトレポートが「実施してきたことを投資家に伝える報告書」だけから、社会を変えたり社会課題を解決していく会社というメルカリの位置づけの中で、社内で行動する人たちにとってより実践的な武器として使える「アクションペーパー」としても機能していくと良いなと考えています。サステナビリティに関する様々な活動をしていく中で、このレポートが1つの役割を担うようになってきました。

藤井> 活動とレポートがシームレスにつながっていたり、活動していくためのレポートという側面が強くなってきたと感じています。

山下> また、メルカリの事業以外の側面から見える世界もあると思います。安くてお得に使えるという「メルカリ」のイメージの裏側にある世界観が見えるレポートになっていると思うのでぜひ、多くの方に読んでいただきたいです!

インタビュアーの藤井

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

プロフィール

山下真智子(Machiko Yamashita)

2015年メルカリ入社、経営戦略室サステナビリティチーム マネージャー。Culture & Communicationsチームのマネージャーなどを務め、2度の育休を経て2021年よりESGプロジェクトに参画。教育プログラム、ネガティブインパクト算出のプロジェクトオーナーを務めたのち、2022年10月より現職。

インタビュアー

藤井 彩香(Sayaka Fujii)

メルカリ政策企画。2020年岐阜市役所入庁。上下水道事業部、市長公室で勤務。直近の市長公室秘書課においては、岐阜市長の出張手配、交際事務及び市政功労表彰をはじめとする各種表彰の事務に関する業務等に従事。2024年4月から2025年3月までメルカリに派遣研修中。経営戦略室政策企画に所属し、サーキュラーエコノミーへの移行におけるリユース・CEコマース推進とトレンド作りに関わる業務を担当。