未来投資戦略2018を読んでみた(フィンテック編)

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Institutions matter. (制度が重要だ)

繁栄を極めた国家がなぜ衰退するのか。この問題を分析し、大きな話題を呼んだDaron AcemogluとJames A. Robinsonの大著 ”Why Nations fail” (邦題『国家はなぜ衰退するのか』)の主要なメッセージは、国家の繁栄にとって「制度が極めて重要である」というものでした。

ずいぶんとスケールの大きな話から始めてしまいましたが、フィンテック分野においてスタートアップがビジネスを展開していく上でも、規制(制度)は非常に重要な役割を担っています。メルペイがフィンテック分野で新たに提供しようとするプロダクトやビジネスの設計を考えるにあたって、今後、政策がどのように展開していくかを見通すことは非常に重要です。

では、政府の政策展開を見通すには、どうしたらいいのでしょうか?その答えの一つが、今日の記事のタイトルにもある、政府の「未来投資戦略」を読んでみるというものです。この文書には、その年、政府が重点的に取り組んでいく政策の方向性が列挙されています。今日は、今年6月に決定された「未来投資戦略2018」のフィンテック部分を確認してみます。同戦略は、全体版第1「基本的視座と重点施策」 第2「具体的施策」実行計画 の4部構成になっていますが、ポイントがまとまっている第1「基本的視座と重点施策」に目を通してみましょう。

この「基本的視座と重点施策」を読んだ私の最初の感想は、「うーん、結論がどうなるか見えない部分もあるけど、フィンテック分野のスタートアップを後押しする政策に数多くトライするんだな。自分たちにとってはチャンスだな」というものでした。実際、未来投資戦略にはフィンテック関係の記載が充実しています。例えばP.11には以下の記載があります(赤字部分は筆者が加工しました)。

▶FinTech/キャッシュレス化推進

・現在の業態ごとの金融・商取引関連法制を、同一の機能・リスクには同一のルールを適用する機能別・横断的な法制に見直すことについて、関係省庁において連携しつつ検討を行い、法整備に向けた基本的な考え方について、本年度中に中間整理の取りまとめを目指す。

・ブロックチェーン技術、タイムスタンプ等を用いて簡易かつ高セキュリティな本人確認手続を可能とする仕組みの構築や、市場監視業務へのAI 導入に向けた検討を進める。

・産官学の関係者による「キャッシュレス推進協議会(仮称)」を本年中に設立し、事業者・消費者双方が受け入れやすいインセンティブ措置を含め、キャッシュレス社会の実現に向けた取組について検討を行うとともに、簡易かつ高セキュリティな決済の仕組みを確保しつつ、二次元コード(QR コード等)のフォーマットに係るルール整備について本年度中に対応策を取りまとめる

以上の記述のうち、例えば1点目については、すでに経済産業省で商取引ルールに関する検討が始まっていますし、3点目についても「キャッシュレス推進協議会」がすでに設立されています。このように、未来投資戦略に記載された政策は、政府内でも非常に優先度が高く実行されていくといえます。

また、フィンテックに限定されたテーマではありませんが、P.16には、フィンテック企業が現状の制度では展開が難しい新規ビジネスを実現するため、制度改正にチャレンジすることを後押しする政策が盛り込まれています(赤字部分は筆者が加工しました)。

 (2) 大胆な規制・制度改革

①サンドボックス制度の活用と、縦割り規制からの転換

・生産性向上特別措置法において創設された新技術等実証制度(いわゆる「規制のサンドボックス制度」)を政府横断的・一元的な体制の下で推進することにより、革新的な技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進する。

・従来の産業分類にとらわれない革新的なビジネスが次々と登場してくる中で、規制の「サンドボックス」制度の運用から導かれる制度見直しニー ズへの対応も含め、いわゆる業法のような既存の縦割りの業規制から、サービスや機能に着目した発想で捉え直した横断的な制度への改革を推進する。

「規制のサンドボックス制度」については、メルカリ・メルペイでも活用を検討していますし、2点目の横断的な制度への検討についても継続的にウォッチしながら、関係省庁の担当者の方々と意見交換を行っていきたいと思います。 

いかがだったでしょうか。ごくごく簡単にですが、未来投資戦略2018のフィンテック関連部分を確認しました。ご覧のとおり、フィンテック分野を後押しする記載が多く盛り込まれており、私たちもこうしたチャンスを活用して、より安全で便利なサービスを皆様に届けられるよう最善を尽くしてまいります。

日本の社会が豊かであるためには、その裏付けとなる経済の成長が不可欠であり、そのためには制度(政策)が重要です。今後、未来投資戦略2018に基づき、金融庁や経済産業省を中心に、フィンテック分野の政策検討が進んでいくかと思いますが、私たちのようなスタートアップも、自社のビジネスをいっそう成長させることに注力すると同時に、その基盤となるよりよい政策・ルールづくりに貢献していきたいと考えています。

吉川 徳明