メルカリのGR (Government Relations)のこれまで

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GRという言葉をご存知でしょうか。このブログを読んでいる人は当然知っているかもしれませんが、私自身メルカリに4年ほど在籍していて、この言葉の定義を明確に説明できるかと言えばあやしいところです。世間一般でもPR (Public Relations) は聞いたことがあっても、GR (Government Relations)は、まだまだ馴染みがないのではと思います。ちなみに、ネットで検索したところ「政府との関係を積極的に構築すること」であったり「政府との包括的なコミュニケーション」といった説明がでてきましたがかなり抽象的です。もうちょっと見ていくと「具体的には情報収集、ロビー活動、メディア戦略などを通じて行政に働きかける。」とも書かれてまして、私もようやくイメージが湧いてきました。

さて、GRが上記のような意味だという前置きのもと、メルカリはこれまでどういうGRを行ってきたのか、もちろんまだまだ至らないところだらけですが、ご紹介させていただければと思います。

 

(1)正面から規制官庁にぶつかっていった時代

4年前、私がメルカリに入った頃は、何か法令上の疑義があるとまずは自分たちの考えを整理し、その法令を所管している官庁に正面から議論を挑んでいました。私自身が元役人だったということもあるのですが、役所間では各省協議というのが頻繁に行われ、理屈が通るほうが勝つという世界があり、その感覚で役所と議論していました。今思えば、役所対役所の関係と、1ベンチャー企業対役所の関係が同じであるわけがなく、このようなやり方で通すのはかなり難しいのですが、時代に合わない法規制に対して時代に即した自分たちの理屈が負けるはずはないと、何度も正面からぶつかりその度に跳ね返されるという経験をしていました。

 

(2)業界団体として動くことを覚えた時代

メルカリも今でこそ上場企業として、多くの方に認知される存在になってきたところではありますが、数年前というのは、数多く生まれては消えていくベンチャー企業の一つに過ぎないと考えられていました。実際、役所の人と話しても、メルカリを使ったことがあるという人にほとんど出会うことはありませんでした。そんな企業が一社で役所と議論をして制度を変えられないことに気づいた我々が次に考えたのは、業界団体に入って業界として役所に働きかけることでした。業界団体として動くことで、個社からの要望では動いてもらえなかったものが、業界全体の問題であればと、検討してもらえる可能性がでてきます。また、業界の名前で役所に働きかけますので、個社名が表に出にくくもなります。さらに、一番大きな利点だと思うのは、一社で役所と議論するときはアポ入れも資料の検討・作成も自分たちだけでやらなければならなかったところ、団体に入ると、事務局の人と議論して、よりブラッシュアップされた材料を持って役所に行けるようになり、かつ、資料作成なども団体が手伝ってくれて、事務作業がずいぶん楽になることでした。

 

(3)役所との信頼関係構築の時代(対立一辺倒からの脱却)

業界団体にも入って役所との交渉力も増してきたところですが、常に業界団体が動いてくれるわけではありません。業界団体には多くの会社が加盟しており、加盟企業間で利害が一致しない場合もあるためです。いつも業界団体に頼れるわけではないということで、やはり自分たちが成長しないといけないと気づきました。幸い、業界団体から色々と学ばせてもらえたことと、会社も順調に成長してきて多少の余裕がでてきたことで、関係する役所と平時から定期的に意見交換を行えるようになってきました。

以前は、(1)のとおり、何か問題が起こってはじめて議論するという関係だったのですが、普段から信頼関係を築いておくことで、いざ問題が起こったときも協力して問題解決に当たれるようになりたいと考えました。問題が起こった時に、何も知らない相手と交渉するのと気心知れた相手と交渉するのでは、後者が有利になるのは明らかです。

何はなくても関係する役所には定期的に足を運ぶようになり、そうすると、問題が起こりそうなときも役所側から火種の小さい段階で教えてもらえるようになったり、最近では各役所の勉強会等にも委員として呼んでいただけるようになったり政策立案前にヒアリングに呼んでいただけたりするようになってきました。

 

(4)多方面のネットワークづくりの時代

役所との関係は以前に比べてかなり良くなってきたのですが、役所の人と話していて、自分たちだけではどうにもできないという言葉を聞くこともよくあります。メルカリの言っていること分かるんだけど、世論がまだついてきてないんだよ、とか、旧来の政治家にはその技術のことは理解してもらえないんだよね、といった類のものです。そこで我々としては、世論に大きな影響を与えるメディアの人々や実際に政策を決める権限を持っている政治家の人々に対してもアプローチを始めることとしまして、メルカリの考えや取り組みを地道に説明して回り一人でも多くの人に理解を得られるよう努めています。

おかげさまで、以前に比べるとだいぶメルカリの考えに理解を示してくれる人が増えてきたところですが、ステークホルダーは多岐にわたり、政治・行政、メディア、有識者各方面にあまねく深い理解を求めていくことは時間的にも人員的にも難しく、いかに効率的に理解を得ていくかが現在の課題となっているところです。

 

まだまだその先にもやらなければならないことは多く、GRとしてできていないことが多いとは考えているのですが、これまでの経験を経て、「政府との関係を積極的に構築すること」であったり「政府との包括的なコミュニケーション」は徐々に進んできていると感じています。信頼関係というのは築くのには時間がかかるが壊すのは一瞬だと言われます。今後もチームメンバーを充実させながら、気を引き締めて頑張っていきたいと思います。

 

(城 譲)