「メルカリ政策企画meetup」を開催しました!

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11月30日、虎ノ門で「メルカリ政策企画」として初めての「meetup」を開催しました。

会場には、50人を超える多くの皆さんに集まっていただきました。定員を大幅に超える方々にお申し込みいいただき、ご参加いただけなかった方々も多かったため、今回の記事で開催の様子を共有させていただきます。

当日は、メルカリ取締役社長兼COOの小泉からの挨拶、ゲストを招いてのパネルディスカッション、懇親会と、21時までの2時間でしたが、非常に盛り上がり、官民の連携による政策形成の今後を考えるいい機会になったのではないかと思います。

今回の記事では、当日のパネルディスカッションについて報告します。

 

官民のギャップよりも、ベンチャーや外資であるかないかのギャップ

モデレーター:高橋亮平(以下、高橋): 今回、メルカリ政策企画としてはじめてmeetupを開催させていただきます。初回の今回は、文科省からGoogleで執行役員も務められた藤井宏一郎 マカイラ株式会社CEO、ヤフーへの出向経験もある飯村由香理 総務省情報流通高度化推進室長、経産省からヤフーでの政策企画を経てメルカリ社長室政策企画マネージャーを務める吉川徳明と、官僚経験と民間経験の両方を持つ皆さんをパネラーに進めて行きます。まずは、こうした官と民での仕事はどう違うのかについて聞きたいと思います。

藤井宏一郎(以下、藤井): 官民のギャップについてですが、組織の中で職業人として求められることにはそれほど違いはないと思います。官から民に行くギャップではなく、むしろ大手に行くかベンチャーに行くか外資に行くかのギャップの方が大きいのではないでしょうか。霞が関から日本的な大企業に行ってもあまりギャップは感じないのではないでしょうか。

飯村由香理(以下、飯村): 今日ここでお話するのは、私が総務省からヤフーに2年間人事交流にいった経験を踏まえた個人的見解ですので総務省の見解ではないということを最初にお伝えします。その個人的な経験では、ビジョンについては共通していると感じました。国の仕事も世の中を良くしよう、社会を良くしようと思ってやっていますが、ヤフーにいた時もICTや情報通信においてユーザーの課題をどうやって解決しようと取り組んでいた際、思いは同じなんだなと感じていました。ユーザーにサービス提供する際に、ユーザーインターフェーズなど非常に細かいところまで気を使っているところは、民間ならではだとも思いました。

吉川徳明(以下、吉川)>: コミュニケーションについては、霞が関とメルカリでは、オンライン、オフラインともにだいぶ異なります。メルカリ社内のコミュニケーションも非常にフラットで、社長も個室があてがわれているわけでもなく、役所で言うところの「島」に座っていて、「係長」「係員」にあたる社員に混じって仕事をしています。当然ですが、役所のように「窓側の方が偉い」といった慣習もありません。そのため、いつでも社員が気軽に経営陣に話しかけることができます。

藤井: まさに言いたかったのは官民のギャップではなく、スタートアップかそうでないかのギャプの方が絶対に大きいということです。役所を辞めた後、最初にグローバルなPR会社に入りましたが、カルチャーについて言えば、車の後部座席に乗る時に役所だと幹部の右側に座るが、民間では左に座るとか、そんなくだらない違いしかありませんでした。ところがGoogleに入った時に、米国本社の法務部長に連絡する際に、「Dear何々、I’m from Japan 何がし何がし…」とメールで連絡したところ、「これは役所のカルチャーで、古いアメリカの仕事の仕方だ。こんなことをやっていたら仕事にならないので、『Hi 何とか』でいいんだ、それもチャットで!」と言われました。仕事をしていると急に「YT」って連絡が着ます。「You there(そこにいるか)」の略なのですが、このような感じで仕事をしていました。

 

立法能力、永田町霞が関の状況把握からメディア戦略まで

高橋: 次に「求められる人材像」について吉川さんからお答えいただけますか。

吉川: コミュニケーションがオープンで、変化に柔軟な方です。今の仕事現場では、政策企画として霞が関や永田町の方々と議論する一方で、同僚や同業他社の20代の若い人たちとも議論します。伝統的な業界、NGO、メディアなどと接する機会も多いです。こうした方々と垣根なく噛み合った議論ができるコミュニケーション力が最も重要だと思います。

飯村: 民間で働くためには、アンテナを高くして、貪欲に好奇心を持つことだと思います。逆に役所だと利害調整、調整バランスが求められるので、その意味でもバランス感覚が大事です。

藤井: 様々な会社から、「公共政策部門の立ち上げどうすればいい」などと聞かれることが多くあります。その際、まずはリーガルエンジニアリングの能力だと答えます。民間企業のマーケティングの人とかって、「なんか役所が駄目って言っているんです」とか、「これってやってもいいんですか?外国では駄目みたいなんですが」という人が多くいますが、この分野においては、「これは何とか法の何条に…」や「届出制になっているから…」といった許認可や届出制、法制度などリーガルな分析と対案としての立法案が出せる、霞が関の法律職のような能力が必要で、それができないと話にならなかったりします。

一方でその先になると、今度は永田町と霞が関の両睨みの調整が必要になります。例えば、「これは医療だから厚生労働省」ではなく、最近は内閣府や内閣官房に吸い上げられていることが多かったり、業法としては厚労省でもプッシュしてくれるのは経産省やIT室ということもあったりします。

永田町関連で言えば、「大物議員が寝転がってしまってはできない」や、「IT推進ならこうだが、この問題ではむしろこっちを寝っ転がらせると進まなくなる」といった永田町・霞が関の状況が頭に入っていて、政策カレンダーが分かっている人が重要だったりします。「来年は参院選があるので…」といった霞が関だと幹部が考えるような永田町対策を若手のGR担当者がこなさなくてはいけないことがしばしばあるというのもこの業種の特徴です。

また、業界団体を巻き込まなければならないので、幅広い人脈や、メディアにリークして、ネットで炎上させて、などといったメディア戦略なども必要だったりします。

全部ができる人というのは少ないので、こいつはこれができて、こっちはこいつがと、人材マップができてチームを創って行ける能力も、GRチームを率いる場合は非常に重要な能力になります。

 

結局のところ政策企画の分野は「霞が関頼り」なのか?

高橋: 結局今の話を聞くと「霞が関頼り」なのという印象を受けましたが、そうなんでしょうか。

吉川: こうした政策企画界隈のイベントに参加すると、「ベンチャーも政策形成にどんどん関わって行こう!」という威勢のいい声を聞き、私も賛同する部分もあるのですが、実際には、最終的に文書を書き上げ、利害関係者の調整を行っているのは、霞が関の皆さんです。そこは、どんなに民間側が雄弁に語っても、結局のところ、最後は官僚の皆さんに相当依存しているのが現状です。一方、危機的なのは、その依存先である霞ヶ関の省庁はリソースが全く足りなくなっているという現状です。それで政策が前になかなか進まないという場面はよく目にします。したがって、民間側でもフリーライドせず、政策形成のコストを一定程度負担して、霞ヶ関の代わりにやれることはやってどんどん全体を前に進めていくということも必要なのではと考えたりします。

飯村: 私も最終的に法案・制度等となると、国会、行政となりますが、その前提で、これを変えて欲しいというニーズがないと進まない側面もありますし、一緒になって考えていくことも重要なのではないかと思います。ガチガチに法律でいうものではない新しい動きなどは、例えばまずは、運用のルールでやってみて共同ルールや自己規制などの方策もありえる分野もあると思います。

藤井: 私も半分以上は霞が関だと思います。「なんとかこの法律がこう変わりませんか?」とお願いしても結局最後に永田町に説明するのは霞が関なので、霞が関が寝っ転がっては進みません。霞が関から「海外はどうなっているの?」と言われたら海外のデータを調査して報告したりもしていきますが、それでも半分位は霞が関が担うことになります。

ただ、霞が関なしでできることもありますが、永田町なしでできたことはありません。最終的には利害調整の問題になりますが、「あそこの議連が…」とか、「野党が…」といった細かい話になったりもします。

一方で我々の仕事ってそんなにカッコイイことやっているのかなとも思います。仕事の1/3位は霞が関から逃げ回っているような仕事です。霞が関から不都合な指摘をされれば、「いやいやそんなことは」と別のデータを提示したりといった火消し作業だったりします。

高橋: 霞が関の人材が非常に有益だという話はこれまでされて来たわけですが、とくに民間で政策企画分野の仕事をやるにあたり、霞が関以外だとどんな人材が必要だったりしますか。

藤井: 永田町をよく知っている人です。「あそこの議員事務所はあのお姉さんがキーマンだ」とか、「あの秘書は偉そうにしているけど、あの秘書には権限はない」などという情報まで、永田町をぐるぐる回って、選挙区事情なども含めてよく知っている人は重要です。

あとは政策のスペシャリストです。コンサル会社だと幅広く政策に関われる人材が重要になりますが、事業会社の場合には、特定の分野の政策に極めて詳しいような政策プロは重要です。例えばそれが厚生労働行政だったりします。あとは、やるかやらないかの選択はありますが、メディアリレーションです。PRなど企業のレピュレーションを上げる仕事もこの分野にとっては非常に重要だったりします。  

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大きい仕事に携わるなら霞が関、自分の関与が大きいのはベンチャー

高橋: では次に「仕事のやりがい」についてはどうでしょうか。飯村さんは総務省でのやりがいと、ヤフーの時のやりがいでは違ったりしますか。

飯村: 国の仕事はすぐに成果が出るものばかりではありません。現在やっている仕事だと、テレワークなどの推進は、働き方が柔軟になるための国民運動を呼びかけたりしています。民間の皆さんから、「国がそういう声がけをしてくれると社内も回しやすい」といった話を聞くとやりがいに感じたりします。

藤井: 仕事のやりがいですか、GR、パブリックアフェアーズという新しい分野を創り出しているというのが一番のやりがいだと思っています。「官民データ利活用法案が通りました」、「条例が通った」といった個別の政策的な成果に対しても、「あぁ一つ仕事が終わった」とは思いますが、官と民と政との関係が変わりつつある中で、霞が関や永田町との新たな関係を創っていくということ自体が私のやりがいです。

もちろん、個別の政策で何かを実現したというのを面白いという人もいると思います。例えば、自動運転にパッションを持っている人は、自動運転に関する政策ができたことがやりがいになると思いますが、私は、個別の政策に思い入れがあるというより「メタレベルで政官民の関係をモルモットになって変えていく」ということにやりがいを感じています。

吉川: 大雑把なイメージとしては、霞が関の仕事は、大きな仕事だが自分個人の関与は限られる仕事、一方で、民間企業の仕事は、スケールは小さくても自分の関与や貢献が大きい仕事だと思っています。どちらにも良さがありますが、自身が30代のうちは、自らが動かしていくことのできる仕事に就きたいと思い、民間に移りました。今は、民間側の政策形成という新しい仕事を創っていっているなという実感があり、非常に楽しく仕事ができています。新しい領域を創っていく、そのプロセス自体が面白い。メルカリはそういう職場です。

藤井: さらに言えば、今の仕事は、霞が関の人より最先端の情報を握っていたりします。Googleの奥の院で何を考えているかを自分が一番早く知っているとか、世界で一番最初に何か新しい政策を仕掛けているということも面白かったりします。

 

政策企画周辺に関わる皆さんが集まれる場を我々が創って行きたい

高橋: そろそろ予定の時間になりました。最後にお三方それぞれ一言ずつ、これだけは言っておきたいということを仰っていただければと思います。

藤井: 政策渉外に優秀な霞が関の人材の皆さんが来てくれればと思います。身分保障のない漂流する人生にはなりますが、それが面白いと思えて、自分がモルモットとしてそれを実践して行きたいと思う人には、是非この分野に来てもらいたいと思います。官民交流が未整備な現状の中で、何からやっていくかを考えています。GRは現在はもてはやされていますが、この状況が定年退職まで続くかは私も分かりません。でも自分がモルモットになって新しいガバナンスを創っていきたいと思います。

飯村: 世の中は凄いスピードで変わっています。民間事業者の方々に最先端のことを教えてもらいながら、人事交流などの仕組みも出来てきてますし、普段から意見交流をやっていきたいと思っていますので、是非、意見交換に来てください。

高橋: 総務省に行って「飯村さん!」と呼べば話ができるそうですから、是非、皆さんも総務省に行ってみましょう。

吉川: メルカリ政策企画では継続的にこのような企画を行っていきたいと思っています。官民双方で政策に携わっている皆さんが出会う場があまりないのが現状です。こうした政策周辺にいる皆さんが集まれ、何かしらを持ち帰ってもらえる場を、この領域でビジネスする我々が創っていければと思っています。次回以降も是非ご参加いただければと思います。

高橋: では皆さん、今日ご登壇いただいたお三方に、もう一度に盛大な拍手をいただければと思います。次回は六本木ヒルズになるかもしれませんが、その際も是非、来てください。ありがとうございました。

(高橋 亮平)

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【登壇者】

藤井 宏一郎 (マカイラ株式会社 / CEO) 多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授。テクノロジー産業や非営利セクターを中心とした公共戦略コミュニケーションの専門家として、地域内コミュニケーションから国際関係まで広くカバーする。科学技術庁・文化庁・文部科学省にて国際政策を中心に従事した後、PR 会社フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社にて企業や非営利団体のための政策提言・広報活動を行った。その後、Google 株式会社執行役員兼公共政策部長として同社の日本国内におけるインターネットをめぐる公共政策の提言・支援活動や東日本大震災の復興支援活動などを率いた。東京大学法学部卒、ノースウェスタン大学ケロッグ経営学院卒 MBA(マーケティング及び公共非営利組織運営専攻)。PHP総研コンサルティングフェロー。国際協力団体・一般社団法人ボランティアプラットフォーム顧問。NPO法人情報通信政策フォーラム(ICPF)理事。日本 PR 協会認定 PR プランナー。

飯村 由香理(総務省 / 情報流通高度化推進室長) 1999年郵政省入省 2016年人事交流でヤフー株式会社へ出向、2018年7月より現職。 ※本記事の飯村氏のご発言は個人的見解であり総務省の見解ではありません。

吉川 徳明 (株式会社メルカリ / 社長室政策企画マネージャー) 2006年、経済産業省入省。商務情報政策局でIT政策、日本銀行(出向)で株式市場の調査・分析、内閣官房でTPP交渉などに従事。2014年からヤフー株式会社に入社、政策企画部門で、国会議員、省庁(警察庁、総務省、金融庁等)、NGO等との折衝や業界横断の自主規制の策定に従事、2018年4月、政策企画参事としてメルペイに参画、同8月に現職。東京大学大学院経済学研究科修了。

高橋 亮平(株式会社メルカリ / 社長室政策企画参事) 一般社団法人日本政治教育センター代表理事、NPO法人Rights代表理事。中央大学特任准教授、松戸市政策担当官・審議監・政策推進研究室長、千葉市アドバイザー、株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て、2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」や米国務省IVプログラムに選出。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」などメディア出演多数。18歳選挙権実現の第一人者、世代間格差問題の提言者。