メルカリで「リコマース総研」を創った想いを聞いてみた!

メルカリでは、2023年6月に​リコマースに関わる国内外のトレンドや市場動向、消費者の消費行動の変化を研究し、社会・経済・生活など様々な視点からリコマース市場が与える影響を探求する研究機関として「リコマース総合研究所(以下、リコマース総研)」を立ち上げました。​リコマース市場が循環型経済の実現に向けて果たす役割に注目し、生活者の意識や行動の変化はもちろん、「あらゆる人の可能性を広げる」ために、新たな視点を見出すために研究を行っています。

今回は、「リコマース総研」での発信を続けるメルカリRecommerce Div/ Communication Specialistの志和 あかねに語ってもらいました。

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メルカリ政策企画 佐々木 愛(以下、佐々木)> 「リコマース総研」ができてちょうど一年が経ちますが、あらためて「リコマース総研」を立ち上げた背景や目的を教えていただけますか? 

メルカリRecommerce Div/ Communication Specialist 志和 あかね(以下、志和)> 3~4年くらい前から海外ではアパレルメーカーを中心にメーカー自ら「お客様に販売したものを買い戻してリユース品として売る」という自社リセールの流れがではじめてきました。こうした取り組みは、「サステナビリティ」や「循環型経済」への関心が高まるなかで出てきたトレンドになります。一方で、国内だとまだまだこうした事例は少なく、「リコマース」について関連するデータや知見をまとめて発信してる業界団体のようなものはありませんでした。そこで、今後日本でも必ず訪れる「リコマース」の潮流に向けて、リユースや二次流通の拡大という面でもメルカリと繋がりがあるので、単なる自社の利益だけではなく、リユースやリセールを考えている人たち全体に役に立つ発信の場を作っていきたいとの思いで立ち上げました。 

佐々木> 確かに日本はまだまだ海外ほど「リコマース」が浸透していないですよね。「メルカリ」などができたことで、10年前や20年前よりはだいぶリユースが浸透してきていますが、 それでもまだ興味がある人や知っている人にしか身近になっておらず、広く全体的に浸透していない訳ではように感じますね。 

志和> 欧州などでは、「環境問題によって自分たちの生活があと何十年後かに脅かされる」という恐怖心から、消費者によるサステナビリティな動きが高まっています。また、政府が法令によって企業が作れるモノの量を制限したり、破棄することを規制したりと企業側への働きかけも行っています。そのような環境もあり「新しいビジネスモデルとしての自社リセールを」という流が生まれてきいます。日本においては、まだ実感として、「環境が自分たちの生活を脅かす」といった危機感までにはいたっていません。

佐々木> あかねさんが思い描いている「リコマースが実現した世界」に少しずつではありますが近づいている部分もあるのではないかと思うのですが、どこまで到達できて、どこが次の課題になるのでしょうか。

志和> 「リコマース総研」の前、2019年に「メルカリ総研」を立ち上げているのですが、立ち上げ当時、一次流通の方たちからは「「メルカリ」は新品の購入を代替している」と悪い印象を持たれていました。本当にリユース品は新品を代替しているのかを調べるため、マーケティングや経済学などの専門家に協力していただき、様々なデータを調査しました。調査の結果、一次流通と二次流通はむしろ補完関係にあるということがわかり、このファクトを発信し続けました。そういったプロセスもあってか、今回、リコマースで多様な企業さんに二次流通との連携の可能性について意見交換を行うと、ポジティブな反応が多く、大きな変化を感じています。

二次流通で自分のブランドが人気ということは、消費者から価値を置かれているブランドだという風にブランドからとらえてもらえるようになってきており、二次流通で自社の製品がどれぐらい流通しているかを気にしているブランドさんもいらっしゃいます。 

二次流通と連携を築きたいというメーカーさんは多いとは言えませんが、関心を寄せてくださるメーカーさんがいらっしゃるというのは、道半ばではありますが、大きな変化です。

佐々木> ハイブランドも含めて、二次流通がブランド化していくみたいな世界観が作れるといいですね。データを含めて発信することで世論を巻き込んでいくこともそうですが、こうした「リコマース総研」の発信は、すごい大事だなとあらためて感じました。

「リコマース総研」の記事についてもお聞かせください。立ち上げた頃に、「【2023年6月版】国内リコマース業界のカオスマップを作ってみた」という記事がありました。

個人的にこのカオスマップの記事がすごく面白いなと思いました。

志和> このカオスマップを作ったのは、リユースにはリユースの市場ができていますし、シェアエコやサブスク、配送もそれぞれシェアを持って市場ができています。各市場ができている中で、こうした二次流通全体に関わる企業を広義の意味での「リコマース」のプレイヤーとしてまとめることで、「新たな業界」として提示したかったんですよね。 

現状にあるサービスや物、知識など関連しそうなものを1つにまとめることで、「こんなに市場規模があるんだ」と気づいてもらい、「もっと注力していきたいよね」などといったことにつながるような、未来予想図ではないですが、「リコマース」という未来が共有できるきっかけになればと思って記事をつくりました。

佐々木> この記事を見たときに、それぞれのプレイヤーのつながりが一目でわかるマップですよね。その他にも多くの記事を書かれていますが、特に紹介したい記事はありますか?

志和> 私の中では意外だったのですが、「EUで売れ残った服や靴が廃棄できなくなる!?〜EUの規制内容解説 & 日本にも及ぼす今後の影響とは〜」という記事がよく読まれました。

ちょうどEUでの規制に関するニュースが出た直後ということもあり、海外の法令を解説した記事がまだそこまで多くない中で、こういう発信をすることニーズがあると感じました。

佐々木> なるほど。では、次にあかねさん個人として、むしろこういう記事を多くの方に読んでもらいたいという記事も紹介してもらえますか。 

志和> もっと読まれて欲しかったと思ってるのは、「アパレルや家電メーカーは自社リコマースの必要性を感じている!?ニーズや課題を深ぼってみた」という記事です。

佐々木> 特にどのあたりが知ってもらいたいポイントになりますか。

志和> 企業側にも回収ニーズはあるのですが、在庫を集める手段が難しく「経済合理性が見出せるスキームが作れてない」というところが皆さん課題に感じているところになります。

回収ボックスを店舗に置いている大手アパレルメーカーさんは、回収ボックスに入れられた衣類は再販できるクオリティのものが少ないという課題を持っています。また、自社で回収・リセールを行っているアパレルメーカーさんでは、本当はもっと回収できれば、事業としてアクセルを踏むことができるのに、回収枚数が少ないという課題があることを伺いました。共通するのは「商品を集める」ということに各社苦労されているところです。一方で、メルカリには売れていないものも含めて多くの在庫があります。ここは足りてないけど、ここは余ってるみたいなマッチングができれば、さらにいろんな可能性があるのではないでしょうか。この記事には実はそんな思いも込めました。

佐々木> そういった企業側からのウォントが「見える化」されたり、リセールする商品をメルカリで集めてまとめて送ることなどができると、可能性は広がりそうですね。

志和> そうですね。アパレル企業さんやブランドさんなど皆さん何かしら服を循環させることの必要性は感じていますし、ある程度の課題も見えてきています。ただ、その解決策が見出せていないところに「解決策があるよ!」と示せるといいなと思っています。今までの商品回収というとESG的な「企業のブランディングのためにやるしかない」といった部分が強かったと思いますが、「リコマース」によって「環境負荷の軽減と経済合理性が見出せるビジネスモデル」というのを確立したいと思っています。

佐々木> 「リコマース総研」では色んな方に取材をされていますが、あかねさんがめざす世界の実現に向けて、ヒントになるようなことはありましたか?

志和> 立場は違えど、皆さん同じようなことを考えられているという印象を受けました。例えば、編集者/ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓さんとサーキュラーエコノミー研究家の安居昭博さんの対談と、別で経済産業省の資源循環経済課長 田中将吾さんにも取材したのですが、2つの取材で共通していたのは、「小さく始める、小さく回す、その数を増やしていく」という点です。

また最近の取材では、二次流通における消費者マーケティングの専門家である慶應義塾大学商学部教授の山本晶先生の話と、メルカリの取締役 Presidentである小泉文明さんとサステナブルファッションの考え方を広げるため、ファッションの生産背景に関する情報発信や、官民連携での課題解決に向けた取り組みを行っている鎌田安里紗さんの対談でも共通していることがありました。「消費者がワクワクするようなデザインを生むことが大事」、「いくら環境にいいんだよと啓蒙しても人は動かないので、行動を起こすような仕組みや、システムを作ることが大事」というような話が共通しており、やるべき事は見えてきているんだなと感じました。

佐々木> なるほど。こうした中で、今後、「リコマース総研」をどうしていきたいといった具体的なビジョンはありますでしょうか。

志和> 「リコマース総研」を1年間やってみて、鎌田さんや山本先生、田中課長、リユース経済新聞編集長の瀬川淳司さんなど、多種多様なスペシャリストの方々から話を伺える接点になると実感しています。「リコマース総研」で得たご縁を、記事だけではなく、さまざまなコンテンツでコラボしていくことで、多岐にわたるステークホルダーの方々にリコマースに関する知見を得ていただいたり、リコマースの普及につなげていただいたりしたいです。 

また、「リコマース総研」は、もともとリコマースを専門的に発信してる企業や団体、メディアがなかったところから始めているため、リコマースが徐々に世の中に浸透していく際に、「リコマース総研のデータを見てみよう」と思っていただいたりリコマースのシンクタンク的な立場に「リコマース総研」がなることをめざしていきたいです。 

佐々木> リコマースを幅広く浸透させていくためには、国や省庁などとの連携も必要になってきますよね。

志和> 省庁などが政策などの座組を作って国民に何かを浸透させるということがありますが、設計段階で消費者に受け入れられるかわからないということがあると思います。そうした際に消費者とタッチポイントを持っている民間企業の知恵が必要な機会もあると思いますし、消費者が動きやすいデザインを作ることも大事だと思います。 

例えば、クールビズのように国民のニーズにマッチした施策や、レジ袋有料化のように「環境のために」という啓蒙ではなく、仕組みとしてエコバッグを普及させるモデルを作ることが大事だったと思います。さらに、政府の施策を国民全体に広げてもらうためには、クールビズファッションを推し出す百貨店があったり、持ちたくなるようなエコバッグをデザインする企業があったりするなど、官民の連携が必要不可欠だったと思います。リコマースにおいても、こういった官民連携のつなぎ役に「リコマース総研」やメルカリがなれるといいなと思っています。

日本のお国柄を考えると、バランスも重要ですが、ヨーロッパのようにガチガチに規制していくというよりは、消費者が知らず知らずのうちに動くようなデザインが設計されている方が合っていると思います。もしかしたら日本は政府から助成金が出て支援するという方がいいかもしれません。政府関係者の方などにもこの「リコマース総研」の発信を見ていただき、循環型経済の促進につながることを官民で一緒にできたらと思っています。

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プロフィール

志和 あかね(Akane Shiwa )

大学卒業後、2008年に外国人モデル事務所に入社。マネージャーとしてCMやドラマ・映画の撮影に携わる。 2014年よりPR会社ベクトルに入社し、PR会社プラチナムでは2年間TVプロモーターとして、WBSなどの報道番組から、めざましテレビなどの情報番組を担当。その後、2年半ほどPRコンサルタント・営業としてクライアントと向き合うアカウントマネージャーを担当。2018年2月よりメルカリの広報に従事し主にフリマアプリ「メルカリ」のPRを担当。2019年11月にメルカリ総合研究所を立ち上げる。 2021年10月からはソウゾウPRチームのマネージャーも兼務。2023年4月Recommerce Division立ち上げに伴いCommunication Specialist兼リコマース総研主席研究員に従事。

 

インタビュワー

佐々木 愛(Ai Sasaki)

メルカリ政策企画。ホテル、テーマパークでのステージマネージャー、与党の国会議員秘書、健診クリニックの運営などを多分野での勤務を経て、2018年11月にメルカリへ入社。出品商品の取り扱いに関するルール整備、チーム内業務のサポートやチームビルディングなどを担当。趣味は週3回のテニスと油絵。


写真:政策企画 天野 宏(Hiroshi Amano)