メルカリUSのPublic Policyが果たす役割(後編)

メルカリのアメリカ法人(以下、「メルカリUS」)のPublic Policyチーム(以下、「PPチーム」)DirectorであるTim Careyへのインタビュー記事の後編です。

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Q> アメリカでは日本に比べてロビイング活動が活発な印象があります。特に、大手IT企業やエネルギー企業などは精力的に活動されているのでしょうか。

Mercari, Inc.(US)Public Policy Director Tim Carey(以下、Tim)> そうですね。メルカリは国内の企業と比べるとまだ比較的小さなマーケットプレイス企業なので、ロビイングを大々的にやっている企業の影響力の大きさというものは感じます。実際、大きなところではPPチームの中でも、連邦政府に対応する部門と州政府に対応する部門に分けていたり、政府向けと議会向けに分けていたりします。

そこで、メルカリはいくつかの消費財マーケットプレイス企業やマッチング企業と連携しマーケットプレイス連合を結成しました。法律や制度は各州によって異なるので全ての範囲を数人のPPでカバーすることは難しい場合があります。このことはメルカリだけでなく、成長途上の企業やPPの数が限られている企業も同じように感じています。そこで、同じ思いを持つ企業で連携し情報を共有したり、ともに法改正を求めていくことにしたのです。現在も、その連合を通じて議会に法改正を求めています。

特に電子商取引分野については、政府も関心を高めており、企業との意見交換を望んでいます。

Q> メルカリJPも2018年に経団連に入会したり、リユース業協会に加盟したりと他の企業と連携しています。一個人や一企業では進めることができなくとも他のチームや企業と連携することで達成できることもあると思います。

Tim> そうですね、チーム内の連携で言うと、私は今、Head of Public Policyと言う立場ですが、PPチーム以外にも、リーガルチームやコンプライアンスチームとよく連携しています。政府と法改正について議論するには、法的視点やコンプライアンスへの配慮が不可欠だからです。

Q> メルカリのビジネスに影響する規制とは具体的にどのようなものがありますか。

Tim> そうですね。例えば、メルカリUSの本社があるカリフォルニア州を例に考えてみます。カリフォルニア州はアメリカの中でもイリノイ州やニューヨーク州と並んで電子商取引に強い関心を持っている州ですが、カリフォルニア州法ではメルカリユーザーにはリンクを持たなければならないという、他の州法より厳しい規制が設けられています。これは盗難品などを報告するために義務付けられているのですが、この規定のおかげでメルカリUSは全米向けのウェブサイトにこのリンクを貼らなければなりません。カリフォルニア州法以外では義務付けられていないのにです。このように、一つの州の法律によってビジネス全体が影響を受けることもあるのです。

Q> アメリカでは今年の11月に大統領選挙を控えていますが、どのような変化が予想されますでしょうか。

Tim> 興味深いのは、アメリカでは選挙の年になると政策決定が保留される傾向にあることです。政治家は再選を目指して選挙活動に力を入れるようになるからです。そのため、私は今年は政策決定がそれほど大きく動く年にはならないだろうと予想しています。そのため、この期間には通常、これまでのロビイング活動を振り返り、そこでの反省を生かしつつ、翌年を見越した新たなアジェンダ設定に取り掛かることが多いです。

Tim> ある政策について、社内や他のマーケットプレイス企業と議論をしたところ、これまでの私たちは非常に防御的だったのではないかとの結論に至りました。現在、Eコマース業者とアプリの利用者の双方に対して、偽造品や盗難品の出品を削減するために、製品をより精査することを求める政策提案があります。これは、オンライン事業者にもアプリの利用者にもかなりの負担を課すものです。私たちは、もっと前向きに、どうすればアメリカで中古品販売や再利用が促進され、サスティナビリティを実現できるのか、さらにはどのようにして追加的な収入を得て経済全体を活性化させることができるのを立案担当者と話しあう必要があると思っています。この他、例えば、EUでは昨年プラスチック規制案が発表されたり、デジタルサービス法を改正して規制を強めていますが、国外の動向にも注目しています。

Q> 最後に、メルカリJPとの連携についてはいかがでしょうか。

Tim> メルカリJPとは、毎月オンラインで定例ミーティングをする機会を設けています。ミーティングでは、メルカリの事業内容にとどまらず、世界の政治社会経済問題について、両国でどのように受け止められているのかやお互いどのように考えているのかをざっくばらんに議論しています。メルカリJPは、当然ですが日本で議論されていることや広範にグループで議論されていることをより正確に理解しています。そのため、毎回メルカリJPからは会社がどの方向に進もうとしているのかを解像度の高い形で提示してもらっており、非常に有意義だと感じています。

Q> 私たちは、日本国内だけでなく世界の社会経済状況に目を向けていますが、Timとのミーティングを通じてアメリカの政治状況をより理解できますし、日本のニュースがアメリカでどのように受け止められているかを知ることができています。

Tim、今日はありがとうございました。これからもよろしくお願いします!