政策企画チームでメルカリの米国渉外担当部門責任者であるティム・キャリーとのオープンドアを実施

11月5日、メルカリUSの社員が六本木のメルカリオフィスを訪れ研修を実施しました。貴重な機会であることから、これまでオンラインでのやり取りが多かったメルカリの米国渉外担当部門責任者であるMercari, Inc.(US)Public Policy DirectorのTim Carey(以下、ティム・キャリー)による社内オープンドアを企画しました。

メルカリUSの政策戦略について、米国内外のチームとの連携、Global Business AllianceやTechNetといった業界団体との外部関係構築、登録ロビイストとしての役割を通じた政策立案者への情報のインプットなどの説明のほか、業界における主な成功事例として、W9報告の基準値を600ドルから20,000ドル、200件の取引に引き上げ、メルカリUSにとってもお客様にとってもコンプライアンスの負担を大幅に軽減したことや、INFORM Actの導入などが紹介されました。一方、課題としては、複雑な米国の規制の枠組みへの対応や、中古品販売の制限を政策立案者に求める声があることなどを挙げていました。

ティム・キャリーは、2021年にメルカリに入社し、ワシントンD.C.でメルカリの米国渉外担当部門を担っています。法律とビジネスの学位を取得しており、米国議会のスタッフを10年間務めた後、様々なビジネスのロビイストやコンサルタントとしての仕事をしてきました。ティム・キャリーについては以前、アメリカでの政策企画業務についてインタビューした「merpoli(メルポリ)」記事もあるので、併せてご覧ください。

 

政府関係戦略とアドボカシー
公共政策の改善のための課題と機会を理解するために、米国と日本国内のチームとの協力体制について話しました。その取り組みには、既存のデータとコミュニケーション能力を活用して政策提言のインフラを開発することや、影響力を最大化するために利益団体や業界団体などと外部関係を構築することがあります。米国では、選出された公職者や政策立案者にメルカリのビジネスの仕組みを伝え、新しい法律が適切に制定されるよう支援するいわば教育的な役割も持っていると話していました。

 

ロビー活動のインフラと評判
メルカリUSでの登録ロビイストとしては、活動内容や関連支出を政府に開示することが義務付けられているとのことでした。ロビイストについては米国で評判がよくないということを、国会議員などよりも下位に位置付けられた職業倫理と正直さに関する世論調査を引用して紹介していました。一方で、ロビー活動は大きく誤解されており、本質的に米国憲法修正第1条に定められた権利である「苦情の是正を政府に請願すること」として位置付けられたものだと述べていました。

 

政府関係インフラと業界団体
メルカリUSの政府関係インフラには、ロビイストとしての登録と、リーチを拡大し、米国政府当局者との費用対効果の高いカバレッジを提供するためのワシントンD.C.の外部民間コンサルタントの起用も含まれるとのことでした。彼らの仕事の重要な要素は、業界団体への参加であり、具体的には外国直接投資を提唱するGlobal Business Allianceと、米国最大のテクノロジーおよびイノベーション業界団体であるTechNetを挙げていました。メルカリUSはまた、Protect America's Small Sellers (PASS)連合など、マーケットプレイスに焦点を当てた課題別連合にも参加しているそうです。

 

米国の複雑な規制枠組み
連邦政府(議会と大統領、連邦規制当局)や50の州政府、州の規制当局、地方自治体を含む米国の複雑な政府の枠組みを概説し、これらすべてが管轄権を共有しているとのことでした。ワシントンD.C.に拠点を置く一人の人間だけでは困難なため、州や地方政府の動向を把握し、影響を与えるためには業界団体との連携のために不可欠であると話していました。彼らの仕事は、法律が裁判所の問題になる前に、立法および規制の側面で法律に影響を与えることだと述べていました。

 

2025年の公共政策の優先事項と成果
一つの例として、さまざまな議論の結果、W9報告の基準値を600ドルから20,000ドルおよび200件の取引に引き上げられたことをあげてくれました。これは法改正により、恒久的なルールとして適用されることになった事例で、この変更により、メルカリが予想していたコンプライアンスの負担よりも対象件数が大幅に削減され、業務負荷およびお客様の手間を最小限に抑えることができたとのことでした。もう一つの優先事項は、お客様によるオンライン販売を困難にすることなく、オンラインでの中古品販売を規制し、大規模な偽造品を標的とする法律であるINFORM法の施行だったと言います。

 

市場規制の課題と執行
米国では主要ブランド所有者や製造業者からの絶え間ない働きかけがあるとも話していました。彼らは、偽造品について出品者ではなく「メルカリ」のようなプラットフォームに法的責任を課す可能性のある、中古品販売をより困難にする新しい法律を求めているようです。メルカリは、INFORM Actの順守努力など、既存のプログラムが機能していることを成功裏に示し、より制限的な法律の必要性を軽減したとのことでした。INFORM Actの執行は、連邦規制当局が他社プラットフォームに違反に対する巨額の罰金を課したことで確認され、すべてのオンラインマーケットプレイスに順守を徹底するよう改めて促すことになりました。

 

今後の展望:越境、オンライン安全、リコマース
越境取引の環境は、800ドル未満の輸入品に対するデミニマス関税免除の終了と、自国産業保護を重視する米国の政策動向の姿勢により困難になっているそうです。オンラインの安全は引き続き注目の的であり、データプライバシーや子供の安全が含まれ、Kids Online Safety ActやChildren's Online Privacy Protection Act 2.0などの提案されている法案は、その作成方法や制定方法によっては意図しない結果をもたらす可能性があるため、業務に過度な負担をかけないよう細心の注意を払う必要があると言います。メルカリは、二次流通の事業者であることのメリットを積極的に伝えて、個人のカジュアルな出品者の経済的利益に焦点を当て、持続可能性とリコマースの肯定的なメッセージを強調しているとのことでした。

 

現在の米国の政策状況と今後のイニシアチブ
米国の政策をめぐっては意見が分かれていますが、世論調査では、アメリカ人は一般に中国の経済力拡大を懸念し、子供を守りたい、また税金への抵抗感が強いという状況だそうです。移民やビザの問題への支援を得るために、日本大使館や領事館などの日本のカウンターパートとの関係構築に引き続き注力しているとのことです。

 

公共政策への影響を与える上での最大の障害
公共政策に影響を与える上での最大の障害として、大規模な従業員基盤や多額の政治献金能力を持つ企業と比較して、米国におけるメルカリの存在感は日本ほどまだ大きくないことを挙げていました。これを克服するために、「メルカリ」にはすべての州、都市、郡に利用するお客様がいることを強調し、出品者が政策立案者とつながるのを助けるアドボカシー・ツールを開発することを目指しているそうです。

(編集後記)

今回のオープンドアの実施にあたっては、テスト的にGoogle meetでの同時翻訳で字幕のように日本語を表示しながら行いましたが、非常にスムーズに実施することができました。

こうしてリアルでもコミュニケーションが取れたので、今後はさらに情報共有や連携も深めていければと思います。

高橋 亮平