
今回、メルカリが警察庁から感謝状を授与されたそうですが、これはどのような点について感謝されたんでしょうか?
メルカリ政策企画 兼 ACO(anti crime office)チーム 田中 奈緒美(以下、田中)> 端的に言ってしまうと、空薬莢(からやっきょう)を出品禁止にしたことへの感謝です。 それがなぜ感謝状をいただくほどだったのかというと、メルカリの対応が、警察側の想定以上の対応だったというところが大きいと考えています。
なるほど。では順番にお聞きしていきたいのですが、まず空薬莢とはそもそもどのようなものなのでしょうか?
田中> 空薬莢というのは、まず銃で撃つ弾丸がありますよね。銃を撃った後、火薬が使われ弾は飛び出しますが、その後に残るケースの部分、これを空薬莢と言います。この空薬莢は、マニアの方々などにはコレクションアイテムとして一定程度人気があります。また、海外の射撃場で自分が撃った銃の空薬莢を記念に取っておきたいと、アクセサリーに加工したりするケースもあります。そうした記念品やコレクターアイテムとして、「メルカリ」でも空薬莢は取引をされていました。
空薬莢自体は法律的には問題ないという認識なんですけれども、その認識で合ってますでしょうか?
田中> そうですね、火薬などはもう含まれておらず使用された後のものということであれば、所持等することは銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)違反には基本的には該当しません。
一方で、違法性はないのに、今回これを禁止出品物にしたというのは、どのような判断があったのでしょうか。
田中> これがまさに今回、警察から情報提供をいただいた部分です。メルカリとしては当然、法的に違反していないもので、コレクター品などとして需要と供給があるのであれば、マーケットプレイスとして使っていただきたいという気持ちで取引いただいていました。しかし、警察庁曰く、実は空薬莢を使って手製で弾丸を作れてしまうとのことで、犯罪を助長することになるので詳しくはお話しできないのですが、これについて丁寧な説明をいただきました。そこでメルカリとして空薬莢の危険性についてしっかりと認識できたという次第です。
警察の情報提供で、理解と考えが進んだという印象を受けたのですが、こういった形で警察から情報提供や意見交換がされるということは、メルカリの中ではよくあることなのでしょうか。
田中> 私は、犯罪対策室に属しているので、警察とやり取りすることは比較的あります。そこでのコミュニケーションの中で、ざっくばらんにいろんな話が出てくることはあります。ただ、やはり直接お会いした方が率直なお話がきけるなという印象がありますし、継続してコミュニケーションを取って関係を構築することも大事だと思っています。
今回のこの発表のプレスリリースを見せていただいたんですが、警察の方のコメントに「ローン・オフェンダー」という言葉がありました。この「ローン・オフェンダー」というのはどのようなものなのでしょうか。
田中> これは、公安の用語なのですが、今までテロというと、何らかの思想によって結びついた集団が起こすものというイメージがあったかと思います。しかし最近は、インターネットで様々な考えに触れることができるようになり、組織に属していないのに、ネットを通じてどんどん思想が過激化していった上で、ネットでの情報や生成AIを悪用して自分で爆弾や銃などを作り、テロを起こすというような事案が増えてきています。昔は「ローン・ウルフ」と呼んでいた時期もあったのですが、逆に憧れを抱かせるおそれのある名称と捉えられ、最近では「ローン・オフェンダー」と呼ぶようになりました。警察としては、現在はローン・オフェンダーの対策を強化しているとのことです。
先ほどもありましたが、今回は、メルカリと警察が連携を深め、信頼関係を構築してコミュニケーションを取っている中でこういった話が出てきたということで、警察から空薬莢の出品禁止の依頼があったということではなかったという感じなんですね。
田中> 今回は、そもそも犯罪対策室と警察とのやり取りの中で、「実は空薬莢というのはこんなに危ないんですよ」という話をしていただいたというものでした。警察の公安担当というと普段やりとりすることがあまりない遠い存在ではありますが、直接お会いしてお話しできたからこそ、今回の措置に至らなかったのかなと思っており、改めてこういった情報交換や関係構築は大事だと感じました。
「メルカリ」は、やはりプラットフォームであり、我々としては、できるだけ安全安心なプラットフォームとしてお客様に活用していただかなければならないと思っています。一方で、たくさんのお客さまに利用いただくプラットフォームになっていくと、善意のお客さまだけではなく、悪意を持って使う人など、様々な人が出てきてしまいます。メルカリとしても対策や改善策を講じるのですがどんどん新しい手法が出てくる、いたちごっこの様相もあって悩ましいですよね。今後もこうした安心安全を保っていくためには、警察との連携もさらに進めていくことが必要かもしれませんね。
田中> まさにそうした安心安全に使っていただくための様々な施策をメルカリでは進めており、犯罪対策室もその一端を担っています。犯罪対策室では、様々な事件に関しての警察からの問合せに対応しています。もちろん、お客さまの大切な個人情報をむやみに警察に提供しているわけではないですが、事件と関連があり、メルカリが保有している情報を提供することで捜査の役に立つと判断できるものについては回答しています。また、犯罪対策室では、メルカリの様々なサービスで起きた不正事案を調査しているのですが、そうした事案については積極的に警察に相談して捜査を依頼したり、弁護士に対応してもらうなどのアクションを積極的に取っていく方針で進んでいます。こうした対応を行っていけば、大きな犯罪や被害を未然に防ぐことができることもあり、結果として多くのお客さまの安全が守られ、メルカリをもっと安心して使っていただけるようになるのではと考えています。そのためにも、警察庁や都道府県警察とはしっかりと関係を作っていきたいですね。
いい話ですね。一般の人から見ると、「なぜメルカリは転売品を禁止にしないのか」というような指摘をいただくこともありますが、一方で自由に取引できるプラットフォームであることや、多くの方々をエンパワメントしていく市場を提供していくことを大切にしているかと思います。メルカリは、「マーケットプレイスの基本原則」を掲げており、それに基づいて判断していることももっと知ってもらえるといいですよね。ちなみに、今回の出品禁止についてもこの基本原則によって判断をされたのでしょうか。
田中> 今回、警察から情報をいただいたことで、基本原則の「安全であること」という部分に抵触するということが分かったので、出品禁止の措置を取るという判断をしました。その意味でも、まさに基本原則に基づいた意思決定をした事例と言えるかと思います。
初めの感謝状の理由にも戻りますが、警察庁公安課としては、ミーティングをセットした理由は、空薬莢の出品禁止依頼などではなく、犯罪対策室と警察とのやり取りの中で、空薬莢の具体的なお話をいただいたという経緯でした。それを踏まえてメルカリ社内で検討した結果として出品禁止措置に至り、その連絡を警察庁にしましたので、警察としては「確かに空薬莢の話はしたけれども、そんな措置までしてくれるとは」と驚いたわけです。
基本原則についても聞きたいのですが、「マーケットプレイスの基本原則」というのは、そもそもどのようなものなのでしょうか。
田中> 「マーケットプレイスの基本原則」として、「安全であること」「信頼できること」「人道的であること」の3つの原則が位置づけられています。
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「マーケットプレイスの基本原則」で掲げている3つの基本原則 安全であること 自由な取引は、安全に利用できる環境があってはじめて成り立つものです。 そのため、法令に違反する取引を禁止することはもちろん、以下のような取引についても禁止し、取引の当事者及び取引の結果影響を受ける第三者の安全を確保します。
信頼できること マーケットプレイスでは様々なものが取引されています。一つ一つユニークな商品を安心して取引するには、商品や取引に関する正確な情報が提供された上で、誠実に取引される必要があります。そのためメルカリは、以下のような行為を禁止することによって、多くの人に信頼してご利用いただけるマーケットプレイスを構築します。
人道的であること 多様な価値観を持つ人々が参加するマーケットプレイスでは、一人一人の価値観や立場が尊重されることが大切です。また、取引を通じて、人道に反するような行為が助長されることがあってはならないと考えます。 そのため、メルカリでは以下のような取引や行為を禁止します。
是非、詳しくは、「マーケットプレイスの基本原則」をご覧ください。 |
最後になりますが、今回も含め、今後メルカリをより安心安全に使ってもらうために、田中さんが意識されていることなどはありますか。
田中> これまでは、やはり、「自由で多様なマーケットプレイスである」というゴールを目指しつつ、「マーケットプレイスの基本原則」に基づき判断が行われてきました。個人的には、お客さまが不安を覚えられると、そもそも利用していただけなくなってしまうので、自由と多様性を確保しつつも、安心安全なマーケットプレイスを作るためのコストをもっとかけていくことは必要だと思っています。先ほど説明した警察連携や弁護士対応もそうですが、トラブルが起こってからの対応だけではなく、未然にもう少し対応できるようにしていきたいと思っています。また、9月に発表された透明性レポートでは、メルカリが安心安全についてどのように取り組んでいるか詳しくご紹介しているのですが、こういった既に行っている取り組みを丁寧に説明していくことも大事だと思っています。こうしたアクションを真摯に積み重ねていくことで、「メルカリって安心に使える」という印象がだんだんと醸成されていくことを願っています。