6月15日、刑務所の刑務作業で作った製品の販売が、公益財団法人 矯正協会(以下、矯正協会)により「メルカリShops」で開始されました。
矯正協会とその刑務作業について、および今回「メルカリShops」での販売開始によって期待することについて、矯正協会 刑務作業協力事業部の赤星 卓さんに話を伺いました。
Q > 矯正協会とはどんな団体で、普段どのような活動をされているのでしょうか。
矯正協会 赤星 卓(以下赤星)> 矯正協会は、1888年に「大日本監獄協会」として設立されました。その後、改称や事務所の移転を重ね、2013年に矯正協会として公益財団法人に移行し、今年で設立135年になります。矯正協会では、矯正に関する学術の発展と普及啓発を図るとともに、矯正行政の運営に協力し、犯罪や非行の防止に寄与することを目的として、各種事業活動を行っています。今回「メルカリShops」での販売を担当するのは、刑務作業への原材料の提供(事業部作業)を主な活動とする刑務作業協力事業部となります。
Q > そもそも、刑務作業とはどういうものなのでしょうか。
赤星> 日本では、主に懲役刑を課された受刑者は、刑務所において作業に従事しなければなりません。そして、この作業は、自営作業を除き、その大半が民間企業との直接の契約によって実施していますが、それだけで全ての受刑者が行う作業を確保することは困難な状況です。そこで、矯正協会の刑務作業協力事業部が、刑務所に対して作業に必要な原材料を提供し、その不足分の作業を補うことによって、国の刑務作業を支援しています。民間企業との直接契約による作業を提供作業、矯正協会が原材料を提供しているものを事業部作業と言います。
Q > 矯正協会が刑務所作業製品を販売する流れを教えてください。
赤星> まず、刑務作業協力事業部が行う事業部作業は受注作業と見越作業に分かれます。受注作業は、民間企業様等から事業部が発注を受けて、事業部が刑務所に対して原材料を提供し、それを使用して製品が製作されます。その後、完成した製品を発注を受けた民間企業様等に引渡し(販売)をすることになります。一方、見越作業は、製品を刑務所で一般の消費者等に販売することを見越して、事業部が独自に企画した製品について、その原材料を提供するものです。今回、販売させていただく製品はこの見越作業で製作された製品に当たります。この見越作業で製作された製品は「CAPIC」と呼ばれ、常設展示場、矯正展及び即売会で販売しています。特に例年6月初旬頃に東京の科学技術館で開催している全国矯正展というイベントがありますが、これはもっとも大きなイベントになります。2023年は12月9・10日に東京国際フォーラムで行う予定ですのでぜひ足を運んでください。
矯正協会では、こうした形で製品の販売を行っているのですが、製品販売による収益は、受刑者の工賃のほかに、今後の原材料購入資金や事業運営費用、更には犯罪被害者支援にも当てられています。
Q > 実際にどのような製品を製作しているのでしょうか。また、販売の際に気を付けている点はありますか。
赤星 > 刑務所作業製品は、大きく分けて、①木工製品(タンスなど)、②印刷、③洋裁製品(丸獄製品など)、④金属製品、⑤革製品(靴やリュック)、⑥その他の製品に分けられるます。その他の製品の中には「横浜刑務所で作ったパスタ」や「横須賀刑務支所で作っているブルースティック(石鹸)や椎茸、お茶」などもあります。
販売の際には、製品になるまでの過程やクオリティーの説明もしっかりさせていただき、買ってよかったと納得いただけるように心がけています。
Q > 製品は、どのくらいの人数でどのように製作されているのでしょうか。また、どのくらいの商品数を製作されているのかも教えてください。
赤星 > 刑務作業は、全国74の刑事施設(刑務所、少年刑務所及び拘置所)において実施されており、約3万6千人が就業しています(2023年4月末日現在)。その中でも、本会が原材料を提供する事業部作業は、全国61の刑事施設で実施されており、ここ数年はそのうちの4,300人前後が作業に従事しています。製作数については、ブルースティックのように年間何万本という品物から、御神輿のように年間2~3基程度といったように、商品によって様々です。
Q > 刑務所で製作している商品の特徴を教えてください。
赤星 > 刑務所作業製品は、昔から「安くて丈夫」という評判でした。そして、ほしい時に製品が買えました。しかし、最近は、コロナの影響もあり刑務所の工場が停止されていた期間があったため、製品在庫が少なくなっています。そのため、バッグでもBBQコンロでも、「いいな」と思われた製品がありましたら、是非、お手に取ってお買い求めいただければと思います。製品によっては、いいと思っていただいても、その製品と二度と出会えない可能性があるという状況になっています。
Q > 今回、6月15日から「メルカリShops」での刑務所作業製品の販売が開始されたましたが、どのようなことを期待していますか。また販売を決めた理由やきっかけなどもあれば、合わせて教えてください。
赤星 > 刑務所で製作した製品は、これまでも「CAPIC」というブランドで協会本部に併設されている「キャピックショップなかの」をはじめとし、全国の刑務所に併設された常設展示場でも販売をしています。ただ、遠方のお客様の中にはなかなか来店することが難しいとのお声もあったため、2006年9月からは「CAPIC e-shop」を独自に開設し、インターネット販売の促進にも努めています。ただ、まだまだ「CAPIC e-shop」の知名度がそんなに高くはないことから、今回、知名度のあるメルカリさんの力をお借りして、「メルカリShops」で販売することを決めました。
「メルカリShops」の会員の皆様は、「メルカリ」のルールを守って、楽しくショッピングをされていると聞いています。
丹精込めた製品をより多くのお客様にご利用いただけたらと思っています。
Q > 矯正協会は犯罪被害者支援団体への助成事業も行っていますが、この取り組みについても教えてください。
赤星 > 矯正協会は事業部作業の他に、刑務所作業製品の売上額の一部を犯罪被害者団体に寄付する犯罪被害者支援事業も行っています。これは、受刑者の贖罪意識のかん養と、刑務所作業提供事業に対する一般国民の理解の増進を図るとともに、同団体による矯正施設における矯正活動を支援し、犯罪及び非行の防止に寄与することを目的とするものです。
2005年度から2022年度まで犯罪被害者支援団体に対し累計8,000万円の支援を行ってきました。
Q > 最後に、これからの矯正協会の活動について、思いを教えてください。
赤星 > 矯正協会の目的は冒頭でお話をさせていただいたとおりですが、これからもその目的を達成するために、日々努力してまいります。さらに、矯正協会の事業の一部としての刑務作業協力事業部としても、より良い製品を皆様のお手元に届けられるよう国と協力して事業を継続して参ります。
ありがとうございました。
メルカリもこうしてご一緒できることで、今回の「メルカリShops」での販売も新たな社会課題の解決につながればと思っています。
これをきっかけに、引き続きよろしくお願いします。