徳島市長、蒲郡市と西宮市の副市長が登壇し、循環型社会推進に向けての取り組み紹介や、公民連携による可能性について提案(後編)

写真:左から内藤 佐和子 徳島市長、大原 義文 蒲郡市副市長、岩﨑 敏雄 西宮市副市長

6月5日の「環境の日」に行った「SDGs循環型社会推進公民連携フォーラム」で内藤 佐和子 徳島市長、大原 義文 蒲郡市副市長、岩﨑 敏雄 西宮市副市長に登壇いただだいたのセッション3「最新事例から考える公民連携での循環型社会推進の可能性」の後編です。

前編も合わせてお読みください。

 

市民をどう巻き込んでいくかが重要

メルカリ 高橋 亮平(以下、高橋)> 二問目の質問が、「各自治体が現在向き合っている課題について」です。各自治体でSDGsや循環型社会の推進で取り組んでいる中で向き合っている課題があればお教えください。

内藤 佐和子 徳島市長(以下、内藤(徳島市))> 各自治体それぞれ色々な取り組みをしていると思いますが、やはりどのように市民を巻き込んでいくか、どのように市民に楽しんでやっていただくかということがすごく大事だと思っており、そこが一番の課題かなと思います。

燃やせるごみの名称変更だけでも、SNSでバズることによって、徳島市民だけでなく、全国各地の人たちから問い合わせがありました。小学校での「メルカリShops」で販売する授業を紹介してもらいましたが、徳島市では、リアルな場で小学生や中高生、大学生、市役所の職員もボランティアで関わることによって、いろんな人が関わってリサイクルや循環型社会を実現していくということもやっています。

他にも、例えば微生物が分解してくれるようなキエーロという生ごみ処理の箱を障害者施設の人に作ってもらって市民に配布し、生ごみを循環する仕組みをつくったり、今朝もマーケットエンタープライズという企業との連携協定を結んできたんですが、粗大ごみをリサイクルするようなおいくらというサービスを使ったり、ジモティーもそうですが、色々な企業と連携していくことで、市民に多様なチャンネルで伝え、色々なやり方があるということを市として広報しています。市民を巻き込んで一緒に楽しみ、「キエーロを使ってどれぐらい生ごみが減りましたか?」みたいなことをみんなで話していくこと、SNSでグループを作って共有したり、キエーロの箱をみんなで作っていくワークショップを市民が勝手にやり始めてくれたり、そういう市民も巻き込みながらの施策を浸透することで転換していくことを心がけています。

写真:大原 義文 蒲郡市副市長

大原 義文 蒲郡市副市長(以下、大原(蒲郡市))> 蒲郡市では、SDGs循環型社会を実現していく手法ということで、蒲郡市サーキュラーエコノミー循環経済を地域全体で進めています。推進していく中で大きく感じていることは、課題が複雑であり、行政だけではとても乗り越えられないということです。また、行政の区域内だけでも解決できないことが多々あります。

サーキュラーエコノミー推進においても、天然資源を採集加工して製品を製造し、流通、販売をしていかなければなりません。商品とするためのいわゆる動脈産業や、生産消費活動から排出され排出廃棄される不要品を回収して処分などをする静脈産業との連携も重要です。今までのサプライチェーンの枠を超えた連携も必要になってくると思っています。

蒲郡市の具体的な一つの例を紹介すると、動脈企業である市内のカーテンメーカーがこれまで捨てていた梱包用資材を静脈企業である同じ市内のプラスチックのリサイクル企業とつながったことで、これまで有料で放棄していたものを有償で買い取ってもらい、その有償で買い取ってもらったものが、さらに農業用や土木建築用シートとして販売されるということができるようになりました。既存のシステムや方法だけでなく、頭から循環させるということを念頭に置いて考えていくことで、設計段階から廃棄できない商品を作ることが、同じ市内の企業の連携でも一つの事例ができたというのは大きな財産だと思っています。

岩﨑 敏雄 西宮市副市長(以下、岩﨑(西宮市))> ごみ行政というのは本当に市民にとって身近な行政でなんですが、一方で、すごく広報やPRが難しく、伝わりにくい分野でもあると思ってきました。ところが、昨年10月に「メルカリShops」での販売を西日本で初めて実施したことが地元テレビ局はもちろん、全国放送のテレビ局にも多く取り上げられました。ごみ行政は市民からご指摘をいただくことの方が多いのですが、すごく反響が大きく、「西宮市も民間企業とこんな取り組みを行ってくれてありがとう」など、すごく市民の方に評価してもらいました。

また、「メルカリ教室」も実施したのですが、これもそのテレビの影響もあってかすぐに応募がいっぱいになり、追加でできないかというお声もいただきました。こうした取り組みを一過性のブームに終わらせずに、きっちりと市民の方にリユース文化を定着させていくというのが次のステップだと考えています。

 

職員や役所の意識改革や、公民がボーダレスで進めていくこと

高橋> 公民連携の可能性など、いただいたお話の中にも色々とヒントがあったかと思いますが、三つ目の質問は、今まで以上にSDGsや循環型社会の実現に向けて推進していきたいことなどについて、お聞きします。

内藤(徳島市)> 徳島市としては、環境啓発について市民のタッチングポイントを増やしていきたいと思っています。それが先ほどからお話に出ている公民連携という部分であったり、教育という部分だったりすると思っており、例えば、ジップロックや歯ブラシを回収してある団体に送るとSDGsの本がもらえるという取り組みがあります。市内の普通のNPOやお母さんたちの団体が市役所でジップロックとか歯ブラシを回収しています。市役所も市民と一緒に取り組み、子どもたちに教育っていう形で最後に還元できるようにできればいいんじゃないかなと思っています。

また、セブンイレブンとも連携協定を締結し、マッチングポイントとして活用し、ペットボトルについても水平リサイクルできるということをきちんと市民にも啓発していたりもします。こうしたマッチングポイントが多い企業さんとできるだけ協業し、それをメディアを使って発信していきたいと思っています。

ごみ袋の名称を変えるだけでもあれだけ関心を持ってもらえたので、やっぱりバズるような施策を考えながら、どうすれば若い人に認識してもらえるか啓発できるか関心がない層に関心を持ってもらえるかっていうことを考えながら、たくさんの施策を打ち続けるっていうことをこれからもやっていきたいなと思っています。

写真:内藤 佐和子 徳島市長

高橋> 会場やオンラインで話を聞いている自治体職員の方々からすると、市長からお話のあった「タッチポイントの多い企業とできるだけ連携した方がいい」という話や「バズる施策をやった方がいい」ということには、ハードルを感じている方もいらっしゃるかと思いますが、徳島市では、どのようにして市役所がこうした発想に転換できたのでしょうか。きっかけになったことや、そのように役所を変えていかなければならないとしたら何か意識されていることがあるのかお教えいただけますか。

内藤(徳島市)> 例えば、さっきの燃やせるごみの話ですが、「燃やすしかないごみ」という名称にしてる自治体は、徳島市の前にも何自治体もあります。こういうことやれば面白いから、この「燃やすしかないごみ」をうちもやろうよ言ったところ、職員が自分たちでも考えてくれるようになり、「市長、こういう長い名前はどうですか面白くないですか」と提案してくれるようになりました。

決定権がある部長や副市長などがこういうことに取り組むと決めたら、職員と壁打ちをしながら、職員の意識も変えていくことで、職員も色々なことを自分から考えていくようになっていき、結果としてうまくいく施策が生まれてくる原動力になるんじゃないかと考えています。

役所はやはり最終的には人だと思うので、職員の意識をいかに変えて一緒に取り組んでくれる職員をいかに作るか、また、いかにそういう意識を持っている市民を巻き込むことを意識しながらやっていけるかで、結構面白い施策って勝手に生まれていくようなエコシステムができるんじゃないかなと思っています。

高橋> ありがとうございます。個人的にも非常に勉強になりましたし、多くの自治体職員の皆さんにも響いたのではないかと感じました。

大原(蒲郡市)> 蒲郡市の鈴木市長も民間から市長になった方で、現在4年目ですが、市役所に最初に登庁した時に「すごくアウエー感があった」と言っていました。市長は対話と会話を大事にしており、対話によって市民や企業とボーダレスな市役所にしていきたいと言っているので、徳島市長さんのご発言を聞いて、一致するところがあるなと思いました。

蒲郡市は、「サーキュラーシティー」を前面に掲げており、メルカリとの関係でもスピード感をもって実施することができましたし、メルカリとの連携も短い期間で実証実験を始め様々なことをやらせてもらいました。

蒲郡市のビジョンは、つながる交わる広がるですので、市民とも民間ともつながり交わり広がっていきたいと思っており、こうした部分についてはボーダレスにやっていきたいと思っています。このビジョンの中で連携には3つ視点があると言っています。第1の視点はエリアとしての連携で、資源循環をめざす事業者間の横の連携を何とかしないといけないと思っています。第2の視点は、足りない機能を補うサプライチェーンによる縦の連携です。第3の視点は、行政による連携です。蒲郡市であれば県との連携もありますし、東三河というエリアに属するので、その東三河での連携、官民連携なども含めて進めていきたいです。民間の持っているネットワークや情報を蒲郡市として最大限活かすことを考えていきたいと思っており、蒲郡市のサーキュラーシティの取り組みも現状では行政が中心になっていますが、将来的にはその動き自体も民間の方たちに預けるところまで持っていきたいと思っています。

高橋> カンボジアの国連主催のフォーラムに出席した際に、蒲郡市長と数日間ずっとご一緒させていただいたのですが、その時にも市長がファーストペンギン自治体という話をされていました。これまでの行政は最初に実施することを嫌がり、2番目であったり、それなりにスタンダードになってから始めるのがセオリーだと言われていました。火中の栗ではないですが最初に拾うのは、行政としてはあんまり良くないなどと言われた時代もありましたが、あえてそこを狙いにいく自治体ということを意識されてるという話を聞いて、今回のテーマでもある公民連携においても非常に大きな可能性の一端が伺えたなと感じました。

写真:岩﨑 敏雄 西宮市副市長

岩﨑(西宮市)> 先程、徳島市長も言われたように、職員の意識というのがすごく大事です。リユースやリデュースを進めていくには、民間事業者と官民連携で進めていくのが一番近道だし、効果も大きいと思っているのですが、西宮市でも環境事業部の職員が自ら意識を持って推進してくれています。メルカリとの連携協定も職員自らが話を持っていき協定を結んでくれた事例ですが、その点はすごく大事だと思っています。

西宮市は、今年で環境学習都市20年になるのですが、民間の事業者に入っていただいて、環境学習をやっていくということまではあまりできていません。学習だけではなく、その次の循環型社会なりの実践を実際に教育の現場で子どもたちに体験してもらうとのことがなかなかできてないので、メルカリなど民間事業者との協定も活かして小学校などでやっていくなど、環境学習をさらにバージョンを上げていきたいと思っています。

高橋> 今日いただいたお話の中には、多くの自治体にとって先行する自治体としてのヒントがあったと思います。メルカリとしては、今日、「メルカリShops」の販売を開始していただいた8自治体も含め、今後も色々な自治体と連携しながら、公民連携による循環型社会やSDGsのさらなる推進を進めていきたいと思っています。弊社に限らず様々な企業を巻き込みながら、また都道府県と基礎自治体との連携、様々な自治体同士での連携なども含め、新たな推進に寄与できるようなイベントになったと思いました。皆様、ありがとうございました。

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プロフィール

内藤 佐和子 徳島市長

東京大学法学部政治コース卒業後、まちづくりグループ「徳島活性化委員会」代表、四国放送の情報番組「ゴジカル!」月曜コメンテーターなどを経て、2020年4月より徳島市長に就任。2021年4月より内閣府「男女共同参画会議」議員も務める。徳島市きらめく女性大賞受賞、在日米国大使館及び駐大阪・神戸米国総領事館から「勇気ある女性賞」を受賞。著書に「難病東大生-できないなんて、言わないで」。

 

大原 義文 蒲郡市副市長

関西大学法学部卒業後、1981年 蒲郡市役所入庁。市民福祉部保険年金課主幹、市民福祉部保険年金課長、市民福祉部次長、企画部長、蒲郡市教育委員会教育長を経て、2021年4月より現職。

 

岩﨑 敏雄 西宮市副市長

1982年 西宮市役所に入庁。障害新制度準備担当係長、情報システムグループ課長補佐、定額給付金担当課長、産業文化総括室長、産業文化局長、環境局長を経て、2023年4月より現職。

 

高橋 亮平(Ryohei Takahashi) ファシリテーター

メルカリ経営戦略室政策企画参事 兼 merpoli編集長。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか。