RSAカンファレンス2023から見える、AIとセキュリティとプライバシー(前編)

2023年4月24日から4日間に渡って、アメリカ・サンフランシスコで開催されたRSAカンファレンス2023に参加してきました。

RSAカンファレンスは情報セキュリティ業界の中でも最大規模のカンファレンスの一つであり、専門家やベンダー、法律家、政府機関、企業などが参加する重要なイベントです。

RSAカンファレンスは今から約32年前の1991年から始まっています。当初はRSAのユーザーカンファレンスとして始まっており、1993年から年に1回のイベントとして現在のようなオープンなイベントとして成立していった歴史のあるカンファレンスの一つです。

このレポートでは、私のRSAカンファレンス 2023への参加体験と、注目すべきトピックやセッションについて、前後編に分けて報告します。

 

イベントハイライト:「AIに始まり、AIに終わったカンファレンス」
RSA カンファレンス 2023には、セキュリティ専門家や企業のリーダーが世界中から集っており、公式の参加者数は4万人超で、情報交換や最新のトレンドを学ぶ絶好の機会となりました。

今回のカンファレンスは、AIに始まりAIに終わると言って過言ではないくらい、AIについての話題が多くありました。

以下、参加したイベントでのハイライトをいくつか紹介します。

 

キーノートスピーチ:「human curiosity and our ability to ask questions」
RSA Conference 2023の初日、カンファレンスを運営する情報セキュリティ会社のRSA社CEO・Rohit Ghai氏(以下、Rohit氏)が登壇し、AIを利用した最新のサイバーセキュリティの脅威についての洞察と、対策についての戦略的なアドバイスを提供しました。

Rohit氏は、今は新しいテクノロジーの時代がきており、その時代の波はこれまでよりも大きく、広範囲で、早く、破壊的であると言います。過去には「インターネットの登場」という波が、次に「モバイルとクラウドが登場」という大きな波があり、今回は「AIとデータ」の波が来ていると論じています。そしてAIはアプリケーションレベルの技術から、プラットフォームとしての機能へと成長をしていると言います。

つまり、AIは単独で何らかの質問に対して応答をするという単純な機能から、プラットフォームの中に統合された存在として変化をしているという分析です。

また、セキュリティの世界においては、優れたAIがなければ、悪いAIに騙されてしまうということが起こり得ます。サイバーセキュリティに対する攻撃者は、現在、AIを活用して非常に洗練されたフィッシング行為を行っています。悪いAIによって開始されたこれらの洗練され執拗なフィッシング行為を見分けるには、守る側、私達の側に優れたAIが必要とも指摘がされました。

AIが活用された世界で、人間がどのように貢献することが出来るのか。
AIにより意思決定が容易になり、多くのワークフローが自動化されていく。人間は、より影響力のある決定を監督し、例外を処理することになる。

AIの能力はより良くなっていくが、最終的には人間のもつ好奇心と、これまでにしたことがない「質問をする能力」が、私達人間とAIの関係性を維持し続けるだろう。

Rohit氏が最後に語った言葉は、とても興味深いものです。

AIの業務への導入は、今後ますます進んでいくことでしょう。すべての会社や組織がすべからずAIを導入していくかと言うと、そうはならないでしょうがAIを導入し、効率と高生産性を実現できた組織体が、よりよい世界を実現できるリーダーとなるのではないでしょうか。AIと人間の調和を実現するためのトライアンドエラーを妨げない環境というものも、同時に必要となると思います。AIの利用を躊躇するのではなく、適切に利用していくスタンスが今必要とされているものではないでしょうか。

(中井 博)

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