【リユース業協会専務理事インタビュー】リユースの浸透に向けたリユース業協会の役割と使命

10月5日、「リユースの浸透に向けたリユース業協会の役割と使命」について、伊藤 廣幸 一般社団法人日本リユース協会 専務理事にお話を伺いました。

メルカリ政策企画参事 布施 健太郎(以下、布施)> まずは、一般社団法人日本リユース業協会(以下、リユース業協会)が設立された経緯から教えてください。

一般社団法人日本リユース協会 専務理事 伊藤 廣幸(以下、伊藤 専務理事)> リユース業協会は、ハードオフコーポレーションの山本社長(当時、現会長)が、リユース業の認知度が低く、健全な事業者と見られていないという実情を憂いて、良質な事業者を育成し、業界を健全に発展させていきたいという思いから、上場8社を中心に賛同をいただき2009年4月に設立しました。

布施> 協会の定款にも「リユース並びにリユース業の社会的認知度向上及び良質なリユース事業者の育成を通じ、わが国におけるリユース業界の透明性の高い健全な発展を図ることを目的とする」との記載があります。この協会の目的について詳しくお聞きできますか。

伊藤 専務理事> 本協会は、第一に良質な事業者の育成を目的としています。リユース業界では、相手の自宅を不意に訪問して貴金属などを半ば強引に買い取ってしまう「押し買い」や他にも「誇大広告」などの問題が昔からありました。こうした一部の心無い事業活動が消費者の不信を招いている側面がありました。協会に加盟すれば、コンプライアンス(法令遵守)が求められるため、消費者にとっても、どの事業者が安全で良質な事業者なのかが分かるようになります。今後、会員企業が増えることで良質な事業者が増え、目的の一つでもある業界の健全な発展に繋がるものと考えています。

布施> リユース業協会の現状について教えてください。

伊藤 専務理事> リユース業界全体の事業規模は、2022年度では2.9兆円でした(出典:リフォーム産業新聞社)。全体的に右肩上がりで、本協会の会員社も同様の傾向にあります。また、会員数について、正会員が29社、準会員が3社、研究会員11社、賛助会員24社の計67社で、昨年比11社の増加と伸長しており、今でも新規の事業者様から入会希望の問い合わせをいただいています。業界団体として会員数が伸びている業界は少ない中で、右肩上がりになっているのはリユース業界自体が活発になっている証しだと思います。

布施> それでは、リユース業協会が行っている具体的な事業内容についてお聞きします。最初にリユース検定について教えてください。

伊藤 専務理事> リユース検定は「リユースショップ営業に必要な知識を備えた人材の育成を通じて、消費者が安心して利用できるリユース市場の形成とリユース業界の健全な発展に貢献する」ことを目的として年4回開催し、合格者に対して、「リユース営業士」の資格を授与しています。毎回600人前後の受講者がおり、累計合格者は1名を超えました。合格率は毎回50%に満たないくらいですが、協会としては合格者の割合を今後増やしていきたいと思っています。会員企業の中には会社として研修を実施しているところもありますが、本検定は協会発刊の『リユース・ハンドブック』に準拠しており、しっかりと勉強し、理解していないと合格できない試験ではあります。

布施> 次に、リユース業協会が作成を推進している「業界ガイドライン」について教えてください。

伊藤 専務理事> 百貨店やスーパーの一部を借りて買取りを行う「買取催事」や事業者がお客様のもとへ出張する「出張買取」などで様々な問題が発生しています。買取催事でのお客様を訪問営業に繋げて行った場合、その後、消費者からクレームがあっても事業者に繋がらないことがあり、場所を貸しただけの百貨店やスーパーがクレームの宛先になってしまう事案や、出張買取の際に家に上がりこんで貴金属を安く買い叩く事案などです。このような行為によってリユース業界全体への信頼が毀損してしまいます。これらを防ぐべく、ガイドラインを策定し、本協会会員社には遵守して頂き、警察や消費者庁とも連携して啓蒙活動などを行っています。

布施> リユース業協会では、今年から8月8日を「リユースの日」と制定するとともに、他にも様々な取組みを行っています。直近ではどのような活動をされましたか。

伊藤 専務理事> リユース業協会としても、これまでリユースを推進するために様々な活動をしてきました。ただ、業界だけで活動していても社会に浸透していくにはどうしても限界があります。そこで、今年から8月8日を「リユースの日」と制定をすることによって、消費者のみなさんにも注目していただき、リユースへの興味関心を持っていただくきっかけとなればと考えています。「リユースの日」を社会に認知をしてもらうために会員企業でもSNSで告知を行ったりしています。

また他にも、社会貢献活動の一環として富士山清掃を行っています。今年も10月19日に、静岡県の富士川河口付近の海岸で、会員企業からおよそ200名の方に集まっていただき、清掃活動を実施しました。会員企業の社員自らが環境に対する意識を高めることで、各社でリユースをさらに推進していこうという流れにつながればよいなと思います。

布施> 循環型社会の中で、リユースが果たす役割についてお聞かせください。また、今後のリユースの浸透と定着に向けた協会の役割をどのようにお考えですか。

伊藤 専務理事> 物の循環は、原料採取→製造生産→流通販売→消費使用→廃棄リサイクルの循環で形成されていますが、私たちの役割は、流通販売から消費使用の間でリユースを行って循環を促進し、廃棄までの速度を遅らせることが重要だと考えています。この消費の延命という循環を回していくことは事業者の役割ではありますが、消費者にもこの循環に参加していただきたいですし、参加していることを認識していただくことが重要だと思っています。消費者にわかりやすいように発信したり、各社や業界と連携して政治や社会に訴えかけていくことも協会の役割であると思っています。

布施> リユースの浸透と定着に必要なことは何だとお考えですか。

伊藤 専務理事> 自治体との連携が大切です。ゴミの回収時に「まだ使えるのに」と思うものは実際多いです。この点で、自治体とは問題意識を共有できているので、すでにいくつかの自治体と連携し「捨てるだけでなくリユースという選択肢もある」ということを自治体の広報誌を通して発信したりしています。

布施> 最後に、メルカリに期待することがあればお聞かせください。

伊藤 専務理事> メルカリの登場でリユースマーケットは確実に広がったと思います。これまで実際にリユースをしようと思っても、実店舗はあまり多くありませんし、買い取ってもらえる物品にも制限がありハードルは高かったと思います。しかし、メルカリでは自分が使い古したものを簡単に出品できるため、リユースのハードルが下がりました。それによって、消費者の裾野が広がり、意識も高まったと思います。

もっとも、ネットがあまり得意ではない高齢者のことを考えると、やはりリアルな店舗も必要だと思います。ネットとリアルの二者択一ではなく、両輪で進めていくことが大切だと考えており、今の「リユース検定」はリアルな店舗を想定していますが、今後は「ネットを通じたリユース」についても、追記していかなければならないと思っています。

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プロフィール

伊藤 廣幸(Hiroyuki Ito)

1977年 ㈱ローソン入社、営業部長、総務(管財)部長、開発(情報)部長、会長秘書、CEO補佐を歴任。2013年 (一社)日本フランチャイズチェーン協会専務理事。2021年 (一社)日本リユース業協会専務理事。

インタビュワー

布施 健太郎(Kentaro Fuse)

メルカリ経営戦略室政策企画参事。大学卒業後、百貨店に勤務。その後、国会議員政策担当秘書(衆議院)を経て、市議会議員、県議会議員として地方自治に従事。介護会社の立ち上げや病院の事務責任者・開発担当等を経て、2019年4月メルカリ入社。政府系キャッシュレス事業を担当後、「メルカリShops」の立ち上げに参画し、2023年4月より現職。省庁対応、新規事業、自治体連携、教育連携を担当。宅地建物取引士、ソムリエ協会認定ソムリエ、ホームヘルパー2級などの資格も持つ。東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻修士課程修了。