「循環型社会形成推進基本計画」策定に向けた環境省のワークショップにメルカリの今枝が登壇

中央環境審議会循環型社会部会(第51回、2023年12月11日開催)「第五次循環基本計画策定に向けたワークショップの開催報告」https://www.env.go.jp/content/000177550.pdf

2023年11月17日、環境省の「第五次循環型社会形成推進基本計画の策定に向けたワークショップ」が開催され、メルカリ 経営戦略室 政策企画マネージャーの今枝 由梨英(以下、今枝)が登壇し、「循環型社会形成につながるライフスタイルに向けた取組についての事例発表」と題して報告を行いました。今回はその様子をご紹介します。
開催概要:

 

ワークショップの概要

2023年10月17日に「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」(以下、指針)が環境省により公表されました。今後はこの指針に即して「第五次循環型社会形成推進基本計画」(以下、循環基本計画)が策定される予定です。この循環基本計画は、循環型社会形成推進基本法に基づき策定される政府計画で、おおむね5年ごとに見直すこととされており、第五次循環基本計画については来年6月頃の閣議決定が予定されています。
今回のワークショップは、指針の周知および、国民一般から広く意見を募り循環基本計画策定の参考にするために開催され、メルカリは「循環型社会形成に係る先進的な取組を進める企業」として事例発表を行うとともに、他の団体や自治体とともにパネルディスカッションを行いました。

 

第五次循環型社会形成推進基本計画の全体像

ワークショップの冒頭では、環境省 循環型社会推進室 近藤 亮太 室長より、個人の発信力が強まっている現在において、一人ひとりの意識や行動が変われば、それが地域社会や国のあり方を変えていくことにつながること、及び本ワークショップなどを通して循環経済についての理解を深めて欲しい旨のご発言がありました。
その後、環境省 循環型社会推進室の湯山 室長補佐より指針について説明があり、今回の指針では、循環基本計画として初めて「循環経済への移行」について明記する予定であることの説明や、使用済製品等をリユースする方法としてフリマアプリへの出品も有用であるとのご発言もありました。循環基本計画の指針の全体像は以下の通りです。


メルカリの報告

続く有識者による講演ののち、メルカリの今枝が「循環型社会形成につながるライフスタイルに向けた取組についての事例発表」と題して報告しました。
まず初めに、サーキュラー・エコノミーが資源投入量・消費量を抑えながら、ストックを有効活用して付加価値を生み出すものであり、成長を生み出すグリーンな社会の実現を後押しするために不可欠であることを確認しました。その上で、循環型社会ビジネスの市場規模について2020年現在の約50兆円から、2030年には80兆円を目標とする中で、「資源、機器の有効利用」がサーキュラー・エコノミーで果たす役割が大きいことを説明しました。リユース市場規模は2030年には現在の約2.7兆円から4兆円に達する見込みとなっており、日本の家庭には約66兆円もの「かくれ資産」が眠っていることから(注)、大きな伸びしろが期待できます。
(注)メルカリ「2023年版 日本の家庭に眠る“かくれ資産”調査」より

また、リユースが促進されることで、廃棄物の排出が減り、長くモノを使うことで新しく生産するための限りある資源の利用や、温室効果ガスの排出量が減る事例として、「メルカリ」での取引によって温室効果ガスがどの程度削減できたのかについての定量的なデータも紹介しました。「メルカリ」での取引によって廃棄を回避できた衣服は年間約4.3万トンに達し、温室効果ガス削減貢献量は、算出対象カテゴリーの合計で年間約53万トンにものぼりました。

続いて、メルカリが行政や企業と連携して行っている取り組みを紹介しました。メルカリでは自治体と連携し、各自治体が持っている備品や粗大ごみを「メルカリShops」で販売したり、「メルカリエコボックス」を各家庭に配布したりするなどリユース意識の向上に努めてきました。自治体の「メルカリShops」への出店は26自治体(※11/17現在)、「メルカリエコボックス」の配布も26自治体(※11/17現在)にのぼります。また、今年6月には「SDGs循環型社会推進公民連携フォーラム」を開催し、SDGsの実現に向けて政府や地方自治体、企業といった既存の枠組みをえた連携を推進しています。
これらの他にも、「ごみカレンダー」の配布やサステナブル・ファッションショーの開催などを通じて、「リユースは面倒」といった認識から、日常の中で自然に行うアクションとしての認知や行動変容を促す活動を行っています。

最後に、リユースを社会の中で見える化する、情報の可視化について提案しました。デジタル化が進んだ循環型社会では、メーカーなどの一次流通だけでなく、二次流通と互いに連携することが重要です。具体的には、個人情報に配慮し、二次流通の購買・嗜好性データを一次流通に提供することで、一次流通側でも製品開発や適量販売、需要予測を実現することができると考えられます。例えば、製品の生産・流通段階で、個体識別用のデジタルタグを入れることで、モノの循環の解像度が高まり、一次流通企業にとっては「リユース率」が高いことを開示できるようになる、消費者にとっては、高い「リユース率」がある企業の製品を購入したいという動機づけにもつながります。
また、社会全体でのリユースの環境価値・環境負荷削減を見える化する方法として、リユース品利用成果をはかるための指標や標準算定モデルを開発したり、製品の循環性を示すための標準的な指標の策定を提案しました。

 

パネルディスカッション

メルカリや各自治体の事例紹介の後、宇都宮大学 高橋 若菜 教授をモデレーターとして、発表者を交えたパネルディスカッションが行われました。その中で、参加者からメルカリに対し、リユースに関するデータの可視化・連携についての可能性や行政との連携についてご質問がありました。

メルカリでは、削減貢献量の算出や指標の開発など、定量的なデータを重視し、リユースの「見える化」に力を入れてきました。しかし、現在の指標ではまだ見えていない部分が多いのも実情です。例えば、製品が消費者に一度購入・利用されたあと、どのくらいの割合で捨てられ、どの程度リユースされたのか、一切分かりません。リユースされるものは長く使える価値があるものであり、どのような製品がリユースされやすいのかなどを「見える化」できればと考えています。もっとも、これには、製品をどのように、誰がトラッキングするのかなどの課題もあります。様々な方々の意見を伺いながら「データの可視化」を進めていきたいと思います。


まとめ

今回の「第五次循環型社会形成推進基本計画の策定に向けたワークショップ」では、循環型社会の形成に向けて各自治体や団体の皆様からも事例紹介があり、パネルディスカッションでは有意義な意見交換が行われました。循環型社会の実現は、1社・1主体だけで達成することは難しく、他の企業や行政と垣根を超えて連携しながら進めていく必要があります。その意味で、成功事例やノウハウを共有する場となった本ワークショップは非常に有意義なものであったと考えています。
メルカリは今後も、「捨てる」をへらし、限りある資源が大切に使われる循環型社会を目指して活動してまいります。

丸山 翔大・今枝 由梨英