自民党のNFT政策検討プロジェクトチーム(以下、NFT検討PT)によって検討が進められていた「NFTホワイトペーパー」案が2022年3月30日に公表されました。
NFTは先日発表された骨太方針や新しい資本主義の実行計画にも盛り込まれており、政府の成長戦略の1つと位置づけられています。
そこで今回は、NFT政策検討プロジェクトチームの座長代理でもある山下貴司 議員にインタビューを行い、政策決定プロセスの変化や自民党の今後の可能性について幅広く聞いてみました。
Web3.0への注力はWeb2.0の時の反省にある
Q> NFTについて、自民党のデジタル社会推進本部NFT検討PTが3月末に「NFTホワイトペーパー(案)」をとりまとめ、4月末には岸田首相に提言しました。その後、首相も「ブロックチェーンやNFT、メタバースなどWeb3.0の推進のための環境整備を含め新たなサービスが生まれやすい社会を実現いたします」と発言され、「新しい資本主義のグラウンドデザイン及び実行計画」でもWeb3.0の環境整備が盛り込まれました。NFTなどWeb3.0を成長戦略として、どう取り組まれようとしているのでしょうか。
山下議員> デジタルの社会で大きな広がりを持つWeb3.0の時代が目の前に来ています。世界中がWeb3.0をにらんで、経済政策であったり、制度改正をやっていますので、日本も同じように成長を遂げたいと思っています。何よりも日本の強みはコンテンツを多く持っているところにあると思います。Web3.0の中心的地位にあるNFTにおいては、コンテンツを多く持っているという点が、非常に期待できると思います。
Q> なぜWeb3.0に注力するのでしょうか。
山下議員> 大きな理由は、政治・行政のルールづくりが遅れてしまったというWeb2.0の時の反省にあると思います。私たちは、プラットフォームの整備など、まず最初にやることを意識できず、市場を占有されてしまいました。今回はそうならないよう、日本がWeb3.0をリードするという意識で取り組んでいます。
Q> Web2.0の時、政治、行政のルール整備が遅れたのはどういったことに原因があったとお考えでしょうか。
山下議員> 政治が民間にお任せしすぎて、指揮を取れなかった点にあると思います。国が国家計画を立ててやることはなく、待ちの行政になっていましたし、政治も行政から上がってくるのを待っていました。そのような必要な改革をしなかった点が、Web2.0の遅れに繋がったのだと思います。
Q> そのような反省を踏まえて、今後Web3.0はどのように進めていかれるのでしょうか。
山下議員> 自民党もWeb3.0を戦略の一つとして捉え、総力を挙げて取り組んでいます。ただWeb3.0を実現するための制度に関しては、日本はまだまだ遅れを取っています。時代に追いつくための制度を作るためにも、政治家と外部の有識者の連携による新しいアプローチで政策形成を進めています。
Web3.0時代の政策形成プロセス
Q> 議員も仰ったように、今回の自民党のデジタル社会推進本部NFT検討PTにおけるNFT検討は、そのプロセス自体も新しかったように思います。従来の政策形成と今回の政策形成との間には、どのような違いがあるのでしょうか。
山下議員> 役所のアイディアを待って、それを政治が判断するという従来のやり方では、中々ブレイクスルーが生まれにくいです。政治家も多様なバックグラウンドを持った方がやられていたり、色々な経験を積んでいます。そのような専門性のある政治家が政治・行政の外にある知見を積極的に取り入れて、検討を主導することで、抜本改革は実現できるのだと考えています。今回のNFTの政策検討PTでは、NFTに1番詳しい弁護士の先生方にチームを組んでいただきました。外部の有識者の知見を検討の早い段階から取り込んで、政治家と法律家で政策を検討する、という点でも従来のやり方とは違いがあります。
Q> NFT政策検討プロジェクトチームを構成する議員の方々にも特色がある印象を受けましたが、どのようなチームだったのでしょうか。
山下議員> NFT分野に非常に造詣の深い平将明先生を座長として構成されました。法律周りの規制も関係があるので、塩崎彰久先生も事務局次長として加わりました。通信系の問題も絡むので、その分野に強い小倉將信先生が事務局長をご担当されました。必要な分野に造詣の深い方で構成されたチームであったと思います。
Q> 今回のこのようなホワイトペーパーの取り組みは、このメンバーだからできたことなのでしょうか。それとも自民党内の動きとして、変化があるのでしょうか。
山下議員> 今までの政策の流れから省庁が決められていて、自民党の部会も省庁に対応するような形で構成されています。それに横串を通すような形で、本部や調査会ができています。これからのWeb3.0時代では、従来のような横串縦串を超えて総合的にやらなければならないと思います。それに伴って、メンバーの集め方であったり形成プロセスも変わっていくのではないのでしょうか。私が先日行ったスタートアップ・エコシステムの抜本強化に向けた提言についても、科学技術・イノベーション戦略調査会、知的財産戦略調査会、クールジャパン戦略推進特別委員会、デジタル社会推進本部と4つの委員会で考えました。政策決定に関しては、間違いなく新しい動きがあると思います。
後編に続く
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
山下 貴司(Takashi Yamashita)
衆議院議員(4期)。第101代 法務大臣。東京大学法学部、米コロンビア大学ロースクール卒。検事、外交官、慶応大講師等を経て、2012年、衆議院岡山2区で初当選。【自民党】党改革実行本部事務局長、憲法改正実現本部事務局長、知的財産戦略調査会事務局長、デジタル社会推進本部顧問、同NFT政策検討PT座長代理などを務める。
インタビュワー
高橋 亮平(Ryohei Takahashi)
メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、 神奈川県DX推進アドバイザー。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか
安井 暢高 (Nobutaka Yasui)
メルカリ会長室政策企画マネージャー。経済産業省入省。東日本大震災の被災地支援・現地派遣、機構定員・組織改革(特許庁)、規制法改正を含むクレジットカード取引システムの改革、国会担当(中小企業庁)、内閣官房で成長戦略とりまとめ総括などを担当。途中、米国George Mason大で「法と経済学」及び「国際競争法と経済学」LL.M.取得。メルペイ事業の政策企画業務に従事した後、コーポレート業務についての政策イシューやチーム運営を担当。