NFT政策で注目、山下議員に聞く新しい政策形成と政治のリーダーシップのこれから(後編)

前編に引き続き、NFT政策検討プロジェクトチーム(以下、NFT検討PT)の座長代理でもある山下貴司 議員(以下、山下議員)に、政策決定プロセスの変化や自民党の今後の可能性についてインタビューを行っています。

後編では、骨太決定に至るまでのプロセスや今後の構想についてお聞きしました。

前編も併せてご覧ください。

 

官民で連携したルールを整備して成長実現を目指す

Q> 今回のNFT やスタートアップに関する検討については、官民で連携した政策づくりであったとのお話がありました。まず政府や党内では、どういった調整がなされたのでしょうか。また、2022年6月の骨太・新しい資本主義実行計画決定までのプロセスはどのようなものだったのでしょうか。

山下議員> NFT及びスタートアップに関しては、1月からプロジェクトチームで検討を始め、4月の初めにホワイトペーパーを通して政策提言をさせていただきました。これらの提言は、デジタル・ニッポン2022に盛り込まれています。また、著作権の二次利用、三次利用を可能とする案については、知的財産戦略調査会で検討を始め、提言は5月末に行いました。このような提言が骨太の方針の内容となり、閣議決定されることで政府の施策が決まります。

Q> NFT分野に関しては、民間企業等の現場の声が省庁に届き、その後政治が動くという従来の流れとは異なり、政治が主導で新しい分野に動きがありました。一方、既存の担当省庁が存在しない領域でこうした声を拾って制度として落とし込んでいく難しさもあると思います。政府内・省庁間でどう連携して具体的な施策に反映されるのでしょうか。

山下議員> NFTに関しては、間違いなく成長する分野ですし、自民党としても党のモチベーションが落ちることはないので、今後も力を入れていきます。現場の声の問題に関しては、新しい分野等について役所の縦割りが追いついていない点に課題があると考えています。役所の人としても、自分の仕事がどこまでの範囲なのか把握できていないのでしょう。この点の課題については、今後政治が主導で再編をする必要があります。特に閣議決定は全省庁を縛るので、一層取り組むべきだと考えています。

Q> 新しい領域を動かしていく際に、民間との連携についてはどのようにお考えでしょうか。

山下議員> 政策として力を入れる分野の決定は、政治家の独りよがりになってはならないので、民間の要望が原点かつ重要になると思います。民間の「こういうことをやって成長したいが、この制度が邪魔になっている」という要望に対して、どうやったらそれが実現できるかをクリエイティブに考えることが政治家に求められるのでしょう。そのような成長戦略を官民で作ることが、鍵になるのだと考えています。また国民のチャレンジ精神を奨励することも政治主導でやるべきだと思います。日本はレピュテーションリスクやルールに反しないように、縮こまる国民性があります。ただし、チャレンジしていかないと世界に負けるのも事実です。この国民性も良い方向に変われば、より成長速度が加速すると思います。

 

世界の潮流にキャッチアップする今後の挑戦

Q> 岸田政権が掲げる「新しい資本主義」について、山下議員はどのようなことを意識してやられているのでしょうか。

山下議員> 新しい資本主義は、デジタル分野、スタートアップ等、今日本が取り組むべきことに注力することを掲げています。今、日本は世界の潮流から遅れているので、その遅れからキャッチアップしていかなければなりません。遅れを取り戻すべく、新しい資本主義を掲げて取り組んでおります。今私たちがやろうとしているのは、「外国ではできることが日本ではできない」という事実を直視して、日本でもできるような制約を払うことだと思います。国が制度改正を担う以上、それをやるのが私たちの役割だと考えています。

Q> 新しい資本主義の柱でもあるNFTについて規制緩和の動きがあります。規制緩和を通して、NFTの分野に関しては世界に追いつくだけではなく、日本としてどう攻めていきたいとお考えでしょうか。

山下議員> 日本はコンテンツ大国です。コンテンツ産業の規模は10兆円以上とも言われていましたし、漫画に関しては世界のトップでした。このようなコンテンツ分野の日本の強みを最大限に活かす必要があります。NFT分野における日本の成長の鍵は大きく2つあります。1つ目は膨大な過去のコンテンツのアーカイブ化、2つ目は将来的なクリエイターの育成です。これらに率先して取り組むことで、日本のNFT分野の成長は加速すると考えています。特に無形資産分野は、会社の資産として海外では大きな割合を占めていますが、日本では余り重視されていません。むしろ日本は知的財産権の研究開発をコストとして捉えている傾向にあります。この他、私自身ロケ誘致にも力を入れております。日本でロケをするのは交通規制などの制約が厳しく困難であるため回避されがちなのですが、「TokyoVice」の例もありますように、経済効果が大きく、外国に負けないよう日本も促進すべきであると考えています。国際社会でリーダーシップを取れるよう、私含め政治家が一歩踏み込んでいかなければなりません。

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山下 貴司(Takashi Yamashita)

衆議院議員(4期)。第101代 法務大臣。東京大学法学部、米コロンビア大学ロースクール卒。検事、外交官、慶応大講師等を経て、2012年、衆議院岡山2区で初当選。【自民党】党改革実行本部事務局長、憲法改正実現本部事務局長、知的財産戦略調査会事務局長、デジタル社会推進本部顧問、同NFT政策検討PT座長代理などを務める。

 

インタビュワー

高橋 亮平(Ryohei Takahashi)

メルカリ会長室政策企画参事 兼 merpoli編集長。元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、 神奈川県DX推進アドバイザー。松戸市部長職、千葉市アドバイザー、東京財団研究員、政策工房研究員、明治大学客員研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」に選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)ほか

 

安井 暢高 (Nobutaka Yasui)

メルカリ会長室政策企画マネージャー。経済産業省入省。東日本大震災の被災地支援・現地派遣、機構定員・組織改革(特許庁)、規制法改正を含むクレジットカード取引システムの改革、国会担当(中小企業庁)、内閣官房で成長戦略とりまとめ総括などを担当。途中、米国George Mason大で「法と経済学」及び「国際競争法と経済学」LL.M.取得。メルペイ事業の政策企画業務に従事した後、コーポレート業務についての政策イシューやチーム運営を担当。