徳島市職員の皆様とD&I研修(やさしい日本語+無意識バイアスワークショップ)を実施しました!

1月10日、メルカリは徳島市との包括連携協定※1に基づき、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)研修として、職員を対象にした「やさしい日本語コミュニケーション研修」と「無意識バイアスワークショップ」を実施しました。

※1 徳島市とメルカリ・ソウゾウが包括連携協定を締結。「メルカリ寄付」の寄付先にも追加

D&Iとは

「多様性を認め、受け入れて、活かすこと」などと訳されたりしますが、メルカリでは、このD&Iを非常に重要なものだと位置づけ、以下のようなD&Iのステートメントを示しています。

「メルカリには、ジェンダー・アイデンティティー、性表現、性的指向、宗教、信条、ニューロ(脳や神経)、障がい、民族、国籍、人種、年齢など、ここには書ききれない多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。どんなバックグラウンドを持っていても、平等なチャンスと適切なサポートのもとでそれぞれがベストを尽くす。そんな目標を掲げて、さまざまな施策や制度の実現を目指しています。私たちは、すべての個人に向き合い、多様な経験・知識・意見を結集し、日本発の会社としての文化を生かしながら、メルカリらしい「Diversity & Inclusion」を推し進めていきます。」

詳しくはこちらをご覧ください。

本記事では、その研修の内容について、徳島市からメルカリへ派遣研修中の麻空公美子が紹介します。

 

やさしい日本語コミュニケーション研修

メルカリには約50か国以上から集まるメンバーが東京オフィスで働いています。特に、メルカリJPのエンジニアの約半数が海外からのメンバーです。このため、日本語の方が得意な人と英語の方が得意な人が同じチームで仕事をしていることが多いです。英語も日本語も得意な人も多いですが、全員がバイリンガルというわけではなく、両言語ともさまざまなレベルのメンバーが在籍しています。そんなメルカリには、言語教育ややさしいコミュニケーション研修を提供するLanguage Education Team (LET)、通訳や翻訳サポートをしているGlobal Operations Team (GOT)というチームがあります。これらのユニークなチームとDiversity & Inclusion (D&I) Teamが連携して、言語やコミュニケーションの壁を乗り越え、インクルーシブなコミュニケーションを実現するため、さまざまな施策に取り組んでおり、その取り組みがメルカリの強みとなっています。

「やさしい日本語」とは、日本語をより簡単にすることで、日本語を母語としない人などにもわかりやすく文法や語彙を調整した日本語のことです。例えば、短くはっきり最後まで言う、あいまいな表現を使わない、尊敬語や謙譲語を使わず、「です」や「ます」など丁寧語で話すことによって、日本語を母語としない人のみならず、日本語が母語の子どもやお年寄りにとってもわかりやすい日本語となるというものです。

「やさしい」には2つの意味があり、上記のように簡単という意味の「易しい」と、相手との歩み寄りのコミュニケーションを意識した親切という意味の「優しい」という二つの意味が込められています。

元々は、日本語を母語としない方により伝わりやすくすることを目的にされたものですが、市役所業務には行政特有の用語も多く、日々の市民との対話の中で、「本当に相手に伝わる話し方をしているか」、「より伝わりやすいコミュニケーションとは」を考えるのに非常に効果的な研修になっています。

まず、簡単という意味の「やさしい日本語」については、「短くはっきり最後まで言う」「あいまいな表現を使わない」「尊敬語・謙譲語は使わない」「動作の視点に注意する。誰が何をするかはっきり言う」「二重否定を使わない」「オノマトペ(擬音語・擬態語)は使わない」がメルカリ社員が研修で学ぶ「やさしい日本語」です。 

日常の中で意識せずに話している言葉も、論理的に整理されることで、どのような表現が伝わりにくいかがわかります。

これまでの研究からの一例ですが、災害の際に正しい行動を取れたのは、「頭部を守ってください」という伝え方より、「帽子をかぶってください」という言葉でした。(※ 弘前大学)

受け手の解釈に委ねるのではなく、受け手が行う必要のある具体的な行動をはっきりと話し手が示すことで、より伝わりやすくなるということがわかります。

次に、親切という意味の「やさしい日本語」についてですが、「積極的に言い換える」「確認しながら、傾聴する」「完璧でない日本語に寛容になる」そして最後の「インクルーシブな表現を使う」がメルカリ社員が研修で学ぶ「やさしい日本語」です。

大切なポイントは「やさしい日本語」で説明すればすべてうまくいくということではないことです。「やさしい日本語」に言い換えることを意識するだけでなく、同時に相手のことを理解する、自分のことを理解してもらうためのコミュニケーションがより重要になります。

とくに日本語を母語としない方の日本語表現が完璧には聞こえなくても、相手の日本語をジャッジするのではなく、お互いの理解を確認しながら傾聴することが大切です。また、個々人によっても伝わる表現や伝わり方が異なることから、同じことを伝えるためにも、相手の反応をみながら積極的に言い換えることの重要性が上げられます。

こうした状況は、日本語を母語としない方に対してだけでなく、日常的な市役所業務の中で、窓口や市民との対話でも起こり得ることではないかと感じます。

研修では、こうした「やさしい日本語」を用いたコミュニケーションについてのインプットに加え、実際にワークショップを行い、どう伝えれば、伝わるのか、また、より伝わりやすくなるのかを体験してもらいました。

今回の徳島市での研修では、主に窓口サービス推進会議担当者や広報広聴課、危機管理課、にぎわい交流課など、市民とのコミュニケーションに関わりの多い職員に参加してもらいましたが、「自分の思い込みを前提に対応してはいけない。」「無意識のうちに使っている難しい日本語や遠回しな表現を、職場全体で『やさしい日本語』に言い換える事ができれば、業務も効率的でシンプルなものになると思った。」など、多くの気付きがある研修になったようでした。

 

無意識バイアスワークショップ

無意識バイアスは、目に見える視覚的な情報だけでなく、それ以外の必ずしも目に見えない情報に基づいて、相手にフィルターをかけた状態で物事を無意識に判断してしまうことを言います。

研修では、こうした無意識バイアスを考えるにあたって、まず自分のバイアスを知ることから始めます。

日々の仕事の中でも、「私は周りのメンバーのことをよく理解している」、「私は適切に判断した上で、チームメンバーをサポートしている」、「私はメンバーや候補者のことをきちんと評価している」と思っていても、その「よく・適切に・きちんと」自体にバイアスはかかっていないでしょうか?

D&Iというと、性別や年齢に目がいきがちですが、無意識バイアスには様々なフィルターがあり、「よく・適切に・きちんと」日々、人と接し、仕事をしているつもりでも、こうした認識自体に無意識のバイアスがかかっていると、とてももったいないです。その意味において、行政職員も、このような無意識バイアスについて学ぶことが大切です。

バイアスには「確証バイアス」「パフォーマンスバイアス」「帰属バイアス」「親和性バイアス」など、たくさんの種類がありますが、例えば上記のスライドに示す「パフォーマンスバイアス」について、みなさん心当たりはないでしょうか。

「ジェンダー」「人種」「年齢」などの属性を無意識に「能力」に結び付けることをいいます。

わかりやすい例をあげると、見た目が年長の人は、若く見える人より専門知識が高いと見られることがよくあります。

また、2つの全く同じ内容の履歴書を比較した際、男性の名前の人のほうが、女性の名前の人よりも「雇用しがいがある」と判断される傾向があります。これは、ある採用判断についての研究の結果に基づいたものです。

パフォーマンスバイアスは、採用と登用の際によく起きますので、判断をする際に、ぜひ「バイアスがかかっていないか」自己診断してみてください。

無意識バイアスの恐ろしいところは、「無意識に行われている」ところです。やってしまっても、自分では気付かない。それで繰り返してしまう。そして気付かないので、当然修正しないし、謝ることもありません。

しかし、自分が持っていた無意識バイアスを意識すると、同じ無意識バイアスに左右されてしまう可能性が下がります。たとえ再度やってしまっても迅速に気付けるので、修正できますし謝れるようにもなります。

そこでメルカリでは、3つのセルフチェックを日ごろから心掛けることや、学んだことをチームメンバーに共有することで、無意識バイアスに気付けるようになるワークショップの資料を無償で公開しており、無意識のうちに自分の判断やコミュニケーションの取り方にバイアスがかかっていないか、自分の行動を振り返るきっかけとして活用いただいています。

メルカリが無償公開しているワークショップの詳細は以下をご覧ください。

ワークショップ資料

https://storage.googleapis.com/prd-about-asset-2020/2021/02/e0c40bd6-.pdf

ファシリテーター・ガイド

https://storage.googleapis.com/prd-about-asset-2020/2021/02/c19a9ab4--1.pdf

徳島市では、この無意識バイアスワークショップを管理職を対象に実施しました。

徳島市の職員研修では、同じ階級の職員を対象としたワークショップを開催することは珍しいとのことですが、同じ階級の職員が集まったからこそ共感できることが多かったようで、活発な意見が交わされるワークショップとなりました。

 

行政職員にこそ実施してもらいたい「やさしい日本語コミュニケーション研修」と「無意識バイアスワークショップ」

先日公開した徳島市長インタビューでも、これからの自治体は「多様性を持った市役所」になることが求められることに触れられていましたが、行政にこそD&Iは重要であり、今回、徳島市役所で実施した「やさしい日本語コミュニケーション研修」や「無意識バイアスワークショップ」を、より多くの行政職員に体験してもらえればと思っています。

世界は、私達の想像を超える多様性に溢れています。さまざまなバックグラウンドを持つ人々が個人の可能性を決めつけられることのない社会を目指すためにも、違うコミュニティー(ジェンダー・アイデンティティーなど)の人と対話する機会を日ごろから設けることで、新しい気付きを得ることができます。

そして、新しいことに触れるハードルが下がることで、前例のないことを否定することなく、興味をもって「もっと詳しく聞かせて」と言えるようになるでしょう。そうやって少しずつ変わっていくことで、徳島市のみならず、多くの自治体や企業が「心理的安全性」の高い組織となることを期待しています。

(麻空 公美子)