【寄稿】岐阜市からのメルカリ派遣研修経験職員による対談 〜メルカリで得られるもの〜(後編)

左:柳原さん、中央:今井田さんと、右:横山さん

岐阜市からの派遣研修経験者である、横山 竜一さん(以下、横山)、今井田 浩嗣さん(以下、今井田)、柳原 浩亮さん(以下、柳原)の3人による対談の後編です。

合わせて前編もご覧ください。--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

岐阜市役所で活きている経験

柳原> 1年間の派遣研修期間中に色々と経験して学んだことも多かったと思いますが、メルカリでの経験が市役所の業務でも活かせてるということを教えてください。 

今井田> 横山さんは今のデジタル戦略課ではDXという部分でストレートに活かせていそうですね。 

横山> メルカリでの経験をすぐに活かすことができる職場に配属されたことは良かったです。メルカリで経験したチャットでのコミュニケーションや、WEB会議、議事メモの共同編集や、クラウド上での資料共有など、岐阜市役所が先進的にTeamsを導入している段階でルール作りや職員への活用イメージ共有などに活かせてると思いますこの1月に全職員にTeamsを展開したばかりですので、職員の働き方改革に資する取り組みをどんどんやっていきたいと思ってます。

それから、これは個人的なスキルの話になりますけど、人前で話すこと、いわゆるプレゼン能力が向上したような気がします。メルカリの皆さんってリアルな会議はもちろんですが、オンライン会議でもプレゼンがすごく上手ですよね。今まで自分は思ったことを言葉にするというところが若干苦手だったんですが、1年間の派遣研修で言葉にして気持ちを伝えていくという事について勉強になりましたし、市役所に戻ってから、すごく活きているのかなと感じていましたし、これからの市職員は、そのような能力が求められていくと思ってます

今井田> 自分は業務で官民連携の部分に携わることがありますが、メルカリでは多くの自治体との関わりがありますよね。そういうところで他の自治体をいろいろと知ることができたかなと思います。民間の力を使って自治体を良くしたい、目的を達成したい、課題を解決したいっていう意識がしっかりとある自治体はメルカリと積極的に話をしてくれるし、逆に「何でこの企業でやるのか」などの説明が必要なのでまずはそこから詰めていきたい、といった消極的な自治体もあって、自治体ごとの違いも明確に感じることができたのは良い経験でしたし、活きてると思います。

また、最近は色々な新しいITツールが導入されていて、研修に行く前だったら使いたくないな、新しいこと嫌だなっていう感覚がありましたけど、これに似たツールをメルカリで使ったことあるなっていう経験から、効率的に働くためにどんどんそういう新しいものも使っていこうという考えになりましたし、市での業務に活かすために外の情報をキャッチアップしようということを常々意識できるようになったかなって思っています。 

横山> あるメルカリの方も言ってましたけど、一般論として行政はアウトカムの認識が薄い気がします。 結局今井田さんが言っていた民間の力をいろいろ取り入れてやっていくっていうことでも、「最終的にアウトカムは何なの?」って考えたら、市民サービスの向上だったり、市民の幸せということですよね。

そうであれば、民間の力をどんどん活用しよういう感覚になると思うんですけどその結論に達するまでに色々なリスクがあるかもしれない、そのリスクを潰しに行かないといけないという考えになって、結果リスクが無くなるまではできない、となってしまうことも多い気がしますリスクを考えることは当然必要なことですが、考えすぎて結果としてアウトカムにつながらないということも考えものです。

 

柳原> メルカリは民間企業なので成果主義ということもあって、アウトカムの意識はもちろん、それだけではなくて、アウトカムを最大化するため、例えば、対外的に発信する際も、発信のタイミングや連携先というところまで考慮して業務を進めています。

改めて考えてみると、岐阜市としては、アウトプットからアウトカムへシフトしている中で、自分自身も以前まではアウトプットを重視していることが多く、アウトカムに対する意識は低かったです。例えば、チラシやホームページでお知らせを発信する場合でも、見やすい内容にする、正確な情報を出すということは考えますが、どうしたらこれを見て行動してくれる人を増やせるのか、といった成果まで考えることができていなかったと思います。そのように成果にコミットするという考え方はこれから活かしていきたいと思います。

横山> 結局、自己満足というか最低限これだけやっておけばいいかなというところで終わらせてしまうということになりがちなんだと思います例えば、チラシ1つとっても、行政としては分かりやすい表現を使って作成してるからこれで完璧だと思っていても、実際それを市民の皆さんが見たら分かりにくいということは往々にしてあるのかなと思いま

アウトカムは何なのかってということを考えれば、優先的に進めないといけないこともわかってくると思いますし、今後予算は削減されるけどやらないといけない仕事は増えてくるという中で、果たして優先順位をどうやって付けていくのかとなれば、そういうところで優先順位を付けていくしかない訳なので、アウトカムを意識して業務が出来るようになれると良いかと思いますし、自分もそこは意識するように気をつけています。 

柳原> 先程のカルチャーもそうですけど、せっかく岐阜市を代表して研修に行かせていただいているので、こういう話は個人の経験だけに留めないでもっと市役所内に広めていきたいですよね。ただメルカリで経験した人間だけがそれを言っててもなかなか変わっていかないので、それをどうしていくかということが課題であると思っています。 

横山> 常に言い続ければいいんじゃないですか?   (笑)

そうすればそのうち色々なところで、「それってアウトカムどうなんですか?」のような会話が出てくると思います。

柳原> 嫌われちゃうかもしれないですけど(笑) 

横山> ただ、岐阜市の中にはメルカリで経験を積んだ私たち3人ますし、他にも同じように民間企業での派遣研修を経験した職員は何人もいますよね。また、今の市役所を変えたいと思ってる職員もいると思いますので、そういった職員を巻き込んで、これまで話してきた課題を解決して市役所を変えて行きましょう。 

また、これから入ってくる新入職員もいわゆるデジタルネイティブ世代ですので、市役所でイノベーションを起こせるような人材になってもらって、さらにこの動きが加速できると良いですね

左:今井田さんと、右:横山さん

柳原> 新入職員のフォローという部分では、メルカリのメンター制度はすごく活かせるのかなって思います。 

岐阜市も新入職員に対する職場先輩制度がありますが、これは役所の文化の中で社会人としてもマナーやルールを学びながらOJTで業務ができるようにしていく制度だと思います。メルカリのメンターは新入社員のメンティが3ヶ月で会社のカルチャーを理解して自分のパフォーマンスが最大限発揮できるようになることを目標として、心理的なサポートをしつつ、社内の人とコミュニケーションとれるように、他チームとの接点づくりや1on1の設定のフォローをしたりといった、コミュニケーションに関することが中心ですよね。もちろん、市役所の中で働いていくので、職員としてのルールを学ぶことは大切だと思います。

さらに、新入職員の心理的安全性を高めて自分の意見が言えるようにしていくことで、役所全体の活性化にも繋がるので、今ある職場先輩制度の中に、他部署の職員とのランチミーティングや1on1など、コミュニケーション施策も入れられると今の制度がもっと良いものになっていくなと思いました。僕はメンティだけではなく、メンターも経験させていただき、自分自身のコミュニケーションの幅も広がったので、メンター側も成長できるメリットがあります。こういった経験も市役所の中にもフィードバックしていきたいと思っています。

 

自治体職員がメルカリで研修する価値

柳原> 自分自身、行政とは別のカルチャーに触れたり、社内外のステークホルダーと話をする中で、行政の仕事に対する考え方が変わった、マインドチェンジが図れたということがメルカリに研修に来て一番の価値だったと思っています。

以前までは、「行政はこういうものだからここまでしかできない」など、壁を作っていた部分があって、新しいことを聞いても、これはちょっと市役所ではできないなみたいに思うこともありました。

この研修の中で、同じ基礎自治体でも民間企業と連携することでこんなこともできるんだということが分かったので、これからは官民連携してどんどん新しいことをやっていくべきなんだという考えになりました。 

今井田> 僕は誰でも意見が言える、活発に議論ができる、心理的安全性やD&Iが意識された環境を実際に体験できたってことに価値があったと思います。特に若い社員や女性社員でもフルコミットして意見を言える環境でしたし、個人としてもそれができているのか今後意識していきたいですね。

 横山>  自分も最初はこんなに若社員女性社員が積極的に発言する姿をみて、驚きました。市役所ではどちらかというと、ボトムアップよりもトップダウンで業務が動いている気がします。決して下からの意見を否定しているという環境ではないですが、なんとなく意見をいうことに遠慮しているような雰囲気があります。自治体の職員がメルカリに行くことによって、これらのことを肌で感じることができることがバリューになるのかなと思います。 

あと先程2人も言っていましたが、ほかの自治体の事をなかなか知ることができない中、メルカリで他の自治体とも関われることで、容易に情報交換をすることができます。岐阜市は先進的にDXに取り組んでいるとか、岐阜城やぎふ長良川鵜飼などオリジナルの観光資源があり、観光施策にも力を入れているなど、岐阜市のことをPRしながら、他自治体の情報を得るようなことも数多くありました。

メルカリで派遣研修をすることで、47都道府県にある様々な自治体とも関われる可能性あるので、すごく視野も広がると思います。 

柳原> 自治体だけではなくて、省庁や国の機関の方とお話する機会もあったので、それも国の動向なども分かって、視野が広がりますよね。

横山> 職員個人にとってとても価値のある経験になりますし、その経験を各自治体に戻ってから活かすことで、職員の働き方改革にも繋がっていくと思うので、他の自治体の方もぜひ経験していただきたいと思います。 

今井田> 同じ経験をした自治体職員が全国に増えれば課題感や解決策の共有もできますよね。

柳原> そうですね。自治体職員としてとても有意義な経験をさせていただけました。職員を派遣するには、お金と時間がかかっています。個人のスキルアップで終わることなく、この経験を活かして岐阜市のまちや職場をより良いものできるようにしっかり還元していきいきましょう。本日はありがとうございました。

 

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プロフィール

横山 竜一 (Ryuichi Yokoyama)

岐阜市行政部デジタル戦略課デジタル技術活用推進室長。岐阜市役所には1999年4月に入庁し、主に福祉部局にて管理部門を担当。派遣直前は秘書課にて秘書業務を担当。2020年4月から1年間、岐阜市からの派遣研修でメルカリ政策企画に加わり、自治体経験を活かして主に自治体連携の取り組みやメルカリ寄付を担当。

今井田 浩嗣(Koji Imaida)

岐阜市企画部政策調整課。2009年に岐阜市役所入庁。税務や広報に従事し、その間、岐阜県庁、観光協会への出向を経験。直近の所属である広報広聴課ではシティプロモーションを担当。2021年4月から1年間、岐阜市からの派遣研修でメルカリ政策企画に加わり、自治体連携や「メルカリShops」、「メルカリ寄付」、「やさしい日本語」支援などの業務を担当。

柳原 浩亮(Kosuke Yanagihara)

岐阜市行政部デジタル戦略課デジタル技術活用推進室。2009年岐阜市役所入庁。資産税課で固定資産税賦課業務、農林園芸課、農林政策課では農林業振興業務に従事。直近の市民スポーツ課においては、スポーツイベントの開催など市民スポーツ振興業務を担当。2022年4月から1年間、岐阜市からの派遣研修でメルカリ政策企画に加わり、自治体連携や「メルカリ教室」「メルカリ寄付」「メルカリShops」のほか、不正対策など安心安全に関わる業務を担当。