【政策企画メンバーインタビュー】05.石井真弘 法務経験者から見た政策企画の重要性と法務との違い。フィンテック分野の政策企画とは

メルカリ政策企画チームは、官僚・公務員経験者、政治家・政治家秘書経験者、民間企業での勤務経験者等、様々なバックグラウンドを持ったメンバーで構成されています。今回は、政策企画チームマネージャーの石井 真弘(以下、石井)に、インタビューを行いました。

 

法務から政策企画へ

ーーー経歴が政策企画メンバーでも珍しく、司法書士からIT業界の法務部門を経験されてきたんですよね。

石井> 大学卒業後、司法書士としてキャリアをスタートさせました。その後2011年に大手IT会社に入社し、契約書の作成、事業の法律相談、グループ会社支援などの業務に従事し、メルカリ政策企画チームに転職しました。

 

ーーーメルカリ政策企画に転職しようと思ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

石井> 前職の会社が、政策渉外に力を入れていることから、法律の枠内のみならず、法律を変える形で法律面で課題のある新規事業にアプローチする方法があることを知る機会があり、政策企画の仕事に興味を持ったことがきっかけです。

 

ーーー今はメルカリでどのような仕事をされているのでしょうか。

石井> メルカリグループのサービスの中でも、Fintech領域を担当しています。政策企画というとロビイング、官公庁や国会議員との渉外をイメージされる方が多い印象ですが、メルカリの政策企画では、事業成長支援と会社の信頼獲得のために、ルールメイキングや社外のステークホルダーとのコミュニケーションという切り口で、あらゆることをしよう、という考えがあります。なので、ロビイングのような攻めの部分だけではなく、例えば事業成長のためのリスク検知や回避などの守りの部分なども担っています。

 

ーーー石井さんは主にフィンテック分野の政策渉外を中心に従事されていますが、フィンテック領域の面白さはどういう点にあるのでしょうか。

石井> フィンテックはお金を扱うこともあり、規制法が必ずあり、規制と事業は表裏一体の関係と考えています。

技術の発展や社会の急速な変化で新しくできることが増えていったり、議論すべきトピックが増える中で、技術の進展とルールをどう組み合わせることができるのかを考えることができる点に、非常に面白みを感じます。

 

ーーーその観点からいうと、ルールの中でどう事業ができるか、分析し検討するという点で、政策企画と事業を見る法務は近いのでしょうか。

石井> 私は近いと考えています。法務の仕事の一つである、事業部がやりたいことに対する法律上の課題発見と課題解決は、まさに政策企画に通じるものだと考えています。例えば、法務では、こんな新しいサービスや機能を提供したい、と事業部から相談を受けることがあります。こうした相談を受けた場合、適用されうる法律はなんなのか、そうした法律がある場合、適法か違法かを法律上判断します。仮に事業部のやりたいことがそのままでは法律に抵触する可能性があれば、実現できる法的スキームを検討したりします。こうしたスキルは政策企画でも活かせるものですし、法務ほどではなくとも法律を読む力は政策企画にも必要だと思います。法律に抵触する可能性がある場合、法務では法的スキームを検討し、政策企画では、ルールを変えられないか、と発想する点が法務と政策企画の大きな違いにはなるのですが、そこに至るまでの分析や検討は近いことをやっていると思います。もちろん、政策企画の場合は、法務部門のお力を借りて分析・検討という形になります。

 

ーーー政策企画として働く中で法務で培った力が生きると感じることはありますか。

石井> 先ほどお伝えした分析と検討のほか、論理的な文書を作成するスキルも有益だと思います。文章を書いて添削される経験が日常的にあるのは、実は限られた職種で、本人にとってはなんてことないスキルだったりするのですが、意外と希少な経験だったのではと思ったりします。

 

法務経験者から見る政策企画の仕事

ーー先程、法務と政策企画は近いものがあるとおっしゃっていましたが、逆に法務と政策企画の違いなどを感じることはありますか。

石井> 法務は、法律がまずあってその枠のなかでの検討や提案が中心であるのに対し、政策企画はときにゼロベースであるべき姿を発想することが求められる点が大きな違いだと思います。政策企画では、どう法律を変えるのが良いか、その結果、社会にとってどんないいことがあるのか、という視点が必要なんだと思います。

 

ーーーゼロベースという観点で、具体的に今までどのようなことに関わってこられたのでしょうか。

石井> 例えば、フィンテックでいうと割賦販売法の改正に関わりました。割賦販売法は、クレジットカードをはじめとする後払いサービスに関連する法律です。メルペイでは、後払いサービスである「メルペイスマート払い」を提供しています。一般のクレジットカードや後払いサービスでは、年収や職業、お住まいの地域等の属性情報を元に与信がされますが、「メルペイスマート払い」では、「メルカリ」の利用実績等を元にしたAIによる与信審査を行う点が特徴的で、従来の与信方法では与信を受けづらかった方もご利用いただきやすいサービスとなります。

もっとも、当時の割賦販売法では、こうした与信方法は規定されていなかったため、割賦販売法の適用除外が認められる少額与信の範囲内でサービスを提供していました。割賦販売法の所管官庁である経済産業省と意見交換をする機会をいただくなかで、メルペイの新しい与信方法についてご関心を持っていただき、割賦販売法について議論する委員会にメルペイも参加させていただく機会をいただきました。委員会では、様々な観点で議論がされまして、2021年に施行された改正割賦販売法において、メルペイの新しい与信方法が可能となる「認定包括信用購入あっせん業」が新しく創設されました。新しい制度の創設に関わることができたのは、非常に良い経験でした。

 

ルールを変えるためには

ーーー政策企画の仕事はルールを変えること、とおっしゃっていました。ルールを変えることは先程の割賦販売法のお話を聞いても、とても難しそうなのですが、石井さんはどのようなことを意識して、取り組まれているのでしょうか。

石井> ルールは、基本的には時代や生活環境の変化に合わせて変えていくべきものだと思っています。個人的には、法律の制定に至るまでの会議体の議事録や社会的な背景などを調べてその法律の成り立ちを理解するのが大事かなと思います。次に、政策動向や報道、業界の動きをもとに、今どういう方向に世の中が進んでいるか、を理解します。ルールの成り立ちという過去と今とちょっと先の未来を比較して、あるべきルールや世の中に理解を得られやすいストーリーを考えるようにしています。

また、法律を変える議論には、事業者を代表する立場、消費者を代表する立場、有識者など様々な立場の方が関係します。ときに意見が対立している立場の方とも合意するためにどういうコミュニケーションをするのがよいか、考えることも重要だと思っています。

 

ーーー合意を形成するためのポイントはどういう点にあるのでしょうか。

石井> どのような立場の方とお話するか、にもよりますが、基本的には自分たちにとってメリットがある、ということだけではなくて、「お客さまにとってもこんないいことがあります」とか「世の中がこんないい方向に進みます」といったことをきちんとストーリーとしてお話できることが重要だと思います。

 

ーーー今後はメルカリでどのようなお仕事をされていきたいですか。

石井> 入社時、メルカリの「捨てるをなくす」という考えに非常に共感しました。今のメルカリグループのミッションは、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」となっていますが、ミッションをFintechという観点で達成するにはどうすればよいか、政策的な観点から考えていきたいです。

 

ーーー将来的に政策企画はどのようなことが起これば、さらによくなっていくと考えてますか。

石井> 政策企画という分野に色々な経歴をもつ人が入ってくるようになるとよいかなと思います。政策企画の仕事は、官公庁出身の方がなるイメージを持つ方もいらっしゃると思います。そうした方ももちろん必要なのですが、様々なバックグラウンドを持つ方が集まることでより多面的な議論、見方ができるようになるのではと思います。

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石井さんに、政策企画の仕事について多角的な視点を交えて教えていただきました。

メルカリにおける政策渉外の仕事内容や、仕事をするうえで大事にされていること等、普段は耳にしないお話を聞くことができました!

ありがとうございました!

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プロフィール

石井 真弘(Masahiro Ishii)

メルカリ経営戦略室政策企画マネージャー。司法書士としてキャリアをスタート、不動産売買や相続、会社設立等々を担当。2011年にヤフー株式会社に入社、法務部門で決済・金融全般のほか、企業買収やグループガバナンスに従事。2018年よりPayPay法務責任者として立ち上げから参画。2019年5月に政策企画参事としてメルペイに入社、2020年1月より現職。