左が名古屋市の樋山 邦治 主査、右が鬼頭 和之 主事
名古屋市では10月22日、市民の皆さんにリユース品を持ち込んでもらい、販売する実証実験が行われました。
名古屋市は2023年6月5日の環境の日から「メルカリShops」での粗大ごみの販売を行っていますが、今回の取り組みは、NPO法人やシルバー人材センターと連携し、行政にかかるコストを最小限としながら、市民の皆さんにリユース意識を高めてもらうとともに、ごみ減量にもつながる秀逸な取り組みでした。
11月30日、この「リユース品を直接引き取る実証実験」について、名古屋市環境局ごみ減量部減量推進室の樋山 邦治 主査と鬼頭 和之 主事に政策企画チームで岐阜市から職員派遣で来ている日比野 翔太が話を聞いてきました。
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1999年に名古屋市が「ごみ非常事態」を宣言
メルカリ政策企画 日比野 翔太(以下、日比野)> 最初に名古屋市のごみの現状を教えてください。
名古屋市 鬼頭 和之 主事(以下、名古屋市 鬼頭)> 名古屋のごみの現状を語るには、まずごみ非常事態宣言というものに触れなければいけません。1999年に埋め立て処分場がもうすぐ満杯になってしまうということで、ごみ非常事態宣言を発令し、ごみの分別を一気に推し進めたという経緯があります。この1999年のごみ非常事態宣言発令以降は急激にごみ処理量が減りまして、市民・事業者のご協力により、100万トン近くあった年間のごみ処理量を、2年ほどで20万トン減らすことができました。20世紀中に20万トン、かつ20%ごみの量を減らすというトリプル20という目標を達成しました。しかし、それ以降はごみ処理量は横ばいの状況です。
そうしたこともあり、時代に合ったごみ減量施策の一つとして、民間事業者と連携し、インターネットやDXを活用したごみ処理事業を行っていく必要があるということでメルカリさんとの連携事業に取り組んでいます。
NPO法人と連携しての「リユース品を直接引き取る実証実験」
日比野> 今回新たに始められた「リユース品を直接引き取る実証実験」(以下、実証実験)の内容について教えてください。
名古屋市 鬼頭> 市民の皆さんに南サイクルプラザへリユース品を持ち込んでもらい、大きな物は「メルカリShops」で販売し、小さな物は「NPO法人 中部リサイクル運動市民の会」に寄付して、運営しているリユースショップで販売していただくといった内容になっています。
粗大ごみの処分については、回収から破砕、焼却、埋め立てなどに費用がかかるんですけど、今回の実証実験については直接持ち込んでいただいて、捨てることなく、リユースしますので、処分にかかる経費が発生しないということから粗大ごみ手数料は取らないこととしました。
名古屋市 樋山 邦治 主査(以下、名古屋市 樋山)> リユース品なので、民間のリユースショップへ持っていけば値段がつく可能性があります。実証実験に持ってきてもらう物は、そちらに持っていっても値段がつかないけど、まだリユースできそうなものを対象としており、民間のリユースショップと差別化しています。
買い手だけでなく、捨てる側のリユース意識の醸成を
日比野> 実証実験の目的はどういったものでしょうか。
名古屋市 鬼頭> 今までのメルカリさんとの連携事業は、粗大ごみとして排出された物を回収して販売しているので、市民側の意識として捨てたことに変わりはないんです。連携事業によって、買い手側のリユース意識の醸成はできているので、次は捨てる側のリユース意識の醸成をしていきたいという目的です。
日比野> 実証実験を始めようと思ったきっかけはどういうことだったのでしょうか。
名古屋市 樋山> 「メルカリShops」で販売するにあたり、非常に多くのマスコミに取り上げていただいたことによって、市民の皆さんからリユースできるものがあるから取りにきてほしいといった電話が増えました。取りに行くことは難しいですが、直接持ち込む機会があれば市民の皆さんのニーズにも答えられますし、リユースも進むので実証として始めようとしたのがきっかけです。
日比野> 今回は「メルカリShops」にて販売している粗大ごみ以外のリユース品も持ち込みの対象とされています。その理由も教えてもらえますか。
名古屋市 鬼頭> 衣類や細々した物も、リユースされないのであれば可燃ごみとして排出され、市の収集対象になります。リユースをしていただく意識を醸成するのがこの事業の目的になるので、粗大ごみに限定せず、市民の皆さんにまだ使えるものは使っていただいたりとか、他の人に譲れるものは譲っていただいたりという気持ちを醸成していただくためです。
名古屋市 樋山> メルカリさんとの連携事業や実証実験は、粗大ごみを減らすというのが第1の目的ではなく、リユースという意識を市民の皆さんにより高めてもらうために始めました。対象品目が広い方がごみの減量には繋がるので、今回連携したNPO法人 中部リサイクル運動市民の会さんが取り扱える物は全て対象としました。
「もったいないから、他の人に使ってほしい」という参加者の声
日比野> 実証実験に参加された市民の皆さんの反響はいかがでしたか。
名古屋市 鬼頭> 「捨てるにはもったいないと思っている物が、どうしても捨てられなくて、ずっと家に残っていたので、こういう機会に持ち込めたのが良かった」といった声を多くいただきました。
名古屋市 樋山> 予約時にアンケートを取ったのですが、「粗大ごみ手数料が無料だから持ってきた」という方も一定いましたが、「もったいないから、他の人に使ってほしい」といった目的の意見が大半でした。市民の方のリユース意識も高いですし、それに応えることができた施策だと思っています。
ご協力いただいた理由(複数回答) 回答数53人 |
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理由 |
人数 |
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ごみとして廃棄するのがもったいないから |
44 |
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必要な人に使ってほしいから |
34 |
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無料で引き取ってもらえるから |
28 |
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行政の活動として安心感があるから |
19 |
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その他 |
0 |
日比野> 今回の取り組みで、NPO法人 中部リサイクル運動市民の会さんと連携することになった経緯についても教えていただけますか。
名古屋市 鬼頭> もともと資源回収のためにリサイクルステーションを実施されていている団体で、こうした取り組みについては、名古屋市としても広報で協力していました。今回、市職員だけですとリユース品として売れるかどうか、引き取るかどうか悩むものが想定されましたので、リサイクルショップを普段から営んでいるNPO法人さんであれば、その需要があるのかどうかという目利きができるかなということから連携させていただきました。
衣類や本といった小物についてはNPO法人に寄附をすることで、鑑定、物品の手配、運営等を無償で行っていただきました。
名古屋市 樋山> 中部リサイクル運動市民の会さんが地域内にいろんなリユースショップを運営されているので、より環境負荷を減らすには地域内で完結することが望ましいということもあり、地元のNPO団体さんを選ばせていただきました。
NPOや企業などの力を借りながらやってみようという気持ちが大切
日比野> 実証実験では多くのリユース品が集まったと聞いていますが、出品作業に時間がかかると思いますがどのように対応されたのでしょうか。
名古屋市 鬼頭> 当日、市民の皆さんにお持ちいただいたリユース品は大きな物は64品、小さな物が1,167品集まりました。南リサイクルプラザの管理は、シルバー人材センターに委託しており、シルバー人材センターの職員に簡単な清掃、写真を撮って、下書き作成までやっていただいています。その後、市の方で価格設定及び決裁をとって出品を行うという形になります。
シルバー人材センターの職員は「メルカリ」を利用したことがなく、最初の1ヶ月はちょっと苦労しましたが、今ではスムーズに作業していただいています。
日比野> 今回、名古屋市で行ったリユースの取り組みは、他の自治体にも広がっていってほしいと思うのですが、他の自治体が同様の取り組みを行うのにアドバイスはありますか。
名古屋市 鬼頭> どこの家庭でも捨てるにはもったいない、リユースできる物が残っていると思います。取り組みとしての需要は必ずあります。効果的な施策ですので、全国の色々な自治体に、地域の特性や人口規模によって頻度、開催場所を検討しながら実施してもらいたいと思います。
名古屋市 樋山> 行政単独でやろうとしなくても、自治体と一緒に取り組みを行いたい、興味を持ってもらえるNPOであったり、企業はあると思います。自治体が「リユースをしっかりやっていこう」という意思決定ができていれば、自然とNPOや企業が集まってきます。行政単独で頑張ろうということではなく、他の力を借りながらやってみようという気持ちが大切だと思います。
日比野> ありがとうございました。
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(日比野 翔太)