メルカリでは、2024年4月から2025年3月まで、岐阜市から6人目、愛知県と石川県から1人目となる職員の派遣研修を受け入れました。今回は、この派遣研修に参加した藤井 彩香、小塚 星一郎、山口 由夏の3人に、メルカリへの派遣で何を感じ、何を学んだのか、派遣元の自治体に戻り、どう生かしていこうとしているのかを対談で語ってもらいました。
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メルカリで学んだオープンなつながりが生む可能性の広がり
山口 由夏(石川県からの派遣研修 以下、山口)> 今回の1年間のメルカリでの研修で最も印象に残っているのは「メルカリ グリーンフライデープロジェクト(以下、グリーンフライデープロジェクト)」です。
メルカリコーポレートPRの発信の軸のひとつに「サーキュラーエコノミー(循環経済)の推進」があります。より身近にいうと「捨てるをへらそう」という、メルカリの根幹を支えるテーマで、6月の「環境の日」や11月の「グリーンフライデー」といったモーメントにあわせて、発信する機会をPR主導でつくっています。グリーンフライデープロジェクトでは、メルカリの理念に共感してくださった多くの企業の方とともに、リユースファッションの「捨てるをへらす」を親子で楽しめるコンテンツも用意して、プレスリリースや記者発表だけでない、より直接的なアプローチができ、大きな学びになりました。私は記者発表会でのプレゼンスライド作成をメインに携わりましたが、企画からパートナー企業さんとの連携、コンテンツの運営まで、全部自分たちでやっちゃうメルカリPRらしさも、とても印象的でした。 藤井 彩香(岐阜市からの派遣研修 以下、藤井)> 私もグリーンフライデーは印象に残っています。環境省・経産省・消費者庁の3省庁から政府方針とともに応援メッセージをいただき、官民が一体となってサーキュラーエコノミー推進に取り組む機運を示せるよう努めました。また、ちょうどその時期、政策企画のチームでCE(サーキュラーエコノミー)コマースの団体や企業に話を聞こうと動いていました。マネージャーに、面談をしたら「内容をサマって(サマリーして)社内Slackチャンネルであげること」を推奨されていて、リフォームスタジオさんとの面談内容もチャンネルで共有したところ、それを見たPRチームから「ぜひつなげてほしい」と声がかかり、不要になった衣類の回収などを中心にグリーンフライデーの取り組みに組み込むことにつながりました。
それまで、企業との面談をしても「このつながりがどう活きるんだろう?」と見えにくい部分があったのですが、「オープンに情報を発信することで、思いがけない形で広がり、大きなプロジェクトにつながるんだ」と実感しました。
自治体においても、全職員が見られるTeamsのオープンチャンネルを活用し、情報を積極的に発信することで、さらなる可能性を広げられるのではないかと感じています。CEコマースについてはこちらをご覧ください。山口> PRチームでは、情報発信する際は、どういう内容をどのように出すかという「コミュニケーションプラン」というものをまず作成するんです。社内外の背景事情や、伝えたいキーメッセージ、そのためのアクション、ターゲットなどを1つのドキュメントにまとめていきます。
それによって、PR活動で届けたい人と届けたい内容を明確にできるのもいいですし、コアの考え方をみんなで共有することで、プレスリリースだけではなく、記者発表会のプレゼンテーションや質疑応答、あらゆる場面でキーメッセージを統一して伝える意識ができることもいいなと思いました。
またこれはPR活動だけではなくて、さまざまなビジネス業務、自治体でも活用できそうだなと思っています。例えば、上司や幹部に提案するにあたっても、こうした背景情報やアクションの狙いがわかるプランがまとまっていると説得力が出ますし、「他自治体の状況」のようなよく聞かれる項目もフォーマットとして用意をしておくと、自身も整理がしやすいですよね。
そして挨拶文や議会の答弁などを提案する際も、キーメッセージが何かを明確にして共有することで、自治体として発信するメッセージを一貫したものにするのは大事だと思っています。
藤井> メルカリのPRでは、単に情報を発信するのではなく、まずメルカリの目指すビジョンや世界観があり、その手段としてメディアを通じた情報発信を行い、広くお客さまに伝えてメルカリのファンを創ることを重視していると実感しました。このように、ビジョンを軸にした発信の仕方は、自治体でも活かせるのではないかと思います。
先日、私が担当した「捨てられていた落とし物をリユースする」㈱findさんとの連携発表でも、社会課題とどう結びつけて伝えるか、そして「捨てるをへらす」というメルカリの目指すものをどのように伝えればよいかという視点で考えながら進めました。PR業務を兼務することで、このような視点を持てたのは貴重な経験だったと感じています。山口> 自治体の情報発信では、情報の精度は何においても大事なんですが、その先の「どう思ってもらいたい」、「どう動いてもらいたい」というところの意識を持つと、より効果的かもしれないですね。行政の出す文書は難しいという印象を持たれがちなので、住民の方にとって読んだ先の行動をイメージしやすい文章にする意識も大事だと思います。
左から藤井 彩香、山口 由夏
「自分たちが社会を変える」メルカリの社会への関わり方
小塚 星一郎(愛知県からの派遣研修 以下、小塚)> 自治体による「メルカリShops」の出店の業務に携わることで、官民連携を民間の立場から見ることができたことも非常にいい経験になりました。
行政と連携することが持つインパクトや、意義を活用したいという明確な戦略があると感じました。メディアに取り上げてもらうことでの、お客さまや行政の関係者に対してのメルカリのイメージ向上も含め、売り上げだけではない会社としてのメリットがあると判断して、一定のコストをかけてでも実施している事業です。
私はもともと官民連携というものに対して、少し言葉は悪いですが民間側からすると「CSRやお付き合いとしてやっているもの」というイメージがあったのですが、メルカリでは自治体との連携が持つ力を自社のミッションのために活かしあうという明確な戦略を持って自治体との連携を実施しています。
自治体側にも、発信力・注目度など提供できるものがあり、win-winに官民連携をすることもできるというのはイメージが変わりました。
藤井> 「メルカリ」の安心・安全性が話題になった際、「自治体と連携しているから安心」という声があり、自治体との協働が信頼感につながっていることを改めて実感しました。地域に根ざした自治体と協力することで、メルカリが単なる取引の場を超えて、社会課題の解決にも貢献する存在として認識されるようになります。特にリユース促進では、自治体の関与が透明性を高め、市民が安心して参加できる環境づくりに寄与していると感じます。
実際に、岐阜市でもメルカリと連携し、「メルカリShops」を活用した庁内備品と防災備蓄品の販売を開始すると、多くの商品が買われています。
また、先日、岐阜市の教育長をはじめとする教育関係者と、メルカリとの座談会を実施した際に、「メルカリかんさつ帳」のモデル授業を受け入れてくれた岐阜市の先生が、「本物に触れると子どもたちの目の輝きが違う」と話されていました。リアルな学びを提供するには、実際にその分野で活躍する人から学ぶ機会が大切だと感じたそうです。
この視点は、私自身これまで意識していなかったもので、官民が連携することで、お互いにとって有益な学びの場をつくれる可能性を改めて実感しました。
小塚 星一郎
小塚> 政策企画チームの中でいつも言われている「個社の利益ではなく、社会課題の解決という形にしないと世の中を変えることはできない」というのも印象に残っています。出品物の規制面で関係省庁、関係団体などと議論をする機会がありましたが、常に、メルカリ個社の利益だけではなく、お客さまの安全や健全なEC業界のためにどうあるべきか、というように視野を広げて議論に臨みました。
山口> 「自分たちが社会を変える」とまでいうと大げさかも知れないですが、それぐらい大きなことをやっているのだなと政策企画の仕事を横で見て思いました。私が行政職に就いたのは社会の仕組みをより良くしていこうという気持ちもあってのことなので、民間からこういう動きも出来るんだというのは、自分にとって大きな発見で、企業の見方が変わる機会になりました。
小塚> 私も社会制度というのは行政が中心となって作っていくものだと思っていたのですが、解決したい社会課題に対して、その最前線にいる業界団体や企業が関わっていくことの重要性は実感しているところです。民間企業、業界団体の側からルールメイキングに関与する機会を持てたのは行政職員として貴重な財産になったと感じています。
藤井> メルカリの政策企画チームで働く中で、メルカリ単体の成長だけでなく、リユース市場全体や社会全体でのサーキュラーエコノミーの推進を視野に入れて動いていると感じました。企業活動を社会課題の解決につなげる面白さも実感しています。
私の業務では、制度づくりとムーブメントの創出の両面から取り組んでおり、リユースを促進する政策提案や、自治体や二次流通事業者などとの連携を通じて「捨てるをへらす」施策を推進しています。
この経験を通じて、民間の立場からルールづくりに関わる重要性を実感しました。行政や議員だけでなく、企業がルールメイキングに関与できる仕組みを創り出したメルカリ政策企画チームの存在は非常に印象的でした。
続きは後編へ
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プロフィール
小塚 星一郎(Seiichiro Kozuka)
愛知県総務局総務部情報政策課DX推進室。2014年愛知県庁入庁。名古屋西部県税事務所、子育て支援課、国際課で勤務。直近の国際課においては愛知県の国際関係分野の戦略・施策を示す「あいち国際戦略プラン2027」の策定に関する業務などに従事。2024年4月から2025年3月までメルカリにて派遣研修。経営戦略室政策企画に所属し外部とも連携した「メルカリ」の安心・安全に関わる業務を担当。
藤井 彩香(Sayaka Fujii)
岐阜市市民協働推進部。2020年岐阜市役所入庁。上下水道事業部、市長公室で勤務。直近の市長公室秘書課においては、岐阜市長の出張手配、交際事務及び市政功労表彰をはじめとする各種表彰の事務に関する業務等に従事。2024年4月から2025年3月までメルカリにて派遣研修。経営戦略室政策企画に所属し、サーキュラーエコノミーへの移行におけるリユース・CEコマース推進とトレンド作りに関わる業務を担当。
山口 由夏(Yuka Yamaguchi)
石川県知事室戦略広報課。2021年石川県庁入庁。健康推進課にて、指定難病や小児慢性特定疾病に罹患している方への医療費助成をはじめとする難病対策に従事。2024年4月から2025年3月までメルカリにて派遣研修。Corporate PRチームにて、ESG施策やI&Dに関するプロジェクトに携わる。