
メルカリは、2025年度版の「インパクトレポート」を公開しました。今年はレポート制作の中心をPR(広報)チームが担い、その発信方法にも大きな変化が見られます。メルカリのミッションである「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を体現するレポートは、どのようにして生まれたのでしょうか。今回のレポート制作をリードした、メルカリ Corporate PRマネージャーの津田 衣音子と、石川県からメルカリに出向中のPRチームの井村 健吾に話を伺いました。
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津田 衣音子
政策企画参事 高橋 亮平(以下、高橋)> インパクトレポートの公開、お疲れ様でした。今年はPRチームが中心になって作成したとのことですが、どのような経緯でPRチームが中心となり制作していくことになったのでしょうか?
Corporate PRマネージャー 津田 衣音子(以下、津田)> インパクトレポートは、2020年にもともと「サステナビリティレポート」として発行していましたが、2022年からは「インパクトレポート」とし、サステナビリティに限定せず、メルカリの事業を通じて社会にどのようなインパクトを与えているのかを「マテリアリティ」に基づきまとめてきました。このレポートをより広く知っていただくことを目的に、今年から制作の中心をPRチームが担うことになりました。
高橋> 作るだけでなく、「作ったことを広く知らせる」という視点が加わったわけですね。
津田> まさにその通りです。これまでもPRチームはコンテンツの内容についての議論にも加わっていましたし、完成したものの発信を担ってきましたが、今回のように企画段階から中心的に関わることで、伝えたいメッセージをより明確にできると考えました。
高橋> PRが中心になったことで、今年のレポートはこれまでのものとどのように変わったのでしょうか?

津田> 大きく2つあります。まず、1つは「ハイライト」の項目を設けたことです。これまでは5つの「マテリアリティ(重要課題)」を順に説明していましたが、特にこの1年でメルカリが注力した3つのテーマに絞って紹介しています。具体的には、事業を通じて生まれた「ポジティブインパクト(CO2削減貢献量)」、そして「AI-Native Company」と「安心・安全への取り組み強化」です。
もう1つは、「ポジティブインパクト」の表現方法をアップデートしました。これまでは「東京ドーム何杯分」や「杉の木何本分」といった表現を使ってきましたが、これは規模のインパクトを表すには良い表現ではあるものの、どれくらいのインパクトなのか一般の方々にはピンとこない部分があったと思います。
そこで、今年は全体感の表現に追加して、衣類にフォーカスし、「メルカリ」で衣類を1着取引すると「家庭用エアコンの約27時間分」や「ペットボトルの約80本分」のCO2排出量を削減できるといった、より身近で分かりやすい表現に落とし込みました。
高橋> それは非常に分かりやすいですね!井村さんは、今回の制作で特に印象に残ったことはありますか?
PRチーム 井村 健吾(以下、井村)> 私自身、この制作に関わるまでメルカリがインパクトレポートを出していることを知らなかったんです。でも、実際にポジティブインパクトの編集に関わるにつれて、「メルカリ」を使うことが環境に良い影響を与えているのに、それがまだ広く知られていないのは機会損失だと思いました。だからこそ、投資家だけでなく一般の方々にも分かりやすく伝えるべきだと強く感じました。
高橋> 今回は制作にAIも活用したと伺いました。まさに「AI-Native Company」を体現しているわけですね。
井村> そうなんです。各マテリアリティのサマリー作成や、一部の文章構成にAIを活用しました。また、レポート内に使用している写真も一部AIで生成しています。
高橋> 単にレポートでAIについての活動を書くだけでなく、その制作プロセス自体にAIを取り入れることで、メルカリがAIを本気で推進していくというメッセージをより強く伝えられると感じました。
インパクトレポートは、まだまだすべての企業が作っているわけではないですよね。なぜメルカリは毎年出し続けるのでしょうか?
津田> 決算時などの財務諸表だけでは見えない、メルカリが社会に与えている「見えない価値」を伝えるためです。例えば、ポジティブインパクトのような、事業を通して生まれた社会貢献は、業績には直接表れません。それらをレポートとしてまとめることで、メルカリの企業価値をより深く理解していただけると思っています。
また、プレスリリースのように単発的な発信ではなく、1年間の活動を総括して伝えることに意味があるとも思っています。点ではなく線で伝えることで、私たちが社会の公器として、どういった目的で活動しているのかを理解してもらうことができるのではと考えています。

高橋> 今回のレポートでは、大学や自治体、一次流通事業者との連携が紹介されていますね。井村さんは、今年、石川県から派遣されてきていますが、こうした点をどう捉えていますか?
井村> 自治体から出向している立場として、自治体にはない「見える化」の重要性を感じました。民間ならではの価値を分かりやすく示すことは、企業価値を高める上で不可欠です。自治体も環境関連の部署で個々に数値を算出していることはありますが、企業のように組織として対外的に示すことは多くありません。メルカリの取り組みは、自治体にとっても一つの参考になると思います。
また、メルカリは社会との連携に加え個人の方とのつながりも強く、そうした特徴を活かした取り組みが、今回のレポートでも多く紹介されています。
愛知県公立大学法人との連携では、大学として全国で初めて「メルカリShops」に出店し、リユースの促進と収益の活用の両面でメルカリの取り組みが活かされています。また、「落とし物クラウドfind」※ と連携して、廃棄されるはずだった落とし物をリユースする取り組みも非常にメルカリらしいと感じました。これらはまさに、メルカリのミッションである「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を体現していると思います。
※ メルカリは、「落とし物クラウドfind」を提供する株式会社findと連携し、findが提携する鉄道会社や商業施設で拾得された落とし物のうち、法律で定められた保管期間を過ぎ、各企業が所有権を取得したものを「メルカリShops」にて販売する実証実験を実施中

高橋> 最後に、今後レポートをさらに広めていくために、PRとしてどんなことに取り組んでいきたいですか?
津田> 大阪万博でも9月29日までブースで展示を行っており、インパクトレポートの内容も一部紹介していましたが、今後も、単にレポートを出して終わりではなく、パネル展示やイベント、社内での活用などを通じて、より多くの人の目に触れる機会を増やしていきたいです。
井村> サーキュラーエコノミー総研ではPodcast形式で『サーキュラーエコノミー実践』の著者でもある安居 昭博さんとメルカリR4D Researcherの文 多美さんに、インパクトレポートの内容にも触れて対談していただいたので、こちらも合わせてお読みになってみてください。社会との連携に関する事例を今後も積極的に発信していきたいです。
井村 健吾
高橋> 利益だけでなく、社会にどう貢献していくかが企業価値に直結する時代。その先進的な取り組みを、PR視点で分かりやすく発信していく今回のレポートは、大きな可能性を秘めていると感じました。本日はありがとうございました。
(高橋 亮平)
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プロフィール
津田 衣音子(Ioko Tsuda)
慶應義塾大学大学院修了後、グリー株式会社に入社。Platform PMO室で予算策定やリスク管理などを担当後、ゲーム事業部のHRBP、ソーシャルゲームの企画・プロモーション、企業広報やゲーム・VR事業の広報などさまざまな部署・業務を経験。2018年5月メルカリにCorporate PRとして入社し、サステナビリティ・人事・決算などの広報を担当。入社後に2回の産育休を取得。
井村 健吾(Kengo Imura)
メルカリPR 兼 政策企画。2016年石川県庁入庁。健康福祉部、商工労働部、企画振興部で勤務。直近の企画振興部企画課においては、SDGs推進や新型コロナウイルス対応、知事懇談会、予算・決算業務等に従事。2025年4月から2026年3月までメルカリに派遣研修中。Corporate PR及びPublic Allianceに所属し、広報や自治体連携業務を担当。
インタビュアー
高橋 亮平(Ryohei Takahashi)
メルカリ経営戦略室政策企画参事 兼 merpoli編集長、サーキュラーエコノミー総研 by mercari 主席研究員。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長。中央大学特任准教授、松戸市部長職、 神奈川県DX推進アドバイザー、千葉市アドバイザー、明治大学客員研究員、東京財団研究員、政策工房研究員、市川市議、全国若手市議会議員の会会長等を経て2018年6月より現職。AERA「日本を立て直す100人」選出。著書に「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)、「20歳からの教科書」(日経プレミア新書)、「18歳が政治を変える!」(現代人文社)、「「新しい生徒会」の教科書」(旬報社)他。